●9月2日のギャラリー椿さんの日記にまたしても最近のアート状況を憂うる記事がある。我々のような年配のものにはどうしても最近の状況が理解できないというか一過性というか軽薄に見える。しかし、その最大の理由は作家を昔風の「芸術家」と見ているからで、むしろ「アートタレント」と思えば当然の流れとして理解できる。要は良し悪しではなく、作家、画商、コレクターたちが「芸術家」を望むのか「アートタレント」を追いかけるのかをきちっと見極めて動くことではないだろうか?
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【ギャラリー椿さんの9月2日の日記より】
昨日、新たなコレクター層の拡がりに触れたが、その多くは若手作家に眼が向いている。あるオークション会社が11月の香港オークションの折に33歳までの若手作家のコーナーを設けるので協力して欲しいと言って来た。同じように、新たにできるシンガポールのアートフェアーでも新人ブースの出展依頼が来ていた。国内でも、VOCA展の40歳までを筆頭に各所で若手に絞ったコンクールが開催されていたり、メディアもその多くを若手作家に割いて紹介をするなど、若手作家大隆盛時代の様相を呈している。
長い間若手作家の紹介に努めてきた私にとっても大変喜ばしいことなのだが、何故か素直に喜べない部分もある。リーマンショック以降、美術市場も投資的側面はかなり影を潜め、新たに美術コレクションを楽しむ層が確実に増え、そうした層が若手作家を購入しているのは間違いない。ただ危惧するのはそうしたコレクションが一過性になるのではないかと心配する。
私共でお付き合いしてきたコレクターの方はそれぞれの好みが如実に出ていて、長年培ってきた鑑識眼で作家・作品を支えてきたように思う。それだけに時間を経ても一つの流れの中で作家も作品も育ち、一人歩きできるようになっていった。ところが今これだけ大量の若手作家が世に出てコレクションされていくのを見て、その多くが消費だけされて、果たして時間を経て作品が一人歩きできるのだろうかという危惧を持ってしまう。
40年ほど前に私は新人ブームを経験している。その当時はインフレヘッジという側面があって、お金より物に変えておこう、貯金より投資ということで、美術品もその渦の中に巻き込まれていった。朝から新人作家の展覧会場に行列ができたり、私の画廊でも各美大からの推薦の学生の個展を非売を前提として開催していたが、どこで調べたか学生の家まで押しかけては買い付けるなど異常な状況下にあった。デフレスパイラルの今は若手作家は安いから買おうという全く前と違った状況にあるが、ブームであることは間違いない。40年前のブームはあっという間にオイルショックとともに消え去り、その時もてはやされた作家は今その名前さえ思い浮かばない。残っているのは地道に画廊とともに歩み、コレクターに支えられた作家だけである。
今これだけ多くの若い作家が世に出て、果たして何人が30年後、40年後に残っているだろうか。消耗品ではない、後々まで愛で楽しむコレクションであってこそ作品は一人歩きできるのではないだろうか。一過性のブームで終わらないことを願う。

※記事とは関係ないが、写真に出ている中川勇樹の「テレビ局の裏側」(新潮新書)はテレビ界の裏側の暴露本だが、今のアート界も似たようなもの。


