≪高村比呂希 著≫
2010年の参院選。民主党は、大方の予測に反して単独過半数を獲得出来なかった。かろうじて連立与党としての数値確保の面目を維持したものの、前年の衆院選で地殻変動を起こした与党民主党が狙う参院安定多数に対する民意の揺り戻しは、今後の政局運営に国民の不安を抱かせた。
それから3年後の2013年。新政権が目論んだ景気対策は、期待を大きく裏切り、経済指標はどれを取っても過去40年で最悪の状況に陥って行った。GDPはマイナス2%、株価は6千円を割り込み5千円台。失業率は10%を大きく超え13%に迫るのも時間の問題となり、自殺者も3年前までは毎年3万人だったのが今や5万人超という異常な状況である。
年金問題、雇用対策、行政改革、小子化対策など、マニフェストで掲げた諸問題解決も、長くて暗いトンネルからは抜け出すことは出来なかった。国民の生活苦は増す一方で、絶望感さえ漂い出していた。
2013年5月。アメリカとの安保条約を巡る意見対立と対中国政策で紛糾した政局は、ついに連立与党の解消に向かい、時の総理は、衆議院の解散を宣言し、7月の衆参同時選挙に突入することが決った。
その前年の12月。虎ノ門にあるマンションの一室で、所謂、団塊Jrたち4人の若者が集まり、常日頃話し合ってきた「日本の未来 提言プラン」は、喧々諤々の議論の末、ある最終結論に達していた。
彼らは、この物語の主人公橘譲二が亡くなって間もなく、その遺志を継ぐような形で、毎月1回集まり度重なるディスカッションを続けて来ていたのだ。
お互いの生まれ育った環境や立場や職種が違うのに、ここに集まったのは、橘譲二が先の参院選で訴えた「日本再生提言7ヵ条」に共鳴し、今の日本にはその実現こそが何よりも急ぐべきであり、それを自分達の手で何としてもやり遂げなければならないという共通の使命感からである。
夫々のメンバーは、自ら有志を集めた、夫々の日本再生の政策検討グループを率いている若きリーダー達でもある。
まず、その中の1人。この4人会の主宰者で、この物語の主人公の息子橘和馬。彼自身は日本を憂う現役若手官僚チーム「プロジェクトK」の代表を務める (現役経産省官僚、2012年12月現在37歳)。
2人目は、本編後半に登場した「プロジェクト5」の唯一の女性メンバー箱崎綾(経済アナリスト、同36歳)。
3人目は、「行革」を旗印とするミニ政党から、党首(元行革担当大臣)の意向を受けて次の参議院選挙に初めて出馬する渡部元気(党首の異母兄弟、同34歳)。
最後の1人は、前回の選挙を大敗させた張本人ともいわれる元総理大臣の二世議員(衆院)、大泉誠(自ら10年以内に総理を目指すと宣言、同32歳)。
さて、若い4人の議論は、橘譲二たち「プロジェクト5」が訴えた「日本再生提言7ヵ条」を評価し直すことから始め、その後の日本経済の崩落に対する緊急対策と安定成長のための中長期政策に多くの時間を割いた。
更に、「プロジェクト5」が結論を出せず、「提言7ヵ条」から落ちた日米安保条約(日米同盟)についての提言を加え、更に教育改革を追加して、全10ヵ条とした。
そして、この提言を「日本復活マニフェスト」と銘打ち、2013年正月明けから世に問い、来るべき選挙に4人とも打って出ることを申し合わせたのだった。
「日本復活マニフェスト」
① 経済政策
② 大統領制
③ 日米安保
④ 憲法九条
⑤ 地方分権
⑥ 環境立国
⑦ 農業再生
⑧ 社会保障
⑨ 教育改革
⑩ 平和貢献
団塊世代が行く ― ラストラン ― (完)
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【読者の皆様へ】
この小説に登場する人物・組織は全て架空であり、実在する人物・組織とは一切関係ありません。
また、この小説を書くに当って、下記の書物・情報等を参考に致しました。
・阪大大学院教授 米原謙氏
伊藤孝夫『瀧川幸辰』を読んで
(『図書新聞』第2670号)
・城山三郎著
『官僚たちの夏』
・古宮エイジ著
『団塊世代が行く』
・インターネット ウィキペディア
京都議定書
全共闘運動
経済産業省 他
高村比呂希







