JAZZYな生活

プレミアムエイジ ジョインブログ

もしもピアノが弾けたなら(8)   ~ 「ジャポニズム」の息吹が聞こえる ~

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(写真はHPより  脚付杯《蜻蛉》 エミール・ガレ 1903-04年 サントリー美術館蔵)

「うちふるえる蜻蛉を愛する者 これをつくる(エミール・ガレ)」という言葉に魅かれ、天保山「サントリー・ミュージアム」でひらかれている「ガレとジャポニズム」を観に行ってきました。ガレという人物が何者であるかは勿論知っていたのですが、140点、これほどの数のガレの作品を体系だって見るのは初めてでした。日本画、浮世絵、錦絵、陶磁器、工芸品など19世紀後半ヨーロッパに渡った日本の美術品は「ジャポニズム」と呼ばれるブームを巻き起こした。印象派の画家たちがこぞってそのモチーフを取り入れたことはよく知られているところですが、フランスのアール・ヌーヴォーを代表する装飾芸術家「エミール・ガレ(1846-1904)」もその影響を大きく受けた一人であった。初期のガレは、北斎などの日本画のモチーフなどを巧みに配した美しいガラス工芸品などでその名声を得るが、やがて一歩高みの「自然への回帰」をテーマにした自己の世界を確立していく。そんな彼の美の軌跡と変遷に触れることが出来た展覧会。展示品はすべてため息が出るほどに美しく、「ガレだね、やはりガレは美しいね」と言った入社当時、配属された研究所の所長の言葉を思い出しました。

展示は4章仕立てで、構成されていますが、私は「第4章:ガレと蜻蛉」に一番興味を惹かれました。その訳は、私の卒業した高校の校章が「蜻蛉、とんぼ」であり、その謂れは、日本の国の形が蜻蛉の交わる形に似ていることから、「蜻蛉」の古称にちなんで「秋津洲(アキツシマ)」と呼ばれていたことに由来しているからです。ガレは30年余にわたる創作活動の中で、たびたび蜻蛉をモチーフに取り上げ、そして蜻蛉文を付したある作品に、「うちふるえる蜻蛉を愛する者 これを作る」との冒頭の銘文を彫っていますが、写真の最晩年の脚付杯《蜻蛉》は、まるで彼の形見のように、ごく近しい友人かあるいは親族に授けられたとも言われています。この杯はフォルム、質感、色といい、本当にうちふるえるほど美しい。

「JAZZ」というジャンルの音楽は、もうすっかりグローバルな音楽になってしまったので、あえて「ジャポニズム」などいう名の衣をまとわなくても、十分世界を魅了し、世界に通用する日本人アーティストたちが沢山出てきている。その若手の代表JAZZピアニストが「上原ひろみ」。NYで現在活躍する彼女は、1979年生まれ、バークリー音楽院在学中の2003年「Another Mind」でデビュー、その後同音楽院を首席で卒業、アルバム5作を数える。オスカー・ピーターソンに強く影響を受け、彼やミシェル・カミロ、チック・コリアなどとの共演もこの若さで行い、彼女の辞書には「気後れ」という言葉はないのではと思わせる。その独創性がゆえに天才とも称され、いま最も「旬」で人気No1.のピアニストといえる。初めて聴いたとき、まったく今までに聴いたことのない音世界を感じさせたアルバムは、「スパイラル」であった。

スパイラル(通常盤)
上原ひろみ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
ISBN : B000ASBG3W
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彼女のJAZZは、どちらかといえばロック系、フュージョン系の「音作り」と思っていたが、映画「オリヲン座からの招待状」のメインテーマ「The Place To Be」で見せたくれた、穏やかで、暖かく、そして澄んだ世界にも素直に惹かれたが、それに続いて待望のスタンダード集がリリースされた。ますます「ガレ」にも似た変幻自在な彼女のイマジネーションの世界が拡がる。

ビヨンド・スタンダード(通常盤)
上原ひろみ~HIROMI’S SONICBLOOM / / UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)
ISBN : B00162LY2Y
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「小曽根真」。1961年、神戸生まれ。彼もまたオスカー・ピーターソンに影響を受けてジャズ・ピアノを始め、バークリー音楽院卒業後、83年に米CBSと専属契約を結び、デビュー・アルバム『OZONE』を発表。トリオ、ソロ、ビッグバンド、オーケストラとの共演など、多様なスタイルで精力的に活動中である。その小曽根が、JAZZにこだわらずに、広く愛されるメロディを持つ楽曲をソロで演奏したアルバム「フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン」が心地いい。リアル・ジャズ・ファンには物足りないかもしれませんが、還暦男の耳には本当に心地よい。彼、彼女たちの音楽は、和風の音階や旋律をことさら用いることはないが、音と音の間の無音の音空間に、古来「間(ま)」、「しじま」となづけられた「静寂の響き」を感じてしまうのは、まさに「ジャポニズム」のDNAかもしれない。

フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン
小曽根真 / / ユニバーサル ミュージック クラシック
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そしてこの世界で、忘れてはならない先駆者が「秋吉敏子」。その「秋吉敏子」の名を世界に広めた歴史的名盤が「ザ・トシコ・トリオ」。戦後まもなく渡米し、先駆者として大変な苦労も重ねた彼女の50年に渡る米国でのJAZZ音楽活動の原点となる代表作で、日本人としてはじめて「ジャズの殿堂」入りをしたアメリカン・ジャズ・マスター賞受賞記念復刻盤である。

ザ・トシコ・トリオ
秋吉敏子 / / ミューザック
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新しき「ジャポニズム」の息吹が聞こえる。

JAZZ的トリビア  ~ジャズが流れるこだわり○○~

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(イラストはINAX HP より)

「住宅設備機器メーカー大手のINAXはこだわりの水廻りを求める人向けの洋式便器「REGIO」を、6月1日から発売する。・・・・この便器シリーズには、便座フタが開くと、ジャズピアニスト木住野佳子(きしのよしこ)さんとコラボレートしたオリジナルジャズが背面から流れる「リラックスミュージックDXⅡ」機能も搭載され、静粛性とともに快適な音も、とことん追求しました。・・・・・  メーカー希望小売価格:ノーブルブラック 556,500円 ブリリアントホワイト462,000円 (施工費は別途)・・・・・」

こんな記事が目につきました。そして幾つかの疑問や質問も湧いてきました。

・これは便秘で悩むJAZZファンにとっては大朗報!救いのニュースなのか?
・さすれば、それを裏付けるデーターはあるのか?(HPにはデータはなかったが・・・)
・JAZZ以外の音楽ファンにとっても効果があるのか?それはどんな曲なのか?
  (たとえば悩める演歌ファンなら、都はるみの「アンコ椿は恋の花」などが・・・)
・試聴は出来るのか?(これもHPにアクセスしたが出来る気配はなかった。)もっともダウンロードして自分のトイレで再生すれば、悩みは解消してしまうので、そんなことをメーカはしないだろうが・・・・・。
・何曲ぐらいバージョンがあるのだろうか?飽きたら別の曲をインストールできるのだろうか?

さらに欲を言えば、携帯電話の「着メロ」のように、好みの曲をNETからダウンロードできれば 最高かもしれない。それと「こだわり派」としては音質も気になるところですが・・・。
そして最大の疑問は
・この価格は痔や便秘悩む人にとっては安いのか? 高いのか? ということ。

かって私も痔を患ったことがあり、手術以後は洗浄便座の愛用者となり、もはや手離せなくなっていますので、そのありがたさはよく分かるのですが。それにしても、施工費別で50万を超えるとなると・・・・。う~~~ん、そないシャカリキにならんと、お金のある人はどうぞぐらいに考えておきまひょか。嗚呼、JAZZも流れる!○○コも流れる!
もしお食事中でしたら大変失礼しました。

疑問への私のコメントは控えますので、お悩みの方、興味のある人は INAX HP へアクセスしてみてください。

さて、気分を一新して「木住野佳子」。東京都出身。美人ジャズ・ピアニストとして有名。

クラシック畑の出身であるが、1995年、名門レーベル、GRPインターナショナルより日本人初で唯一のアーチストとしてワールド・ワイドなデビューを飾り、人気、実力ともトップの女流ジャズ・ピアニストとしての地位を築く。どちらかというと、スムース・ジャズといっていいジャンルと思うが、だからといって、けっしてトイレ向きなどというJAZZではありません。

私のおすすめは次の2枚。映画音楽やTV-CM、さらにトイレBGMの作曲・演奏など、ジャンルを超え多様な音楽性で活動を展開している木住野のコンポーザー、アレンジャーとしての才能がフルに発揮されているオリジナル中心の最新アルバム「FACE」と、NYで録音されたエレガントな都会的ボサノバ気分一杯の「シエスタ」。タイトル曲「シエスタ」は、インスト・バージョンと元トワ・エ・モアの白鳥英美子をフィーチャーしたヴォーカル・バージョンの両方を収録している。レビューの多くの声にあるように「木住野佳子」は究極のBGMジャズ・アーティストかもしれない。

FACE
木住野佳子 / / UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)
ISBN : B00144665O
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シエスタ
木住野佳子 / / ユニバーサル ミュージック クラシック
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読むJAZZ(6) ~ ジャズ・ピアニストのハードボイルド ~

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寡作であるが良質のハードボイルドを書く作家がいる。「原尞(はら りょう)」。1988年デビュー作の「そして夜は甦る」から2004年最新作「愚か者死すべし」まで、1冊の短編集を除くと、約20年間で長編4作という寡作ぶり。かって彼はフリー・ジャズのプロのピアニストであったことは彼のファンなれば誰でも知っていることであろう。

昭和21年(1946)12月佐賀県鳥栖市生まれ、61歳。九州大学文学部を卒業し上京、レコード会社に就職するも2ヶ月で辞める。学生時代に独学で学んだJAZZピアノへの情熱が再燃してプロのJAZZピアニストに。その傍ら映画やTVドラマの脚本家を目指すが、映像化はされなかった。「それならば小説を書いて映画化を」と小説家を志す。40歳のころ母親の看病のため帰郷し、その後故郷鳥栖市に定住し、42歳で遅まきの小説家デビューを果たす。2作目「私が殺した少女」は直木賞を受賞した。現在執筆の合間には、鳥栖でお兄さんが経営するJAZZ喫茶で今もピアノを弾いているとのことである。

以上の彼の経歴は、文庫本の経歴紹介や「私が殺した少女」巻末の「あとがきに代えて ある男の身許調査」で知ることが出来る。

昭和21年生まれだから私と同じ年の生まれである。小説では殆ど語られていないJAZZへの思いを能弁に吐露した彼の自伝的エッセイ「ミステリオーソ」を読むと、音楽、ミステリー、映画に没頭した彼の等身大の青春は、私の青春にもダブって見えてくる。「バド・パウエル」、「セロニアス・モンク」、「マイルズ・デイヴィス」、「ジョン・コルトレーン」、「ケニー・バレル」など往年のJAZZプレイヤーたち、「太陽がいっぱい」、「用心棒」、「死刑台のエレベーター」、「サムライ」、「七人の侍」、「カサブランカ」、「ジャン・ギャバン」、「ハンフリー・ボガード」、などの名画・名優たち、「山本周五郎」、「ジョルジュ・シムノン」「レイモンド・チャンドラー」、「セバスチャン・ジャプリゾ」など手ダレの物書きたち・・・・。まさに私の青春そのものといえるキーワード。こんなキーワードが満載の本書を読み終わった後は、CDやDVDでもう一度あの青春を確認したくなった。 

ミステリオーソ (ハヤカワ文庫JA)
原 〓@4AD4@ / / 早川書房
ISBN : 4150307938
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「レイモンド・チャンドラー」に心酔している原氏は自著のシリーズ4作で見事に探偵「沢崎」を造形した。やや乾いた文体と沢崎から発せられる皮肉の利いたせりふ。沢崎の人物像や周辺、彼の生い立ちなどについては、ほとんど語られてはいないが、むしろ映画的ともいえるシーンの描写や沢崎のせりふから、かえって沢崎の人物像、キャラクターの陰影が浮き出てくると思える。
極めて映画的と思える情景描写と沢崎のキャラによって、日本のハードボイルド界に独自のポジションを築いたシリーズ。ファルコン賞、直木賞を受賞した「私が殺した少女」。

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)
原 りょう / / 早川書房
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「さらば愛しき女よ」、「長いお別れ」、「大いなる眠り」というチャンドラーの代表作を併せて第三作「さらば長き眠り」のタイトルにしたことに、彼のチャンドラーへの心酔、傾倒ぶりは窺える。
また、シリーズ作品中には、JAZZが絡む背景や小道具、せりふなどはあまり出てこないのだが、自身をモデルにしたと思われるレコード会社社員崩れの作中人物江原に言わす次の言葉に、JAZZへの思いもわずかに窺える。「鍵盤の右から左まで両手の指をただ転がしているだけじゃ、いったいどれがあんたの聴かせたい“歌”なのかわからんよ。もっと音を少なくして弾けないものかね。」

さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)
原 りょう / / 早川書房
ISBN : 4150306540
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「鳥類学者のファンタジア」の主人公、ビ・バッパー「フォギー」もそうであったが、原氏の敬愛するJAZZピアニストは「バド・パウエル」である。モダン・ジャズの語法をピアノで表現した天才、ビ・バップの創始者の一人にして、バップ・ピアノの最高峰と称される「バド・パウエル」。
なぜか日本でのみ人気の高かったといわれる、代表作「クレオパトラの夢」が収録されている「ザ・シーン・チェンジズ」がベストか。聴けば、やはり青春時代のあの時と同じように「クレオパトラの夢」に魅かれ、心浮き立つ自分がいる。

ザ・シーン・チェンジズ+1
バド・パウエル / / EMIミュージック・ジャパン
ISBN : B000XAMEVA
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観るJAZZ(4)   ~ 森田一義助教授の幻の講義 ~

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「題名のない音楽会」という大変な長寿TV番組がある。調べたら昭和39年(1964)放送開始というから、もう40数年続いている。司会者も、黛敏郎、永六輔、武田鉄也、羽田健太郎、現在の佐渡裕と歴代5代を数えるが、故・黛敏郎氏が司会をしていた頃、クラシック主体の番組であるが、私も時々見ていた番組でもある。というのも、黛氏は当時クラシック界の大御所であったが、若い頃アルバイトでJAZZバンドのピアノを担当し、よく米軍キャンプを廻っていたらしい。そんなわけか、よく番組でJAZZをテーマに取り上げていたからである。そんな「題名のない音楽会」で、30年くらい前のある日、何気なく見ていたら、今まで見たこともないようなの驚愕のパフォーマンスがブラウン管で展開された。

「中洲産業大学・森田一義助教授」という髪の毛ボサボサ、ヨレヨレの燕尾服を着た風采の上がらない男が、グランド・ピアノを前に、アフリカ民俗音楽のルーツから、ニューオリンズJAZZ、デキシーランド・ジャズ、スイング、ビ・バップ、フリー・ジャズにいたるJAZZの歴史講義をしだしたのである。さらに、4カ国の人が卓を囲むマージャン、各国の言葉でやる抱腹絶倒のパフォーマンスを披露した。それが、デビューしたての「タモリ」であり、これも調べたら1977年のことであった。

福岡の酒場で密室芸をやっていたタモリを、確か山下洋輔、赤塚不二夫あたりが見出して、東京へ連れ出したと記憶している。
当時、学園紛争、全共闘時代が挫折した形で終焉を迎え、JAZZ喫茶あたりで鬱屈していた若者たちは、従来の「お笑い」とは違う、知的でシニカルなタモリの「笑い」に圧倒的な支持を贈ったのである。

「中洲産業大学 芸術学部・西洋音楽理論  森田一義助教授」という触れ込みで 、密室芸を披露した「題名のない音楽会」でのワンマンショー。その抱腹絶倒の面白さは今でも脳裏にのこっている。しかし、彼のパフォーマンスの一部はCDでリリースされているが、残念ながら、DVDなどでそのパフォーマンスを見ることは出来ない。今一度彼の「幻の講義」を観てみたいものである。
ちなみに、タモリ氏自身もJAZZレコードの大変なコレクターだそうで、かの植草甚一氏の死後、膨大な氏のレコード・コレクションの散逸を防ぐために、その全てを一括して引き取ったという。また早稲田大学在学時にはJAZZ研でトランペットを吹いていたという。

本来は観るべきパフォーマンス、あるいは観るJAZZ芸、森田一義助教授による「教養講座“日本ジャズ界の変遷” (Lecture on Culuture:History of Jazz in Japan)」 は下記のCDに収録されている。ハナモゲラ語での演歌熱唱など一聴の価値あり。

タモリ
タモリ / / Sony Music Direct
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「教養講座“音楽の変遷その1”  旋律の源とその世界的波及について」。 この講義で使用される抱腹絶倒の楽曲は、
・シャンソン「パリの屋根の下にテームズ河は流れていない」(ボリス・シュバリエ)
・童謡「あぶらむし」(六十嵐澄芳)
・ 韓国民謡「ワラジ」(歌唱者不明)
・ 中国民謡「熊猫深山」(歌唱者不明)
・ムード歌謡「富士見荘ブルース」(富士山田弘とプール・サイド)
・ スイング・ジャズ「ええ列車で行こう」(ペリー・オコモとデューク・エリート楽団) 
・ ニュー・ミュージック「鰯雲」(さるまたし)
・ボサノバ「アカイベベ」(セルジオ・メンデル&ブラジル69)   などなど。

このリストを見ただけでも、団塊の世代が好きな「オヤジギャグ」満載のパフォーマンスが想像できる。

タモリ2
タモリ / / Sony Music Direct
ISBN : B000WPD316
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幻の講義! 今となっては「もう一度観たいJAZZ」。

昭和へのオマージュ ~続・シネマへの郷愁~

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(よく行くミニシアターがある大阪梅田スカイビル地下の昭和レトロスポット;滝見小路)

前回「シネマへの郷愁」で、シネマ・コンプレックス(複数のスクリーンを持つ映画館)によるシネマの復権は喜ばしいと書いたが、必ずしも手放しでは喜べない情況のようである。統計によるとシネコンの誕生以来、映画館は増え続けており、2007年での全国のスクリーン数は、前年より159スクリーン増え、過去最多の3,221スクリーンになったそうだ。ここまではいいのだが、気がかりな点もいくつかある。一方入場者数は減少傾向で、前年比約139万人減の約1億6319人に留まっているという。また、シネコン建設によって、スクリーンは増えるが、それによって多様な映画が観られるとは限らない。シネコンで上映される映画は採算性が最も重視されるため、宣伝に金をかけた話題作やハリウッド大作などに偏りがちで、しかも客の入りが悪ければ、短期間で上映が打ち切られる。国際文化交流推進協議会(東京都)の調べによると、ある県で公開された映画作品数はその年に公開された映画数の3割にも満たなかったという。つまり、7割は見たくても見られないのだ。その傾向は大都市以外では特に顕著であろう。昨年の我がベスト10(「我がシネマな一年 ~今年私が観てよかったと思う映画~」参照)でも、半分はシネコン以外の単館系ミニシアターで観た映画であった。シネコンで上映される映画が名画とは限らないのである。邦画、ハリウッド映画にかぎらず、多様、多彩な映画が観られる環境が整って欲しいが、採算を考えると都会以外の映画館では難しく、音楽と同様、「DVD」や「映画配信」などによってしか達成されないのではないかと思う。そうなると、映画館での、あのドキドキ感は間違いなく犠牲になってしまうが・・・・。

さて、私のふるさと「松本」はかって「映画の街」と呼ばれたらしい。高校時代人口は10万そこそこの街であったが、映画館は6館あり、その中の1館は当時の地方都市では珍しい洋画専門館であった。この洋画館が私の映画熱に火をつけた。また、当時人気絶頂の吉永小百合主演の「青い山脈」のロケーションが我が母校周辺であり、見に行ったことも懐かしい思い出。母校の卒業生に映画監督も多く、旧制中学卒業では「小林悟」、「熊井啓」、新制高校になってからは、「小沢茂弘」、「三村晴彦」、「降旗康男」などが名を連ねる。また、「山崎貴」も実家付近松本出身の気鋭の若手監督である。

その山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」以降、「バブルへGO! タイムマシンはドラム式!」、「フラガール」、「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」、「地下鉄(メトロ)に乗って」など、昭和への回帰あるいはオマージュがテーマの作品ががつづいている。明日への希望がまったく持てない今の日本の現実にあって、「明日はもっとよくなる」と希望を持ちえたあの昭和の時代への郷愁がこれらの映画への共感を呼ぶのであろうか。

ALWAYS 三丁目の夕日 通常版
吉岡秀隆 / / バップ
ISBN : B000EPE77S
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音楽でも昭和への郷愁、回帰が話題となっている。「深夜放送」。これは我々団塊世代には受験勉強と表裏一体となった「昭和の思い出・体験」のひとつである。受験勉強の傍らラジオから流れてくる音楽にどれほど心を奪われたことだろうか。最近、大人気の五木寛之氏のNHKラジオ番組「ラジオ深夜便」で語られた五木氏の人生と昭和歌謡曲史をめぐるトークと歌に加筆した初めての自伝本とCDが相次いで発刊された。

敗戦下の昭和20年。母を失い、弟妹を背負い、着の身着のまま朝鮮から日本に引き揚げてきた14才の五木少年。希望のない少年の日々。軍用毛布一枚で上京し、早稲田大学に合格するも、授業料を滞納し、売血で食いつなぐ赤貧の日々。石原慎太郎・裕次郎兄弟を豊かさの象徴として割り切れない思いで見ながらも、五木はストリップ評論や、業界紙などマスコミ底辺の仕事を得てゆくようになり、やがてレコード会社専属の作詞家へとのしあがっていく。「さらばモスクワ愚連隊」、「艶歌」、「海峡物語」、「狼たちの伝説」など歌や音楽を物語の背景にもつ小説も多い五木寛之氏が、懐かしい流行歌を語り尽くした完全版自分史である。 

わが人生の歌がたり―昭和の哀歓
五木 寛之 / / 角川書店
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わが人生の歌がたり昭和の青春
五木 寛之 / / 角川書店
ISBN : 4048839942
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このCDはその単行本で紹介されている五木氏の思い出に強く残っている昭和の歌を集めたものです。あまり懐古趣味に浸るのは好きではないがこのCDに収められた曲たちは、昭和の歌謡曲スタンダードと呼んでいいように思う。

別れのブルース / 青江三奈、からたちの花 / 倍賞千恵子、小雨の丘/ 高峰三枝子、影を慕いて/五木ひろし、蘇州夜曲/ 山口淑子(李香蘭) 、誰か故郷を想わざる/ 冠二郎、サーカスの歌/舟木一夫 など19曲を収録した第一巻。

五木寛之・監修・選曲・ナレーション わが人生の歌がたり 第1巻
オムニバス / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B0013E13DK
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哀愁列車/ 三橋美智也、喜びも悲しみも幾年月/ 若山彰 、西銀座駅前/ フランク永井、南国土佐を後にして/ ペギー葉山、東京ナイトクラブ / フランク永井と松尾和子、黒い花びら / 水原弘、誰よりも君を愛す/ 松尾和子、和田弘とマヒナ・スターズ、アカシアの雨がやむとき / 西田佐知子、硝子のジョニー / アイ・ジョージ など18曲を収録した第二巻。

五木寛之・監修・選曲・ナレーション わが人生の歌がたり 第2巻
オムニバス / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B0013E13DU
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「歌は世につれ、世は歌につれ・・・」

マーケッターとしてのシニア考(10)    ~続・ヒット曲の定義 ~ 

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前回「ヒット曲の定義」で、技術の進歩、それによる音楽メディア、音楽流通の多様化により「ヒット曲」の定義が変わりつつあるのではないかという話題を取り上げた。その記事でも取り上げたシングルCD年間売り上げ第2位の「宇多田ヒカル」の「Flavor Of Life」に対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、CDやネット配信、カラオケ、有線放送など音楽著作権使用料の2007年度分配金額第1位に贈るJASRAC金賞を同曲に決定した。上位10曲のうち4曲がアニメ作品の音楽で、TV放送やDVDのほか、パチンコやゲームソフトでの利用が多かったという。このことは、やはり、ヒット曲というのは「音楽著作権使用料」の額で決めるのではなく、CDの売り上げ、せいぜい配信は含めていいが、音楽メディアそのもののに対して、消費者が直接対価を支払った場合に限っていいように思う。

さて、話は変わるが、「週刊文春」に近田春夫氏による「考えるヒット」というコラムが連載されているのをご存知でしょうか?1997年1月から連載が開始され、すでに、単行本で6冊、文庫本でもシリーズ4冊目が発刊されている人気コラムです。
かの小林秀雄の「考えるヒント」をもじったタイトルで、最近のJポップスを次々と批評しているが、その歯切れの良さはすこぶる小気味いい。近田氏は、1951年生まれ、75年から音楽活動を続ける傍ら、作詞作曲、プロデュース、DJそして歌謡曲評論家をこなす。ジャンルは違うが、彼の評論は、曲の本質を瞬時に鋭く捉え、少ない言葉で的確に評論するという特長を持っている。私も、音楽を聴いたとき、自分なりの感想を頭に描くのだが、それをブログで表現するとなると、的確な言葉が見つからず、いつももどかしさを感じているのだが、近田氏の音楽センスとボキャブラリイは抜群で、私のブログなどはとても足元にも及ばず、あんな表現が出来たらなあと思ったことは何度もある。

紹介する本は、1997年に雑誌に掲載したコラムをまとめた文庫本なので、取り上げている歌手や歌はもう相当古くなっているが、ヒット曲なるがゆえに、その古さが生まれるだろう事も、技術が進んで音楽が大量消費財化する時代についても近田氏は予測しているから恐れ入る。
コラムのタイトルのつけ方は「うまい!」というほかはない。例えば「今井美樹と布袋寅泰の歌を介したSM的関係」、「国体の消臭につとめるユーミンに紫綬褒章を」とか「ユ-ミンは低カロリーへ みゆきは激辛へと進む」など、読まずにはいられない気にさせるタイトル。

考えるヒット (文春文庫)
近田 春夫 / / 文藝春秋
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またまた話は変わるが、例えば「森山良子」、「加藤登紀子」などベテラン歌手、熟年歌手のヒット曲カバーアルバム化が盛んである。過去にも、高橋真梨子の「紗Ⅰ、Ⅱ」、中森明菜の「歌姫シリーズ」などあったが、コンテンポラリーに歌える歌がないといわれる熟年あるいはシニア世代を明確なターゲットとした企画が盛んなのも、徳永英明の「Vocalistシリーズ」、「R35 Sweet J-Ballads 」の大ヒットが影響しているのだろう。そのようなレコード会社の思惑はあるにせよ、人生の年輪を重ねた熟年歌手が、自分の歌ではない時代のヒット曲を、その人生経験というフィルターを通してろ過し、オリジナルとは一味違った自分の表現に結実させていくという、歌い手の思いは共感できる。数あるヒット曲、時代とともに忘れ去られていくヒット曲を、熟年歌手の年輪というフィルターを通して、日本のスタンダード曲化をしていく意義ある作業とも思えるのだ。   

加藤登紀子によるカヴァー・アルバム「SONGS うたが街に流れていた」。
見知らぬ者どうしがすれ違う街角、そこにどこかから聞こえる歌があった・・・・・。昭和の歌謡名曲から「夜空ノムコウ」まで、人々の暮らしの営みの中で街の中に溶け合い人の記憶や心に残る名曲を選曲したアルバム。

SONGS うたが街に流れていた
加藤登紀子 / / UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
ISBN : B00164POO6
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シネマへの郷愁

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ゴールデンウイーク、今の私にはもうあまり関係ないことであるが、この期間、どこへ行っても、混んだり渋滞で往生するのが目に見えているため、「遠出はしないのに限る」と決め込み、溜っていた家事や読書、DVD、近隣ドライブ、ブログ書きなどに精を出していた。
私の子供の頃は、GWといえば娯楽の主役は映画であった時代。昨今、シネマ・コンプレックスの隆盛によって、「映画の復権」が語られてはいるが、当時の映画の隆盛とは比べ物にならないと思う。  

映画に目覚めたのは、多分高校生の頃。我が母校は映画館での映画鑑賞は、たしかOKであったように思う。それに加え、母校を含め近隣の高校生徒会主催の名画鑑賞会が頻繁にあり、結構な本数を高校生にしては観たように思う。
記憶間違いもあるかもしれないが、アメリカ映画で言えば、「駅馬車、真昼の決闘、荒野の決闘、ジャイアント、十戒、ベン・ハー、エデンの東、怒りの葡萄、・・・・」。ヨーロッパ映画で言えば、「禁じられた遊び、死刑台のエレベータ、恐怖の報酬、太陽がいっぱい、二人の女、鉄道員、道・・・ 」など。日本映画は少なく、「二十四の瞳、七人の侍、楢山節考、太平洋ひとりぼっち、飢餓海峡・・・・」などであったか。
シネコンではなく映画館。ロードショーでなく、2本立て、中には3本立て。ソファーでなく固い木の椅子。ポップコーンでなくニッキ飴。便所くさい?独特の臭いのする決して快適とはいえない環境の中でわくわくしながら映画を観ていた。

このGWに観た2本のDVDに共通する底流は、期せずして「シネマへの郷愁」であった。1本目は、「泣かせの次郎」と異名をとる「浅田次郎」原作で、「鉄道員(ぽっぽや)」、「ラブレター」につぐ同じ短編集、「鉄道員(ぽっぽや)」からの映画化で「オリヲン座からの招待状」。「たそがれ清兵衛」、「父と暮らせば」で素晴らしい女優に成長した「宮澤りえ」が主演、監督は 三枝健起。

「突然ではございますが、昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館いたすことと相成りました」という一通の招待状が、ゆかりの人々の元へ送られてくる。
昭和30年代、先代の館主・松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子であった留吉(加瀬 亮)が、先代の志を引き継ぎ松蔵の妻・トヨ(宮沢りえ)と映画館を守る事となった。古い時代、周囲の人々からは、陰口を叩かれたりもし、さらには映画産業が斜陽になり始め、貧乏に耐えながらもひたすら映画を愛し、映画の灯を灯し続けた二人。そして何よりも純粋にお互いを思いやり、愛し続けたのだった。

映画のなかで、たびたび引用される映画は、「無法松の一生」「二十四の瞳」「君の名は」「幕末太陽傳」「丹下左膳」「ギターを持った渡り鳥」「嵐を呼ぶ男」など日本映画史を飾る名画。この映画は、映画をひたむきに愛した男と女の話であるとともに、昭和の日本映画が最も輝いていた時代へのオマージュといっていい。

オリヲン座からの招待状
/ TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
ISBN : B0011805OG
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そして、メインテーマ「PLACE TO BE」ほかピアノを奏でるのは、ニューヨークで活動し、アメリカでも高い評価を受けている若手JAZZピアニスト「上原ひろみ」。全編を彩って、彼女の奏でる美しいピアノは、場面にふさわしく、心のそこからゆっくりとあがってくるような感動を呼び起こす。

映画「オリヲン座からの招待状」オリジナル・サウンド・トラック
サントラ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
ISBN : B000V3PRAO
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浅田次郎の原作本、泣ける短編集「鉄道員(ぽっぽや)」。原作と映画は主人公、視点、ディテールで違う点はあるがともに泣ける佳作であることは間違いない。

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)
浅田 次郎 / / 集英社
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2本目は、イタリア映画、これぞシネマの郷愁「ニュー・シネマ・パラダイス」。第二次世界大戦直後のシチリア島。村唯一の娯楽は、映画館『パラディソ座』だった。映画の魅力にとりつかれた少年トトと、彼が父代わりに慕った映画技師アルフレードとの心のふれあいの物語。この映画も劇中、「駅馬車」「揺れる大地」などの往年の名画がでてくる。監督は、シチリア島出身で、本作で89年アカデミー外国語映画賞を受賞した「ジュゼッペ・トルナトーレ」。

ニュー・シネマ・パラダイス [SUPER HI-BIT EDITION]
/ 角川エンタテインメント
ISBN : B000DZV6V4
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音楽は、マカロニウエスタン「夕陽のガンマン」、「荒野の用心棒」のテーマ曲で一躍有名になり、いまは押しも押されぬ映画音楽の巨匠「エンニオ・モリコーネ」。多くのミュージシャンが、カバーをしている名曲の、この「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ曲も手がけ、その存在感は、いささかも衰えていない。  
その稀代の作曲家の作品を演奏するために多彩なミュージシャンが集まったアルバムがある。ヨーヨー・マ、アンドレア・ボチェッリ、ルネ・フレミング、葉加瀬太郎、クィンシー・ジョーンズ+ハービー・ハンコック、クリス・ポッティ、ブルース・スプリングスティーン、エドワード・ヴァン・ヘイレン、セリーヌ・ディオン、などもう大変なビッグネームたちが彼に捧げたアルバムである。

ウィ・オール・ラヴ・エンニオ・モリコーネ
ドゥルス・ポンテス / / ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
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シネマを愛するひとたちにプレゼントされた素晴らしい日本、イタリアの映画2作品。心に余韻を残す名場面は、「蛍」と「花火」、そして美しいサウンドトラック・・・・・。

もしもピアノが弾けたなら(7)   ~ マンハッタンの哀愁(2) ~

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(写真はハーレムにあるアポロ・シアター。 同HPより)

都会的で、一番NYらしいなあと私が感ずる、JAZZピアノ・トリオの一方の旗頭が、前回紹介の「ニューヨーク・トリオ」である。そして、ハーレムのブルース、黒人音楽の感触を色濃く残しながら、今のNYに生きるソウルフルなJAZZピアノ・トリオのもう一方の旗頭は、「ジュニア・マンス・トリオ」であろう。「ジュニア」と呼ばれたのは父親もピアニストだったためで、1928年イリノイ州エヴァンストン生まれ。たしか、「綾戸智恵」がニューヨークで暮らしていたとき、彼と親交があり、一緒に音楽活動もしたこともあったらしく、帰国してから彼が有名なJAZZピアニストであることを初めて知ったと語っていたことを思い出した。

「ジュニア・マンス/ソウル・アイズ」。マル・ウォルドロンのタイトル曲をはじめ、ブルースの名曲「ストーミー・マンデイ」などスタンダードをブルージーに、それでいて都会的感覚に満ちたいぶし銀のような演奏で聴かせる佳品。

ソウル・アイズ
ジュニア・マンス・トリオ / / エム アンド アイ カンパニー
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また、都会的で叙情的で、今のコンテポラリーなNYを感じさせ、彼の別の一面を観る思いのアルバムは、「ジュニア・マンス・トリオ+1/イエスタデイズ」。私のお気に入りの歌で、「What are you doing the rest of your life ?」も心に染み入る演奏。「エリック・アレキサンダー」のサックスが泣かせる。(「60歳過ぎたら聴きたい歌(1) ~What are you doing the rest of your life ?~ 」参照)

イエスタデイズ
ジュニア・マンス・トリオ+1 / / エムアンドアイカンパニー
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弱肉強食、勝者の論理が支配する冷血なビジネスのための都会が一転して、夜に見せる哀愁や優しさ、熾烈な昼間のビジネスを終えたビジネスマンやエグゼクティヴたちが夜に憩うJAZZクラブやレストラン。そんな彼らのBGMにふさわしいJAZZにもまたピアノトリオが似合うのである。しかし、彼らはJAZZには耳が肥えているので、決してイージーな演奏では納得しない。おのずから一定のレベルを要求されるし、その要求にこたえられる店やプレイヤーたちだけが生き残っていけるという。やはり「オン」でも「オフ」でもNYは、JAZZがよく似合う街であった。

そんなクラブやレストランでの雰囲気を一番よく伝えるピアノ・トリオが「マンハッタン・トリニティ」。スタンダード曲をアルバム・タイトルにした2枚、「シャレード」、「ラヴ・レターズ」をあげておこう。決してイージーな演奏ではない最高のBGMといっておこうか、主張しすぎない軽やかな演奏が耳と心に心地良い。印象派風のジャケットもいい雰囲気である。

シャレード
マンハッタン・トリニティ / / エム アンド アイ カンパニー
ISBN : B000AHQFM0
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ラヴ・レターズ
マンハッタン・トリニティ / エムアンドアイカンパニー
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閑話休題

【アポロ・シアター】 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋

アポロ・シアター(Apollo Theater、アポロ劇場)は、ポピュラー音楽においてアメリカ合衆国で最も著名なクラブの一つであり、アフリカ系アメリカ人(黒人)のミュージシャンやアーティスト専用ともいえるほど関わりの深い有名なクラブである。ニューヨーク市内の黒人居住地区「ハーレム」の125番街に位置し、毎年130万人が訪れるニューヨークの観光名所の一つとなっている。

1934年に黒人のエンターテイナーを雇うニューヨークで唯一の劇場としてオープンし、黒人文化の象徴的存在となった。1934年以来、アマチュアの歌手やダンサーが出演する人気イベント「アマチュアナイト」が行われている。プロへの登竜門といわれ、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、ジェームス・ブラウン、ダイアナ・ロス、マーヴィン・ゲイ、ジャクソン5、スティーヴィー・ワンダー、アレサ・フランクリン、ベン・E・キング、ローリン・ヒル、サラ・ヴォーンなど多くのスターを輩出してきた。

私がかってNYを訪れたとき、アポロ・シアターで「B・B・キング」がコンサートをやっていたが、日程等の関係で観れずに、悔しい思いをしたことがある。今年、和田アキ子がアポロに出演するという。これは凄いことですよ!確か彼女のデビューは1960年代後半で、「ボーイ・アンド・ガール」という、ソウル色、R&B色の濃い歌で、これはすごい新人が出てきたと、大学時代よく通っていたB軒のマスターから教えられた。
しかし、彼女の公式プロフィールには、1968年10月25日、「星空の孤独/cw never say never」でレコード・デビューとある。う~~~ん、私の記憶ではその1、2年前に、「ボーイ・アンド・ガール」がデビュー曲だったような記憶。 きっとホリプロからのメジャー・デビュー前のインディ系からのリリース・シングル?だったかも知れない。 その後彼女は、R&B色が薄れ歌謡曲に流れていったのは私としては残念。もう大御所になった今、原点のR&Bを今一度と思うのは私だけではあるまい。

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もしもピアノが弾けたなら(6)   ~ マンハッタンの哀愁(1) ~

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ピアノを発明してくれたイタリアに敬意を払って、JAZZピアノの旅をイタリアから始めましたが、やはり「JAZZ」といえばニューヨークははずせません。
初めて訪れたニューヨーク、イースト・リバーをはさんで、対岸のブルックリンのレストランから見たマンハッタンの夜景、本当に息を呑むほどに美しかった。パーラメント・ブルーの夜の闇と、きらめくスカイクレーパー(超高層ビル)の明り、それをゆらゆらと映し出す川面、何度となく映画で見ていた憧れの光景が現実となったが、きらびやかな中に哀愁すら感じるその絶景はいつまで見ていても飽きることはなかった。
初めて訪れたJAZZクラブは、このとき「ハンク・ジョーンズ」を初めて聴いた、今はもうない「Fat Tuesday」であった。(「ハンク・ジョーンズの思い出~初めてのニューヨーク」参照)
1ドリンク付のテーブルで、確か40ドルぐらいであったか、その想い出に残る雰囲気は、ピアノ・トリオではないが「ケニー・バロン」の白熱のライブ盤にとって偲ぶしかない。

ライブ・アット・ファット・チューズデイ(紙ジャケット仕様)
ケニー・バロン / / Ward Records
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アメリカの中でも独特の雰囲気とカルチャーを持つ街「ニューヨーク・シティ」。西海岸の連中に言わせると「NYは仕事中毒のCrazy City」というし、NYの連中は、「LAは1年中、Tシャツと短パンしか着ないCrazy City」というが、あのNYの雰囲気と夜景は、決して西海岸では味わえないもの。そのNYの雰囲気を最もよく伝えるアルバムは、「チャーリー・ヘイデン(b)」 と「ケニー・バロン (p)」のデュオの名盤「ナイト・イン・ザ・シティ」。ブロードウェイのクラブ「イリジウム」でのライブ盤である。NYへのチャーリーの想いが溢れ、聴いているだけでマンハッタンの夜景が目の前に現れてくるような、そしてそこで暮らす人間の営みに想いが馳せるようなすばらしいアルバム。とにかくバロンの宝石のようなピアノのタッチに魅了される。ベースとピアノ。この最小限の編成になるユニットから紡ぎ出される音には、不必要な音やフレーズは一つもない。夜ふけに静かに耳を傾け、静かな緊張感と都市のもつ哀愁に浸るには最高の音楽である。(アルバムタイトル原題は「Night And The City」でニュアンスが少し違うのだが・・・・・)

ナイト・イン・ザ・シティ
チャーリー・ヘイデン ケニー・バロン / ユニバーサルクラシック
ISBN : B00005FKHX
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そして、都会性と哀愁を、ピアノのタッチに込めて歌うことができる私の贔屓のピアノ・トリオの一つは、「ビル・チャーラップ」率いるニューヨーク・トリオ。トリオを組むのは、ベースのジェイ・レオンハートとドラムのビル・スチュアート、当代きっての手ダレ。アメリカ出張時の飛行機の中で、何回となく聴いたNYトリオのアルバムは「過ぎし夏の想い出」。ニューヨークの粋さ、洗練されたモダニズム、都会性、哀愁、詩情が横溢する、まさにニューヨークJAZZ。

過ぎし夏の想い出
ニューヨーク・トリオ ビル・チャーラップ ジェイ・レオンハート ビル・スチュアート / ヴィーナスレコード
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そしてチャーラップのピアノはスタンダード・ソング、いわゆる「歌」ものの解釈が抜群である。「過ぎし夏の想い出」の「いそしぎ」、「モナリザ」、次にあげるアルバム「星へのきざはし」の「煙りが目にしみる」や「ザ・マン・アイ・ラブ」 に溢れる詩情はどうだろう。奏でる一音一音が、歌の情景を脳裏に描き出してくれるといったらほめすぎだろうか・・・。

星へのきざはし
ニューヨーク・トリオ / ヴィーナスレコード
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この歌心は当然ながらチャーラップ一人によるものではなく、他の二人、特にベースの「ジェイ・レオンハート」の技に依るところが大きい。そしてNYトリオの極めつけの「歌もの」として、コール・ポーター作品集「ビギン・ザ・ビギン~コール・ポーターに捧ぐ」があげられよう。三曲目の「ソー・イン・ラブ」のせつなさ、甘さ。NYトリオ演奏のこの曲は「ジーン・デノヴィ」、「ロマンチック・ジャズ・トリオ」の演奏版とならんで、我が愛聴盤ともなっている。

ビギン・ザ・ビギン~コール・ポーターに捧ぐ
ニューヨーク・トリオ / / ヴィーナス・レコード
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ニューヨーク。弱肉強食の論理が優先する、暮らしていくには厳しい街であるが、JAZZやモダンアートにあふれた、もう一度行ってみたいと思わせる魅力に満ちた街でもある。



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