たまに聴かれることがあります、「爵士さん、男性ボーカルは聴かないんですか?」と。そんなことはありません。過去このブログでも、女性JAZZファンのために、イケメン男性ボーカルや「ちょいワルおやじ的」ボーカルを特集したことがあります。(「Jazzyな「ちょいワルおやじ」、「貴女に贈るイケメン・ボーカル特集」) しかし、「我が心のミューズ」と同等の「入れ込み男性ボーカル」なるとハードルが少し高くなってしまいます。女性ボーカルの場合は、対象となるアーティスト数は極めて多く、さらに、ルックス、容姿、美脚、声質、歌唱法、スイング感・・・・・などなど多方面からのアプローチ、評価が可能、それに加え、元来の惚れっぽい性格からして、フォーカスしていくことが出来るのですが、男性ボーカルの場合はアーティストの数が少ないこと、人生の到達点としての高み或いは男として、かくありたいと思う生き様など、アーティストに対する高い要求が、もちろん私の勝手ですが、ハードルとして設定されてしまうため、どうしても少なくなってしまうようです。
そんななかでも「男心に男が惚れた男唄の唄い手」が何人かいます。なぜかJAZZアーティストが少なく、非JAZZ、非アメリカのアーティストや鬼籍に入ったアーティストが多いという、このブログには、ややそぐわない結果になっています。
若い頃、男なら誰でも一度は憧れた「ちょいワル」あるいは「退廃、無頼」の世界。そんな伝説的な無頼派のJAZZプレイヤーの代表が、「泣かせのトランペッターにして、恋唄唄いのチェット・ベイカー」。当時全盛だった黒人プレーヤー中心の「ビ・バップ」に対抗して、人気のあった白人中心のいわゆる「ウエスト・コースト派」の代表プレイヤーが彼。ジェームス・ディーン似のイケメンで、甘くハスキーな高音でささやくように歌うその魅力、魔力にとりつかれた女性も数知れずという。男性の私でさえも取り付かれてしまったのだ。生涯ドラッグのスキャンダルから抜け出すことは出来なかったが、DVDで晩年のころのコンサートをみると、薬物のためか、皺だらけでものすごく老けた顔とは対照的に、純粋さと危うさを秘めたブルーの眼がものすごく印象的。1988年5月、滞在中のアムステルダムのホテルの窓からなぞの転落死をとげ、彼は59歳で逝ってしまった。
私たちオジサン世代にとっては、ちょいワルぶってJAZZを聞きかじりだした青春時代には、彼のような「ジャズ・マン」が一種憧れだったことは間違いない。私がはまった曲は、傑作と思う2アルバム「Chet Baker Sings」の「I Fall in Love Too Easily 」と、「ラヴ・ソング」の「I’m A Fool To Want You」。 今でも「I’m A Fool To Want You」を 聴くたびに、その切なさに心が打ち震えることがある。没後20年経ったいまでもこの男は、何故こうも私の心をかき乱すのであろうか。まだ異端の音楽であった頃のJAZZが持つある種の毒気が、いまだに効いているのだろうか?
Chet Baker Sings
Chet Baker / Pacific Jazz
ISBN : B000005GW2
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ラヴ・ソング
チェット・ベイカー ハロルド・ダンコ ジョン・バー ベン・ライリー / BMG JAPAN
ISBN : B000FWGTVM
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1987年6月14日、昭和女子大学人見記念講堂でのライヴ録音。これが唯一の日本でのライブ盤といわれ、翌年、文字通り伝説の人となってしまった彼の晩年を代表する名盤。枯淡の味わいの中にもギラッと光る妖しさと危うさが垣間見られる圧倒的なプレイ。
Chet Baker in Tokyo
Chet Baker / / Evidence
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没後20年、「PLAYBOY 日本版」8月号のJAZZ特集に、辺見庸氏のチェット・ベイカー論が掲載されていた。
