JAZZYな生活

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男唄に男が惚れて(5)  ~バルー、サルバドール、セグンド 人生の達人たち~

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たった一枚のCD、そのCDにミュージシャンが年を重ねてたどり着いた境地が凝縮されているが故に、人をとりこにしてしまう、そんなCDがあります。私の場合、「ピエール・バルー」、「アンリ・サルバドール」、「コンパイ・セグンド」などがそうであった。この3人については、すでにバラバラにこのブログにとりあげているが、この「男唄に・・・」の最終回に取り上げるにあたって、あらためて要約し、再掲することにしました。

「ピエール・バルー」。1934年パリ生まれ。クロード・ルルーシュ監督の映画「男と女」で、「アヌーク・エーメ」の夫役で(実生活でも実際に結婚したのだが)、劇中、ダバダバダ・・・で始まる有名なあのテーマ曲を歌っている歌手兼俳優といえばご存知であろう。当時初めて聴いたボサノバ、その新鮮な衝撃は今でも憶えている。それほど魅かれながらも、その後何故かあまりバルーの歌を聴くことはなかった。

その「ピエール・バルー」の新作が昨年発売された。そのアルバム・タイトルは「ダルトニアン(色覚異常者)」。実は私も「ダルトニアン」。小中学校のころの色覚検査で、いつでも引っ掛かっていた。実生活で特に不自由はなかったが、色覚検査表では、他人には見えるものが私には見えず、他人に見えないものが私には見えるので、自分でもいつも不思議に思っていた。
「色覚異常だから、肌の色で人種差別はしない」と語った彼の言葉に、強く惹かれて買ったこのCDには、9年間の間にポツポツと作り溜めた曲が17曲収められ、しかも録音はパリ/ヴァンデ/東京で1999年から2006年まで7年かかって、1枚の作品として完成させたという。統一的なテーマは特にないらしいが、73歳になる老境を迎えたバルーが、自らの過去を追想する曲が多く盛り込まれている。
「冬、深夜、街」などをモティーフにした愛のバラード「夜更けに」。現在の夫人に捧げたジョビンの名作「コルコヴァード」の仏語カヴァー、愛し合う男女でも同じ経験への記憶がまったく違うことを唄った「記憶」。彼の生き方をタイトルとして表わした「ダルトニアン」。敬愛するビリー・ホリディが唄ったJAZZスタンダード「ケアレス・ラブ」に自身が仏語詩をつけ、ホリディに捧げた「ビリー」。チャップリンの「モダンタイムズ」からの「ティティナ」、そして自身のカバー「ラスト・チャンス・キャバレー」。たしかに統一したテーマはないが、自分の歩んできた人生をいとおしむかのように歌う唄の数々。訳詩を見ながら、こんな唄が歌える彼の境地に共感し、うらやましくさえ思ってしまった。やはり、彼の人生にもストーリーがあったんだ。17篇の珠玉の彼の人生がつまった最新アルバム、そして少年のような目を持つ73歳のピエール・バルーの男唄にすっかり惚れてしまった。

「私は散歩者。世界中を漂い、歌で物語をつむぐ」と語るバルー・・・・・。

ダルトニアン(DVD付)
ピエール・バルー / / オーマガトキ
ISBN : B000R5OQA8
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「アンリ・サルバドール」。1917年南米フランス領ギアナ、カイエンヌ生まれ。パリで音楽活動を続け、レジオン・ド・ヌール勲章受賞、日本で言えば、三波春夫か北島三郎のような存在だという。2008年2月13日、動脈瘤破裂のためパリの自宅で死去。90歳。そのことを知らずに、ジャケットの「伊達男ぶり」に惚れて、ついCD「サルバドールからの手紙」を買ってしまったが、この「手紙」がまさに彼の遺書となってしまった。
このアルバムが日本で発売された2001年時点で、彼は当時84歳だというからおどろきである。すべて未発表曲13曲で構成されているが、「ボクは昨日生まれ、今日生き、明日死ぬ」というポリネシアのことわざを大事に守って84年間生きてきた彼の一つの到達点、境地を示している。そのことは、「こもれびの庭に」、「眺めのいい部屋」、「人生という名の旅」、「毎日が日曜日」、「生きてるだけじゃ駄目なんだ」・・・・などの収録された曲のタイトルをみても強く感じることが出来る。私はフランス語は分からないので、訳詩に頼るしかその意味は理解できないのだが、一度聴いたら忘れがたい、深くて、渋い「男」の声によって語られる「人生の物語」である。

サルヴァドールからの手紙
アンリ・サルヴァドール / / EMIミュージック・ジャパン
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JAZZギタリストでもある、「ライ・クーダー」が、キューバ音楽の伝説的なアーティストたちをドキュメンタリー映画としてまとめた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」をみたのは、ヨーロッパからシカゴに向かう大西洋上の機内であった。この映画は、1932年ハバナに設立され、かってアメリカ資本が華やかなりし頃全盛期を迎えた、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で活躍したミュージシャンたちと、今はもうすっかり老いてしまったが、150年の歴史のある「ソン」という音楽を、その後のキューバ革命の荒波をくぐってを守り続けてきたことを描いたドキュメンタリーである。帰国するなり、すぐCDを手に入れるほど魅せられたドキュメンタリー。革命の嵐を超え、自分たちの音楽を守り抜いてきた誇りと矜持に支えられ今でも現役のミュージシャンであり続ける伝説の老ミュージシャンたち。主役は89歳になるという「コンバイ・セグンド」。老いてはいるが、輝きを失っていないその魅力的な表情と歌の力。ここにも、かくありたいと思う「老い」の一つの到達点を見た思いがする。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
ライ・クーダー&キューバン・ミュージシャンズ エリアデス・オチョア イブライム・フェレール コンパイ・セグンド ライ・クーダー マヌエル“プンティリータ”リセア ルベン・ゴンザレス / ワーナーミュージック・ジャパン
ISBN : B00005HGVA
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・・・ せめて生きたや 仁吉のように・・・・・。  (作詞;佐藤惣之助/人生劇場)

もしもピアノが弾けたなら(9)   ~ 至福のハンガリアン・ナイト ~

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(写真は小ホール、芸術文化センターHPより)

「ロバート・ラカトシュ」、なにわのJAZZレーベル澤野工房がいちおしの若手JAZZピアニスト。1975年ハンガリー、ブタペスト生まれ。まだ33歳の気鋭のアーティスト。
聴いた瞬間に「やばい!!」と直感的に感じるアーティストが過去にも何人かいましたが、彼もその一人でした。2週間ほど前に初めて友人の薦めで聴いてはまり、7月24日に初来日コンサートがあるの知り、速攻チケット予約し、コンサート「Robert Lakatos Trio & Solo」に行ってきました。

コンサートがあったのは、あの大震災から10年後、兵庫県の文化復興のシンボルとして阪急西宮北口駅にオープンした、芸術監督を「佐渡裕」が務める兵庫県立芸術文化センター。地元住民の熱い支持やボランティアをうけ、大きな成功を収め、芸術文化の新しい発信拠点となった大中小3ホールのうち、座席数約400の小ホールで開催されました。
ユニークな変則八角形のドームで、床、壁、天井、座席すべて木材で覆われたアリーナ形式のホール。そのため、パフォーマーの一挙手一投足が間近に見え、息づかいまでもが聴こえてきそうな客席と舞台の一体感に長け、ピュアーで自然の音に包み込まれるような、ラカトシュには最もふさわしいと思われるようなホール。JAZZ、しかもそんなに有名だとは思われないアーティストなのに、ほぼ満席で、我々とほぼ同世代のご夫婦連れが多かったが、彼の音楽性のためか、意外と若い女性客が多かったことにびっくり。

演目は「You and The Night And The Music」からはじまり、トリオ、ソロを交え、今までのCDに収録された「アルマンド」、「エスターテ」、「フラジャイル」など美しく煌くおなじみの曲が中心で、あっという間の2時間であった。ラカトシュは、私がピアノ・トリオに魅かれる、或いは望む四要素、「美しさ」、「切なさ」、「心に届く深さと力強さ」をすべて持っている。ピアノ・トリオに慣れ親しんでいるベテランだけでなく、これからピアノ・ジャズを聴いてみようかと思っている人にも是非おすすめのアーティストである。先の四要素を持っているがゆえに、決してイージーではなく心に響いてくるはずだ。クラシックも好きな人なら、なおさらであろう。

アンコールの「ブルーモンク」にもびっくりしたが、この日の演奏曲のなかに「チャーリー・パーカー」の曲が2曲ほどあったが、かれもパーカーを尊敬しているみたいで、美しいであるばかりでなく、その根っこに力強いビ・バップへの憧れが脈打っていることも垣間見ることができた。

ラカトシュは、ハンガリー語とドイツ語しかしゃべれないらしく、終始無言で、(MCはドラムのドイツ人ヴァイスが担当していたが)相撲取りかと思う大柄な体格で、スタンウエイが大変小さくみえた。しかし、いったん弾き始めると、その鮮やかなタッチの指先から紡がれる音楽は、無骨な外観からは想像できないくらい美しい。やっぱり、ロバート・ラカトシュ、今後、眼いや耳を離せないJAZZピアニスト。至福の一夜であった。

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You And The Night And The Music
最新3rdアルバムで、今回の来日のメンバーによる演奏である。タイトル曲「You And The Night ・・・・」、「Fragile」、「Whisper Not」、など美しいスタンダードとスインギーな曲が絶妙な組み合わせで芳醇な雰囲気を醸し出す、きっと聴く場所を選ばない珠玉の一枚。

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Never Let Me Go
2作目でラカトシュの本領発揮、まさしく本物、王道であることを確信させるほどのできばえ。なかでも、「Estate」は最高の聴きもの。

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So In Love
デビュー作であるが、この「Allemande」の美しさはどうであろう。かの寺嶋氏が「Jazz Bar 2005」に取り上げたのも分かる。そして「Zingaro」、「Yesterdays」と続けば、デビュー作にして、澤野レーベルの看板アーティストに間違いなく成長するであろうことを予感させるアルバム。

そして、偶然前の日に見たDVDは、今年見逃していたハンガリー映画、クリスティナ・ゴダ監督「君の涙 ドナウに流れ」。
第二次世界大戦以後、ナチの支配下であった東欧地域は、ソビエト連邦(現・ロシア)の支配下に入り、社会主義体制をとる事になる。 表面上、社会は平静を保っていたが、裏では秘密警察による厳しい言論統制や粛清が行われて居り、ポーランド、ハンガリー、チェコでは、自由を求める人々が蜂起しては、ソ連軍に制圧される、という事件が繰り返されていた。1956年に起こった、いわゆる「ハンガリー動乱」と、メルボルン・オリンピックの栄光の陰で繰り広げられた悲劇を描いた作品。
オリンピックに向けて水球チームのエースとして活躍するカルチは、学生デモを統率する女子学生ヴィキと出会う。革命を信じる彼女と接し、ソ連軍が市民を撃ち殺す光景を見たカルチは、自由のための戦いに身を投じてゆく…。若い男女の愛の物語を中心に、感動のストーリーは展開されますが、 ハンガリー国民の苦難の歴史を、50年以上も経った今、映画として描く事が出来たという歴史の背景にも思いを馳せる映画であった。

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956 デラックス版
/ ジェネオン エンタテインメント
ISBN : B0017UE0PS
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映画とコンサート。二夜連続、至福の「ハンガリアン・ナイト」であった・・・・・・。

JAZZ的トリビア(6) ~JAZZと美脚との最後の関係~

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えっ、もっと美脚ジャケットはないかとおっしゃるんですか。あなたも好きですね。いいでしょう、それじゃ、今回が在庫一掃、決算棚卸、最後の足ジャケ特集ですよ。

最初は、「エディ・ヒギンス」と泣かせのSAXの達人「スコット・ハミルトン」と組んだアルバム「マイ・ファニー・バレンタイン」。この脚も「デイブ・ブルーベック/エニシング・ゴーズ」と双璧をなす絶品といっていいほど美しい。「エディ・ヒギンス」について、甘すぎてかったるいとか、そんなことをいう人も多いけど、私は老いて益々色気も艶も磨きがかかってきたご老体、エールを送りたいね。このお二人は、もう何回もこのブログで取り上げているので、いまさら解説の必要もないでしょう。
スタンダード・ソングを、ずらりとならべ、スマートさにあふれ、甘くて、美しいなごみのアルバムに仕上がっている。

マイ・ファニー・バレンタイン
エディ・ヒギンズ&スコット・ハミルトン / ヴィーナスレコード
ISBN : B0009I8TUG
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つぎは、「秘密の花園」からの特選、スウェーデンの妖精「Lisa Ekdahl/リサ・エクダール」。彼女は、伏せ目、横ずわりと美脚だけでなく、ロリータ・ボイスでおやじの弱点を見事についてくる妖精、はたまた小悪魔ではないか。どうですこの膝頭は・・・。
アルバム「Back to Earth」では、ささやくような声で、あの往年のナットキングコールの「Nature Boy」、「Lonely One」やスタンダードの「Tea for Two」、「Night and Day」なんかを歌うからたまらない。

Back to Earth
Lisa Ekdahl Peter Nordahl Trio / RCA
ISBN : B00000IFUZ
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足ジャケ定番の男組トランペッター「ライアン・カイザー/ザ・サイドワインダー」。いわずとしれた「リー・モーガン」の最大のヒット曲のカバー・アルバム。夏が来て、突き抜けるようなペットの快感が味わいたくなった人に最適ですよ。コピーにいわく、「その音には、澱みがなく、迷いがなく、キレがある。」 

ザ・サイドワインダー
ライアン・カイザー サム・ヤヘル ピーター・バーンスタイン ウィリー・ジョーンズ3 / ビデオアーツ・ミュージック
ISBN : B00007K4MM
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つぎは奥ゆかしいところから一枚。フランスの国民的人気歌手「パトリシア・カース/ピアノ・バー」。フランスの誇る「ミッシェル・ルグラン」や「シャルル・アズナブール」のフレンチ・スタンダードを英語で歌っているアルバム。薄く水の張った床に置かれた深紅の薔薇。そこにそっと足を入れようとするペルシャ風衣装の女性のアンクレットと波紋。この足ジャケットは粋でおしゃれですね。

ピアノ・バー
パトリシア・カース / ソニーミュージックエンタテインメント
ISBN : B00006IIFF
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次は筋肉トレーニング前に行う「ストレッチ」、或いは「ヨガ・ポーズ」の手引書から二点。足ジャケの範疇に入るかどうか、やや疑問な点もあるのですが・・・・・。ジャズ・ボーカルのUAとサックス奏者菊地成孔とのコラボレーション・アルバム「cure jazz」。アルバムタイトルの「cure」は「cure=癒し」の意味。さらに、菊地(きくち)のキ+UA(うーあ)=<きぅーあ> という語呂合わせだそうだ。「OVER THE RAINBOW」といった誰しもが耳にしたことのある曲をはじめ、「チュニジアの夜」などのスタンダード楽曲中心のアルバム。ただ、このジャケットから菊地とUAの関係をどう捉えたらいいのだろうか?

cure jazz
UA×菊地成孔 / / ビクターエンタテインメント
ISBN : B000FVQNAU
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もう一枚は、初代ヨーロピアン・ジャズ・トリオのリーダーで現在は自前のトリオを率いている「カレル・ボエリ/ブルー・プレリュード」。
CDジャーナル評にいわく、「ひとつひとつの音をていねいに重ねていくボエリーのアプローチは、ピアノ・トリオとしてのジャズを、“ムーディなBGM”または“生活を演出するための道具”と考える向きには“探し求めていたものが見つかった”という印象を受けるかもしれない。」まさしくこのブログの目指すところではありませんか。バーグマンの「追想」のテーマ曲「アナスタシア」なども美しい。アルバムの中身とはうらはらにジャケはやや過激だ。多分モデルは撮影の翌日は筋肉痛に悩まされたに違いない。

ブルー・プレリュード
カレル・ボエリー・トリオ / エムアンドアイカンパニー
ISBN : B000BU6PYO
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そして最後は袋とじ?ジャケ。ややロリータがかった声が魅力な「五十嵐はるみ/サムシング」。スタンダードからPOPSのヒット曲までキュートでセクシーに歌ってくれる。下のジャケ写真をみると、黒っぽい衣装に身を包んでいるが、美脚は想像させるものの何の変哲もないジャケ。しかし、ジャケットを開いてみるとそこには・・・・・・ぽいコスチュームで惜しげもなく美脚をさらす彼女が・・・・。「秘密の花園」入りしたアルバムでもある。買った人だけが楽しめる袋とじジャケ。お楽しみはそれからだ。

サムシング
五十嵐はるみ / BMG JAPAN
ISBN : B00005EHIF
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私は断じて「足フェチ」ではありませんので、くれぐれも誤解無きよう・・・・・。

映画の想像力  ~最近のジジイ映画から~

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最近観た映画の感想として、「現実の事象は、映画の想像力をはるかに超えているのではないか」あるいは「これだけCGが発達して、何でも可能になったかのように見える映画の方が、実は現実に追いついていっていないのではないか」と感じたという話。

ロブ・ライナー監督「最高の人生の見つけ方」。 原題は、「THE BUCKET LIST/棺桶リスト」。 ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンという2大名優演ずる、死を意識した初老男性2人の希望に満ちた余生を描く人間讃歌。病室で知り合った2人が意気投合し、“やりたいことリスト”に基づき、残りの人生を生き生きと駆け抜ける、感動ストーリー。こんなコピーに惹かれてかなり期待してみた「ジジイ映画」であった。ストーリーは、 仕事に人生をささげた大富豪エドワード(ジャック・ニコルソン)と、家族のために自動車整備士として地道に働いてきたカーター(モーガン・フリーマン)は、入院先の病室で知りあった。共に余命は6か月。やりたいことをすべてやり尽くそうと決意し、「死ぬまでにやりたいことリスト(棺桶リスト)」を書き出して、病院を抜け出し、さまざまなことに挑戦する。まさに感動のジジイ映画になるはずであった。
が、結論からいうと脚本がまったく凡庸。リストの中身からして、スカイ・ダイビング、サファリ・ハンティング、カーレース、ヒマラヤ登山・・・・・。いずれも金さえあれば普通の人でも実現可能なものばかり。「世界最高の美女とキスをする」にいたっては、映画の序盤の段階でネタばれして容易に想像がつく。とはいえ、2人の名優のみせるいぶし銀の演技がこの凡庸なる脚本をどうにか救ってくれている。ジャック・ニコルソンは、天邪鬼で、助平で、わがまま一杯の、素直でない、しかしどこか憎めない初老の男を演じたら相変わらずの最高のはまり役、自動車整備工カーターの誠実さはフリーマンの「地」ではないかと思える自然な演技。

しかし、「死ぬまでにしたいこと」の殆どが、現実に金で片がつくのでは、なんという想像力の貧困さ。波の力で進む世界初の波浪推進船「SUNTORYマーメイド2号」でハワイ-日本間約7000キロの単独航海に挑んで、110日目に見事ゴールした、堀江謙一さんは69歳。堀江さんの単独での長距離航海成功は、1962年の小型ヨットによる太平洋横断以来、11回目になるという。70歳、75歳と2度のエベレスト登頂に挑んで成功した三浦雄一郎氏。この堀江氏、三浦氏二人の冒険のほうが「棺桶リスト」などより、よっぽど夢があるし、我々を勇気付けてくれる。現実のほうが間違いなく映画を超えているのだ。

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次は、アカデミー賞受賞作、コーエン兄弟監督「ノーカントリー」。原題は、「NO COUNTRY FOR OLD MEN/年寄りの居場所はない」。 1980年代のテキサスを舞台に、麻薬密売に絡んだ大金を偶然手にした男が非情な殺し屋に追われるサスペンス。大金を手にした男を映画『アメリカン・ギャングスター』の「ジョシュ・ブローリン」が、彼を追う殺し屋を映画『海を飛ぶ夢』の「ハビエル・バルデム」が、殺し屋を捕らえようとするリタイアを目前にした初老の保安官を「トミー・リー・ジョーンズ」が演じる。独特の緊迫感と恐怖を演出し、金と欲のからむ人間と社会の本質と、それによって引き起こされる不条理な、理不尽な殺人には立ちすくむしかないのかという二つのテーマをあぶり出す。

オカッパ頭という髪型をしたこの殺し屋は、高圧ボンベ付きの家畜用スタンガンで、鍵穴も人間の額も家畜と同じように無機的に撃ち抜く。感情や苦悩はまったく介在しない、まるでビジネスであるかように・・・。この異様で、異形の圧倒的な存在感を持つ殺し屋に観客は画面に釘付けになってしまう。次に何が起こるのか、何をするのかということに全神経が集中する。
この映画は、バイオレンス映画としては異論を挟む余地はないほどの「傑作」であるが、原題に込められたもう一つのテーマ、「すさまじい不条理が支配するこの現代に、老人は、なす術もなく立ちすくむしかないのか」は、この異形のキャラクターと圧倒的な迫力で迫るヴァイオレンスのまえに、すっかりかすんでしまったように思える。

無策に立ちすくむ年金医療制度危機や、非正規雇用が主となった若者の不安定な生活環境を遠因とするあいつぐ無差別殺人などに象徴されるわが国の現実を見るとき、静かなる、それでいてすさまじいばかりの社会の破壊を進行させている、オカッパ頭の異形の殺し屋は一体誰なのか、と問いたくなる。映画の想像力は現実に追いついていっていないのか・・・。

そして、この国も「NO COUNTRY FOR OLD MEN」になっていくのか・・・・・・。

夏の気配  ~潮風の記憶~

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梅雨が明けそうな気配とともにやってきた猛暑。こんなときはいつも新・西宮ヨットハーバーへの車を走らせる。20代後半ー30代にかけてヨットに夢中になっていた時期があり、西宮に限らず、今でも時々ヨットハーバーを訪れては、美しい船体を眺め、ステイや金具などが揺れてだす響き、波の音やきらめき、心地よい浜風と潮の香りにつつまれながら、心が深いところへ沈んで落ち着いていくのを楽しんでいる。この日も、夏の訪れとともに忙しくヨットマンたちで賑わいだした桟橋を見ながら、一杯のコーヒーを飲み、ヨットに夢中になっていた頃の私をほとんど知らない妻にレースやクルージングの思い出話を一方的に繰り返してはあきれられている。

この日は、このガソリン高のなか、本体や係留料をいれると、一体誰か買うのかと思われる高額のモータークルーザーのボートメーカーによる試乗会が行われていたが、試乗する人は少なかったように思う。 

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バースに係留されているヨット群の中にお目当てのヨットがあった。それは、つい先日波の力だけを頼りにした世界初のウェイヴ・パワー・ボート(波浪推進船)による、110日、7000kmのハワイからの航海を終えて帰港したばかりの、堀江さんが操る「SUNTORYマーメイドⅡ号」である。69歳の堀江さん、今回の冒険航海で「精神と肉体を完全燃焼できた」という。
ブラボー!!堀江さん。  

一方すぐ近くには、太平洋を超えて、ジョージタウン(船尾には、ユニオンジャックが掲げられていたが、米国ワシントンDC?、南米ガイアナ?)から来たゆうに100フィート以上はあろうかと思われる外洋レーサー「エンデバー号」。多分10人ぐらいのクルーが乗り込んでいると思うが、その船体の想像を絶する美しさと贅沢さ。
妻いわく、「いまでもあんなクルーザーで航海してみたい?」。「なにをいまさら、寝た子を起こすようなこと言うものではない」と答える。勿論、起きたところでどうしようもないのは言うまでもないが・・・・。

コーヒーハウスから沖をみると、ディンギー(二人乗りの小型レース艇)が団子になってレース練習の真っ最中。30数年前、同じ西宮の海の太陽と汗、目にしみるセール(帆)の白さと潮風の感触の記憶が甦る。

こんなヨットハーバーでのトロピカルな午後にぴったりなアルバムは、「今田 勝/トロピカル・サンセッツ」。80年代のフュージョン全盛期に出した彼の一連のヒット作のベスト盤。デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、渡辺香津美ら当代きっての豪華なゲスト陣を迎え、トロピカルな香り、ラテンのフレーバーいっぱいのフュージョン・アルバム。ヒット曲「アンダルシアの風」、「哀愁のカーニバル」は、ドライブでも、プールサイドでも聴くにはもってこいの1枚。

トロピカル・サンセッツ
今田勝 / アブソードミュージックジャパン
ISBN : B0000ABB3Z
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我が家の歳時記  ~季節の花と庭・三題~

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ここ一、二ヶ月ほどの間に訪れた季節の花と庭の名所をまとめて紹介します。
まず、「宝塚ガーデンフィールズ」。もともと電鉄会社経営の遊園地であったが、設備の老朽化、少子化、大規模テーマパークの開園などの影響で、ここもご多分に漏れず、閉園。かわってイギリス風庭園をメインにした新しい都市型ガーデンをオープンさせた。設計はイギリスのガーデンデザイナー、ポール・スミザー氏。シークレット・ローズ・ガーデン、ハーブ・ガーデン、ウッドランド・ガーデンなどに1500種の植物が競う。このときの見ごろは、モッコウ・バラ、睡蓮、ハス、アジサ、夾竹桃など。日本庭園とは違う、どちらかといえば自然に近い形でみせるイギリス式ガーデニングの庭園である。結構広いので手ごろな散策と目の保養、憩いにはもってこいの都市の真ん中のオアシス。

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隣町の猪名川町にある大野山(おおやさん、標高753m)、大野アルプスランドの山頂付近一面が、一万五千株ものあじさい(紫陽花)に覆われる。私の出身地、松本からすると753mでアルプスとは、おこがましいが、梅雨明けを感じさせる暑い日ではあったが、山頂付近はすすしい風が心地よく吹きわたり、久々の空の青さとその下の開放的な山一面の紫陽花のコントラストがうっとうしい梅雨の気分を吹き飛ばしてくれた。
山頂には50cmの反射望遠鏡とプラネタリウムを備えた小さな天文台があり、この日は一般にも公開(なんと200円!)されていたので、床に仰向けに寝転がって、プラネタリウムの映し出すデジタル天の川や星座、望遠鏡で見る太陽のコロナや黒点に、子供の頃の夏休み宿題を思い出していた。
アクセスがやや大変であるが、山、紫陽花、天文台、キャンプ場のほかには何もないが、素晴らしい開放感と低いが幾重にも連なる連山の墨絵のような風景が味わえる絶好のポイント。

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そして最後は、京都の奥座敷といわれる「湯の花温泉」近く、亀岡市宮前町にある桔梗の寺、「谷性寺(こくしょうじ)」。明智光秀は亀岡を丹波平定の拠点として「亀山城」を築き、城下町の整備をはじめ、今日の亀岡の基礎を築いたとされ、毎年5月初旬には、光秀を顕彰する「亀岡光秀まつり」が開催されている。
そして谷性寺は、その明智光秀ゆかりの寺で、光秀の首塚を祀るところから通称「光秀寺」と呼ばれている。また明智の家紋、桔梗にちなんで寺の門前前7000㎡一面に五万株の桔梗が植えられているところから「桔梗寺」とも呼ばれている。一般的な紫の桔梗のほか、「ピンク」、「白」などの色の種類に加えて、八重咲き桔梗・沢桔梗・蔓桔梗などの品種が植栽されており、桔梗の「和」の花の美しさが楽しめる。しかし桔梗の庭というより桔梗の畑と言った風情にはいささか興ざめ。しかし、桔梗は居間に飾ってある、甥が描いて送ってくれた絵の主題。シンプルながら深い色の味わいを持つ桔梗は妻が好きな花の一つでもある。

そしてお供は、沖縄始め南の島の風を運んでくれるリゾート・コンピレーション・アルバムから、RESORT気分一杯の「リゾート・エア~パシフィカ」。デイゴの花に、寄せる思いを託して歌う世界中でヒットした、ブームの日本発コスモポリタンの名曲「島唄」を、松田美緒がポルトガル語で歌うカバーにサウダージを感じる。そして、夏川りみが沖縄方言で歌う「涙そうそう」。標準語のいつも聴く歌とは一味違って、これも一層のサウダージ(郷愁)をさそう。ギター・ウクレレ・アンサンブルが奏でる癒しの「TSUNAMI」。そして人生の哀歓をこめた名曲「花」。「・・・泣きなされ、笑いなされ、いつの日にか、いつの日にか 花を咲かそうよ・・・・・・」。

リゾート・エア~パシフィカ
オムニバス 松田美緒 サンディー 夏川りみ ケアリイ・レイシェル オータサン BEGIN / ビクターエンタテインメント
ISBN : B0009J8IHY
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遠回りの愛のかたち  ~最近観た映画から~

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今年前半に見たすばらしい映画作品の中から、周りの人の事情や、時の政治、情勢などによって、遠回りをしてしまった愛の姿を描いた二編を紹介したい。

最初は邦画、篠原哲雄監督「山桜」。この作品は藤沢周平の同名短編小説を、映画化したものであるが、私はすでにこの作品を小説で読んでいたのと、演劇「さらば我が愛 覇王別姫」で東山紀之のファンに妻が化したため、封切りを待ちわびていた作品でも
ある。
話は、江戸時代後期の小藩を舞台に、不幸な結婚生活を送る女性が、ある運命的な出会いを経て、絶望的だった人生に光明を見いだしていく姿を静かな映像で描いていく。不幸な結婚生活に耐える野江(田中麗奈)はある日、1本の満開の山桜を見つける。枝に手を伸ばすと「手折って進ぜよう」と1人の武士(東山紀之)が現れるが、彼は野江が今の婚家に嫁ぐ前に縁談を申し込んできた相手、手塚弥一郎だった。自分を気遣ってくれる人物の存在に勇気づけられる野江だったが、手塚は悪政をたくらむ藩の重臣を斬ってしまう。「あなたは少し回り道をしただけですよ」という母の言葉にすくわれる、手塚を慕いはじめた野江・・・。
初時代劇という田中麗奈。「夕凪の街、櫻の国」などで急成長著しい彼女が、抑えた芯の強い女性を好演。母役の壇ふみ、弥一郎母役の富司純子が凛とした日本女性の美しさをみせてくれる。彼女を温かく遠くから見守ってきた若侍に「東山紀之」。「武士の一分」の木村拓哉をはるかに凌ぐ素晴らしさ。やっぱり「醤油顔」にはさすがの「キムタク」も負けるか・・・。
多分北信濃か、東北地方でロケしたのであろうか、美しい日本の自然。この物語にふさわしいすくっと経つ一本の山桜。廻りきた明るい春の日差しと櫻で結末を暗示するラストシーン・・・。久し振りに見た「藤沢周平」の原作と同じ静かな感動を味わえた時代劇であった。
全編を通して流れる美しいピアノ・ソロは武部聡、静かな余韻をもたらすエンディング・ロールに流れる歌は、人気歌手「一青窈」による主題歌「栞(しおり)」。

原作本は、最近はすっかり「山本周五郎」の後継者と目されている「藤沢周平」の「山桜」が所収されている「時雨みち」。

時雨みち (新潮文庫)
藤沢 周平 / / 新潮社
ISBN : 4101247099
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主題歌「一青窈」がうたう「栞」は、最新のアルバム「Key」に収録されている。

Key(DVD付)
一青窈 / / Columbia Music Entertainment,inc.( C)(M)
ISBN : B00127ISVS
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もう一つは、第80回アカデミー賞で7部門にノミネートされたジョー・ライト監督「つぐない」。

現代イギリスを代表する作家イアン・マキューアンのベストセラー小説「贖罪」を、ジェーン・オースティンの世界を見事に映画化した『プライドと偏見』のジョー・ライト監督が完全映画化。幼く多感な少女のうそによって引き裂かれた男女が運命の波に翻弄(ほんろう)される姿と、うそをついた罪の重さを背負って生きる少女の姿が描かれる。運命に翻弄(ほんろう)される男女を演じるのは、『プライドと偏見』でも主演した「キーラ・ナイトレイ」と、『ラストキング・オブ・スコットランド』のジェームズ・マカヴォイ。
1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。名門タリス家の長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、大学を卒業して家に戻ってきたが、兄妹のように育てられた使用人の息子、ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と思いを通わせ合うようになる。しかし、愛を確かめ合う場を目撃した、小説家を目指す多感な妹ブライオニー(シーアシャ・ローナン)のついたうそが、ロビーに無実の罪を着せ、刑務所送りにしてしまう。4年後刑期と引き換えに従軍したロビーは独軍との戦闘で傷つき帰還の船を待つ。セシリーアは家を出、看護士となって彼の帰りを待っていた。ブライオニーもまた看護士見習いとなり、姉とロビーの物語を書き始め、あの嘘をわびる決心をする・・・・。
時は経って1997年。77歳、有名作家となったブライオニーは新作「つぐない」について、TV局のインタビューを受け、60年をたどる「つぐない」について語り始める・・・・・。そして、罪は償えたのか・・・。

主演は「これほどにきれいな女性がいるのか」と思わせるほど美しい「キーラ・ナイトレイ」。そしてラストのわずかなシーンに出演する、「バネッサ・レッドグレイブ」。老いてはいるが圧倒的な存在感と演技。そして、美しいイングランドの自然をバックに壮大なスケールと切なさでジョー・ライト監督が描く愛の大河ロマン。
この映画も全編流れる美しいピアノが、雰囲気を一層盛り上げているが、音楽は前作、「プライドと偏見」も担当した「ダリオ・マリアネッリ」。ピアノを演奏するのは「ジャン=イヴ・ティボーデ」。

贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)
イアン・マキューアン / / 新潮社
ISBN : 4102157239
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映画「つぐない」オリジナル・サウンドトラック
サントラ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
ISBN : B0012PYG66
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この二作品、いずれも年末の私家(爵士)版2008年シネマベスト10に残るであろう傑作映画であると思う。
だけど、こんな形の愛の姿はもう時代遅れですか?

マーケッターとしてのシニア考(11)    ~デジタル・デバイド再考~ 

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定年後3ヶ月経った2006年6月からスタートしたこのブログ、早いもので、この6月で丁度2年経ち、駄文の記事は300記事に達した(注;元ブログ)。読者の皆さんに御礼申し上げます。

ところで、総務省情報通信政策研究所の報告書によれば、インターネットで公開されている国内のブログは08年1月末で約1690万あり、国内のネット利用者(約8811万人)の約2割が利用し、記事総数は約13億5000万本と、単行本約2700万冊の情報量に匹敵することが分かった。報告書は米国の会社による世界の情況調査も報告されており、ブログは世界に約7000万あり、使用言語別では日本語が約37%と、2位の英語約36%、3位の中国語約8%を抑えてトップとなり、インターネット人口では、前述と逆の結果であるが、、(今年2月に2億2000万人と米国を超えて世界1位に・・・)あらためて日本人のブログ好きが浮かび上がった格好だ。しかしながら、国内ブログのうち、一ヶ月以内に1回以上記事を更新するブログは全体の2割程度の約300万。開設はしてみたが・・・というような情況も窺える。
年代別に見れば、19歳以下9%、20代28%、30代27%、40代20%、50代11%、60歳以上5%、60歳以上で言えば85万人、と中高年が予想以上に開設していることも分かった。

ここで、シニアを中心である自分の周辺のPCに関するリテラシー(読み書き能力)を情況を観察みた結果をレポートすると、

1)同じ時期に退職したOB仲間たちは業務でパソコンを使っていたため、100%PCメール
  とインターネットが可能である。むしろ携帯でのインターネット利用はキー操作
  がまどろっこしくてダメという声がほとんどである。
2)先輩退職OBについては、年賀状などにPCメールアドレスが書いてあるのが80%、
  HP開設は10%くらいか。ブログどころかホームページを開設している先輩もいる。 
3)高校の同級生。同窓会の例会の案内はPCメールでくるので、このメンバーについては
  100%近くPCメールが可能である。
4)妻とその友達については、友人とは携帯メールで連絡を取り合っているので100%近い
  率で可能。ただし、PCに関してはかなり低くなり、妻の周辺では、ほんの数人。
5)子供世代は言うまでもなく携帯、PCとも100%。ただモバイル性重視のためか、
  すべての機能を携帯に集中させているため、携帯利用の場合が多いようである。
6)私の親世代は、PCは言うに及ばず、携帯その他一切ダメである。

こんな情況で、私の周辺は、会社の仕事の延長上でPCを主体とするネット利用、妻の周辺は、コミュニケーションのツールとしての携帯電話からさらに一歩進んだメール、ネットサービス利用という実態と思われる。あの携帯のいらいらするキー操作も妻は、ほとんど苦にならないようである。ここにもまだ会社の延長で生きている男性諸君、ご同輩たちがいる。

7月11日(金)にアップルから「i-Phone G3」日本版がいよいよ発売される。聴けば買うためにもう徹夜で並んでいるそうだ。液晶大画面のタッチパネル操作方式で、電話、インターネット、音楽端末、映像再生、GPS・・・などもう携帯電話と呼べるのかと思われるような機能が満載の次世代携帯電話。価格からして多分若者中心に人気が集中することは間違いないだろうが、わたしなんぞは生活のすべてをあんな小さなブラックボックス一つに頼りたくないし、左右されたくないが、ソフトバンク以外の携帯電話各社、家電メーカー各社、サービス業界などは戦々恐々としているし、新たな副作用が発生するだろうが、またひとつ世の中を変えていくテクノロジーが世に出されたことは間違いない。しばらく目が離せないことだけは間違いない。

ところで、私が読んでいるメールマガジン「All-in-One INTERNET Magazine」(発行:株式会社インプレスR&D/株式会社インプレスコミュニケーションズ)の発行人井芹昌信氏の「ネットの風を読む」というコラムにこんな記事が載っていた。すばらしいシニアの話なので、少し長いが引用しよう。

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「実録、ハッピー・ケータイライフ! ―パソコンなくてもネット達人」

(略)私は十数年前から武道をたしなんでおり、ありがたいことに今でも尊敬する師匠の教えをいただいている。師匠は、還暦を過ぎて久しいお年だが、いまだに私など足元にも及ばない達人である。
ところでその師匠から、3年ほど前に「ケータイを始めたいので教えてほしい」という依頼を受け、iモードケータイをお勧めした。その際、必要最低限のことをと思い、メールの操作と天気予報や交通情報などを見られるように設定してさしあげた。
以来、師匠はケータイの利便性に気付かれ、自分でマニュアルを読んだり、私に質問したりしながら、いろいろな機能を使いこなされている。師匠のケータイの使い方を脇で見聞きしていると、現在のケータイがいかにすばらしい機能を持っているかを再認識させられる。
たとえば、デジカメ搭載機に機種変更されてからは、季節の便りが山々の写真付きのメールで届くようになったし、車での移動の前にはかならず渋滞情報をチェックされている。また、ウィキペディアをお教えしたら、すぐ「731部隊」のことを調べられ、「これまで辞書に載ってなかったようなことまで載っていて、すごい!」と感激されていた。さらに、グーグル検索を覚えられてからは、電車の乗り継ぎ情報、昔の武道家のこと、ケータイ会社が次にどんな新機種を発売するかなど、様々な情報をケータイから得るというデジタル・ライフスタイルが定着したとのことだ。
一番驚いたのは、ケータイで撮った写真をSDカード経由で、自宅のテレビに写し出して鑑賞していると聞いたときだった。その方が大きく見えるし、色も目にやさしく見やすいそうだ。それに、プリンターの必要性は特に感じないとのことだ。友達に見せる時は、ケータイ画面をそのまま見せるか、メールで送ればいいと。さらにその写真は、家庭用のDVDレコーダーで、静止画として1枚ずつ保存されている。「すでに2000枚以上を保存したが、まだ半分以上は空いている」とのことだが、これはたった1枚のDVD-RAMでの話だ。つい最近、師匠のケータイの待ち受け画面を覗いたら、ダウンロードされたアニメキャラを背景に、時計、カレンダーが配置されており、上段にはグーグル検索窓が開いていた。私は、黎明期からパソコンと付き合ってきたので、これまではデジタルライフをエンジョイするには、どうしてもパソコンが必要だと考えてきた。だが、師匠のケータイライフを拝見していると、そろそろパソコンがなくても大丈夫なほどケータイが進化してきたと実感できる。もちろん、仕事や高度なクリエーティブワークでは今でもパソコンは必需品だが、一般のデジタルライフはケータイだけで十分だと思えるようになってきた。
前回のコラムで書いたように、最近はケータイによる子供への害が問題になっているが、このようにケータイがご高齢の方の楽しみを作り出しているという面も合わせて知っておく必要があると思う。

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携帯を使いこなせるその能力もさることながら、前向きに楽しんでチャレンジし、自分の楽しみを大きく豊かにするために携帯を使っている、こんな人生の達人もいるんだ。そのことに感心、同感。師匠は今度の「i-Phone」はどう思っているのだろうか?チャレンジするのだろうか、聞いてみたい。
よし!!わたしもほったらかしてある二足歩行ロボット作りを頑張って始めよう。

CDでなく、わたしが初めて、アップルの音楽ストアから、配信でダウンロードしたアルバムは上原ひろみのソロが素晴らしい、映画「オリヲン座からの招待状」オリジナル・サウンド・トラック。メインテーマ「PLACE TO BE」であった。彼女の奏でる美しいピアノは、映画のシーンにふさわしく、心のそこからゆっくりとあがってくるような感動を呼び起こす。

映画「オリヲン座からの招待状」オリジナル・サウンド・トラック
サントラ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
ISBN : B000V3PRAO
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男唄に男が惚れて(4)  ~ジョアンとカエターノ ブラジルの大地に生きてきた~

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私がボサノヴァに結構夢中になっていることは、このブログでもずいぶんと取り上げたのでご承知のことと思う。やっぱり惚れた「男唄」のひとりはどうしてもボサノヴァからとなってしまう。

「ジョアン・ジルベルト」。ボサノヴァの創始者A.C.ジョビンと並んで「ボサノバの法王」と称されたアーティスト。ギター一本を伴奏に、ささやくように、語るようにうたう、あのいわゆる「ボサノバ唱法」は彼によって確立されたといっていい。その彼の唱法の完成された形を、「ジョアン 声とギター」に見ることが出来る。全盛期をすぎ、70歳近い、2000年発表の作品であるが、まさにタイトル通り、ジョアンの声とギターのみで奏でている逸品のアルバム。サウダージ(郷愁)とはこのこと、シンプルとはこのこと。このアルバムは「カエターノ・ヴェローゾ」のプロデュースによって発表されたことも特筆に価する。

JOAO VOZ E VIOLAO
Joao Gilberto / / Universal
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1931年ブラジル北東部バイーア州に生まれ、10歳までそこで育つ。彼もまた父にもらったギターに夢中になり、学校をやめ、リオ・デ・ジャネイロに出て、音楽で生きる決心をするが、まったく売れず、マリファナ中毒になり、友人の家を転々とする苦悩の日々が続く。やがて姉の家に居候生活を始め、一日中バスルームに閉じこもりギターを弾きながら歌を歌い続ける。そんな壮絶な生活の中からサンバのリズムをガットギターだけで表現する、「バチーダ」とよばれる独特の奏法を編み出す。その後、ジョアンと出会ったA.C.ジョビンは、その声とギターに惚れこみ、ジョビンとヴィニシウス・ジ・モラレスの手になるボサノヴァの源流とも言われる名曲、「想いあふれて(Chega de Saudade)」の録音に参加する。まさに、ボサノヴァ胎動の年1957年7月のことであった。(「音楽の誕生 ~ボサノバのルーツを知って~」参照)

かの我が最初のミューズ、「アストラッド・ジルベルト」は、かって彼の奥さんであり、1964年アストラッドが英語で歌った「イパネマの娘」が世界中で大ヒットする。これが原因かどうか知らないが、程なく二人は離婚し、これが契機となってアストラッドは歌手としてひとりだちしていくことになる。

ジョアンも今年もう77歳。2003年に72歳での初来日を始めとして、今までに何回かの来日を果たしているが、多分最後の来日であろうといわれたのが、2006年11月である。来日時のコンサートのライブ盤はそのたびに出ているが、初来日2003年9月12日の東京国際フォーラムでのジョアン・ジルベルト初来日の臨場感たっぷりのライヴ盤をここではあげたい。人生のある極みまたは境地に達し、それが凝縮され、完成された「弾き語り芸術」といってもいいライブが展開される。

ジョアン・ジルベルト・イン・トーキョー
ジョアン・ジルベルト / / ユニバーサルミュージック
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そして「カエターノ・ヴェローゾ」。「ジョアン・ジルベルト」の後継者と目され、2000年にはジョアンのアルバム「声とギター」のプロデュースもした「カエターノ・ヴェローゾ」。実は、そのことを聴かされても、私は「カエターノを聴いてみたい」という思いに駆られることはなかった。「ブラジル音楽界のポップアーティスト」、「エレキギター、サイケデリック・サウンドでブラジル音楽界に革命をもたらした男」などという彼を表わすコピーを見るたびに、かえって足が遠のいていってしまった。それがある映画によって、大きな衝撃を受けた。その映画は、昨年は「ボルベール」で大きな感動を与えた、スペインのペドロ・アルモドバル監督の傑作で、2002年公開の「トーク・トゥ・ハー」であった。主人公の一組の恋人たち、フリーライターと女闘牛士の逢瀬が「カエターノ・ヴェローゾ」のライブであり、画面に流れる悲恋の果ての死の嘆きを、鳩の鳴き声に託す「ククルクク・パロマ」の唄に鳥肌がたつのを覚えたほどである。これが最初の「カエターノ」との出会いであった。

トーク・トゥ・ハー リミテッド・エディション
レオノール・ワトリング / / 日活
ISBN : B00008WJ2F
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「カエターノ・ヴェローゾ」は、1942年8月生まれ、65歳でほぼ私と同世代。彼もまた、ジョアンと同じブラジル・バイーア州に生まれ、ボサノヴァ歌手として音楽キャリアをスタートさせた彼は、やがてビートルズなどの影響を大きく受け、ブラジルのポピュラー音楽と欧米のロックンロール、さらに前衛音楽の要素も取り込んだサイケデリックで前衛的、左翼的メッセージに満ちた音楽スタイルを確立し、推し進めていった。ブラジルの反軍事政権への強烈な敵意を根源とするような音楽は社会主義者からも距離をおかれ、反政府主義活動のかどで投獄され、ロンドンへの国外追放にもあう。1972年ブラジルに帰国してからは、ブラジルの伝統的なスタイルへの回帰、とりわけアフリカにルーツを持つバイーヤ地方の文化に深く傾倒していったという。1980年代人気はヨーロッパ、アフリカ、アメリカなどへ飛び火し、国際的なポップスターとしての賞賛も集め、先述の「トーク・トゥ・ハー」などの映画でも用いられる様になる。
彼の声をなんて表現していいか分からないが、男性的であったり、中性的であったり、時には女性的に聴こえることがあったりする。言葉(この部分はポルトガル語が分からないのでハンデがあるが)、発音、声質、抑揚など「歌う」という行為の要素すべてを動員して歌っているのだ。だから彼の歌は「歌う、唄う、詠う、謡う、謳う・・・」いずれの漢字もあてはまるように聴こえるのかもしれない。

私も実はまだ「カエターノ初心者」。その初心者がおすすめするのが、カエターノの後期~最近の全貌を知ることができる、ベストアルバムといっていい、「CAETANO SINGS」。「トーク・トゥ・ハー」のサントラではないが、ウォン・カーヴァイ監督「ブエノスアイレス」で使われた「ククルクク・パロマ」は勿論収録、影響を受けたビートルズの「レディ・マドンナ」、「ヘルプ」も収録されている。
ほとんどが、ギターの弾き語りで、ジルベルトを継ぐものと称されるゆえんが理解できる。

CAETANO SINGS
カエターノ・ヴェローゾ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
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そしてJAZZファンにもきっと気に入るアルバムは、カエターノが初めて全曲英語で吹き込んだ「異国の香り~アメリカン・ソングス」。「ソー・イン・ラヴ」、「煙が目にしみる」、「ボディ・アンド・ソウル」など、JAZZのスタンダードから「ダイアナ」、「ラヴ・ミー・テンダー」まで、アメリカン・ソングがぎっしり詰まっている。かれは、ライナーノートで、このCDに収録されているアメリカのミュージシャン、「シナトラ」、「マイルス・デイヴィス」、「プレスリー」、「ニルバーナ」などについてコメントをし、「ブラジル音楽の発展に影響を与えたのはアメリカの音楽なんだ。・・・・・音楽をより楽しく、豊かにしてくれたアメリカのポピュラー音楽への感謝の方法を見つけたいと思っている。」と述べている。その一つの答えが、まさにこのアルバムである。ブラジル色、カエターノ色に染め上げられたアメリカン・ソング集。

異国の香り~アメリカン・ソングス
カエターノ・ヴェローゾ / / ユニバーサル ミュージック クラシック
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ブラジルの大地で独自の音楽を育んできたジョアンとカエターノ。彼らの唄が、まだ一度も訪れたことのない南米の地に私を誘う・・・。

男唄に男が惚れて(3) ~ジョニー・ハートマン ビロードの声に包まれて~

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「ジョニー・ハートマン」。1923年7月生まれ、1983年9月没、享年60歳。
ビロードのような独特の甘い声の持ち主。初めて知ったのは、学生時代のよく行ったグリルB軒のマスターMさんのすすめであった。今では私が癒される数少ない男性ボーカルである。しかし、シナトラやP.コモ、A.ウイリアムス.B.クロスビー、N.キング・コールなどのように世界的に超有名になることは決してなかった。JAZZ本で彼をとりあげられてすらいない場合もあるくらいである。映画「マディソン郡の橋」では、バックにこの人の歌がいくつか流れていましたね。監督「クリント・イーストウッド」はその理由を聞かれて、「私が彼を選んだのは、彼がメインストリームに受け入れられたことはなかったが、とても優れた歌手だったからだ」と、主人公の孤独なカメラマン、キンケイドとイタリアからアメリカにやってきたいわゆる戦争花嫁のフランチェスカ、許されぬ恋に落ちる二人のもつ「人生のアウトサイダー的背景にふさわしい歌手だ」と語る。

最初に「ジョニー・ハートマン」を知ったアルバムは、「ザ・ヴォイス・ザット・イズ」。先日、「60歳・・・聴きたい歌」で紹介したばかりのミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の中で歌われる美しい唄「サンライズ・サンセット」が収録されているアルバムである。。(「60歳過ぎたら聴きたい歌(18) ~Sunrise、Sunset~」参照) このアルバムを除いてハートマンがハートマンたるゆえんが分かるのは次の三枚であろうと思う。

「なに、近くまで来たんでちょっと寄ってみただけさ」と、別れた女性に強がりを言ったりする洒落っ気たっぷりの男心を歌ったタイトル曲「アイ・ジャスト・ドロップト・バイ・トゥ・セイ・ハロー」。収録曲には、おなじみ「シャレード」など実に雰囲気があって、まさに大人の男を感じさせるバラード集。イリノイ・ジャケーのサックスにも泣けるし、前掲「ザ・ヴォイス・ザット・イズ」と並ぶハートマンのベスト・アルバム。男の「渋さ」、「粋」、「洒落」を感じたいと思うなら、ぴったりのもっともハートマンらしさが出ているアルバムだ。イリノイジャケー、ケニーバレル、ハンクジョーンズなんて、プロデューサに喝采を送りたくなる玄人好みの最高のバックだ。

アイ・ジャスト・ドロップト・バイ・トゥ・セイ・ハロー
イリノイ・ジャケー ハンク・ジョーンズ ミルト・ヒントン ケニー・バレル ジム・ホール エルヴィン・ジョーンズ ジョニー・ハートマン / ユニバーサルクラシック
ISBN : B000793B9G
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そして、彼のハートウォームな人柄を味わいたければ、これ、1977年に来日した時のライブ盤。クラブ「サムタイム」でのくつろいだ雰囲気の中で、かれのMCの語り口、小粋にスイングするリズム、そしてあの「ビロードのような」といわれた低音の渋いヴォーカルの響き。これらすべてにかれの誠実で暖かな人間性が滲み出ている。この来日時、54歳でもう全盛期の声の輝きはやや薄れてきてはいるが、その枯れかたは見事で、「人生かく枯れたし」と思わせる名唱アルバム。

ライブ・アット・サムタイム
ジョニー・ハートマン / / アブソードミュージックジャパン
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そして最後は、「歴史的名盤」、「これぞ究極のジャズバラード集」とJAZZ本などで必ず称される、コルトレーンのサックスと、ハートマンのヴォーカルが美しく絡み合う、ジャズ・ヴォーカル・アルバムの傑作「ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン」。

激しく吹きまくるコルトレーンのイメージを一新したとも思えるが、成熟した雰囲気はハートマンのボーカルをよく引き立てて、まさにジャズの真骨頂の名盤。私はコルトレーンは「Ballads」など歌モノが好きですが、このアルバムでもハートマンと同じくらいよく歌うサックスで、何回聞いても飽きがこず、良さが深まっていきます。マッコイ・タイナーの控えめなピアノもいい。そしてハートマン、相変わらずのよく響く低音。艶といい、こもる情感といい、程よく震えるビブラートといい、最高のボーカルを披露してくれる。今聴いても一向に色褪せない名盤である。

ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン
ジョン・コルトレーン ジョニー・ハートマン マッコイ・タイナー ジミー・ギャリソン エルヴィン・ジョーンズ / ユニバーサルクラシック
ISBN : B00008KKTR
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ほら、男のJAZZボーカルも捨てたものではないでしょう。



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