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もしもピアノが弾けたなら(11) ~アムステルダムの陽だまり~

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写真;アムステルダム近郊のチューリップで有名なキューケンホフ公園

「アムステルダム」とくれば、「ヨーロピアン・ジャズ・トリオ(以下EJT)」をあげないわけには行かないだろう。「ジャック・ルーシェ」など60年代に一世を風靡したバロック・ジャズを別にすれば、私がヨーロッパ・ジャズに、特にジャズ・ピアノ・トリオに目を向けるようになったのは、まさにEJTからである。元は1984年にカレル・ボエリー(p)を中心としたメンバーで結成されたらしいが、1988年にカレル・ボエリー(p)、フランス・ホーヴァン(b)、ロイ・ダッカス(ds)というメンバーで再スタートし、1989年にアルバム「ノルウェーの森」でデビューして、日本で大評判になった。以後20年間にわたって、素晴らしい作品をリリースし、その人気は衰えることなく、定着している。
1995年には、ピアノの「カレル・ボエリー」が脱退し、「マーク・ヴァン・ローン」が加入し、その後現在に至るまでメンバーは変わっていない。カレルからマークに変わった微妙な違いはあるにせよ、わたしには、トリオの音楽性に大きな違いや違和感があるとはまったく感じられない。それというのも、各メンバーの技量、音楽性よりも、ユニットとしての「EJT」が目指す音楽スタイル、コンセプトというものが明確かつ重要になっており、プロデューサ(1988年からは木全信氏が一貫してプロデュース)、レコード会社もそれを要求し、リードし、彼らも才能を持って、十分に応えているからであろう。

EJTの音楽スタイルとは何か? それは至極シンプルである。JAZZのスタンダードを始め、例えばビートルズなどのPOPS、ラテンのヒットナンバー、映画音楽、おなじみのクラシックの名曲など、JAZZにこだわらない幅広い曲をレパートリーとし、EJT風の哀愁とロマンティズム、リリシズムで聴かせる、このことに尽きる。このことが特に日本の幅広いJAZZだけでないファンに受け入れられ、長く人気を維持してきた理由であろう。さらに付け加えるなら、このEJTスタイルの幅をさらに広げるために哀愁極まりない曲を奏でるゲストを迎えてのコラボである。フリューゲルホーンの「アート・ファーマー」、ギターの「ジェシ・ヴァン・ルーラー」などとのアルバムがそれである。日曜日の朝、ドライブ、海辺、酒場、深夜の独り酒・・・・・など場所、季節、時間などのシチュエーションを問わず楽しめ、いつ聴いてもスッとかれらの音世界に入っていけ、安らかな満足感を得ることができる。その選曲の絶妙さと、その曲にふさわしい叙情性、ロマン性を失わない限り、いつまでもファンから支持されつづけるに違いない。

さて、おすすめであるが、30枚近いアルバムが出ているので選ぶのに本当に困ってしまうのだが、スタンダード、POPS、クラシックなどが絶妙にちりばめられているEJTスタイルが最もよく分かるアルバムから選んでみよう。

まずは、初代カレルがピアノのデビューアルバム「ノルウェーの森」。マッカートニーの「ノルウェーの森」、「マイ・ロマンス」、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」、「サマータイム」、「いそしぎ」、「枯葉」などのスタンダードがちりばめられ、爽やかでクール。EJTが目指そうとしたスタイルの原点がよく分かるアルバム。

ノルウェーの森
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ / / エム アンド アイ カンパニー
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つづいて、「悲しみのアンジー」。オランダの若手ギタリスト、ジェシー・ヴァン・ルーラーを再び迎えて、3曲フィーチャーしている。「ジャンゴ」、「ゴールデン・イアリング」、「スカボロウ・フェア」などのポピュラーな曲ばかりでJAZZになじみがなくともきっと聴きやすいだろう。

悲しみのアンジー
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ / / エム アンド アイ カンパニー
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ストリングス・セクションとの共演盤からは、「モナリザの微笑」。このアルバムを聴くたびに、こういうJAZZを産み出すヨーロッパ社会、文化はなんて豊かなんだろうと思ってしまう。クラシックのロマンティシズムとJAZZのリリシズムが見事に融合したまさにEJTスタイル。「慕情」、「モナリザ」、「サマータイム」などスタンダードとビリー・ジョエルの「オネスティ」などが取り上げられている。

モナリザの微笑み
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ / エムアンドアイカンパニー
ISBN : B000657Q1A
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3曲のコンチネンタル・タンゴ(この言葉が分かる人は相当のお年か?)、「夜のタンゴ」、「真珠採り」、「ジェラシー」を、特に取り上げたアルバム「夜のタンゴ」。勿論タンゴだけでなく、ボサノヴァやビートルズ・ナンバー、ノラ・ジョーンズまで取り上げた、最高傑作とも言われるEJTスタイル・アルバム。

夜のタンゴ
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ / / エム アンド アイ カンパニー
ISBN : B000BKJE4M
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つぎはお得意のクラシックのジャンルから。これもたくさんアルバムが出ているが、「クラシックベスト盤Ⅰ、Ⅱ」がすべてが網羅されている点でおすすめであるが、単品アルバムをあげるとしたら、「幻想のアダージョ」。特に「アルビーノのアダージョ」「G線上のアリア」は、もともとが美しいクラシック曲であるため、JAZZにアレンジしてもこの上なく美しい。そのほかアルバム「天空のソナタ」、「マドンナの宝石」も。休日の朝にでもゆっくりと聴いてみて下さい。ゆったりとした暖かい気分になれますよ。

幻想のアダージョ
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ マーク・バン・ローン フランス・ホーバン ロイ・ダッカス / エムアンドアイカンパニー
ISBN : B00005FPG2
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そして、ゲストとの哀切極まりないコラボ・アルバムから「風のささやき」。もう一つのファーマーとのコラボ・アルバム「哀しみのバラード」もいいが、私はこちらが好き。持病の特定曲症候群のひとつである「風のささやき」が流れ出すともうそれだけで・・・・・・。

風のささやき
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ・フィーチャリング・アート・ファーマー / / エム アンド アイ カンパニー
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オランダのジャズ・ギターの貴公子、「ジェシ・ヴァン・ルーラー」を迎えてのアルバム。「エリック・クラプトン」の「Tears In Heaven」や「アランフェス」など4曲をコラボしているが、やはり「サンタナ」の「哀愁のヨーロッパ」が極めつけの聴きものである。

哀愁のヨーロッパ
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ ジェシ・ヴァン・ルーラー / エムアンドアイカンパニー
ISBN : B0000549K0
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最後に「カレル・ボエリー・トリオ」もあげておきましょう。初代ヨーロピアン・ジャズ・トリオのピアニスト。新しい境地を開拓したというライナーノーツとみたのと、思わずのジャケ買いに走った「ブルー・プレリュード」。バーグマンの「追想」のテーマ曲「アナスタシア」なども美しい。

ブルー・プレリュード
カレル・ボエリー・トリオ / エムアンドアイカンパニー
ISBN : B000BU6PYO
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EJTの音楽を聴くたびに、フェルメールが描いたあの柔らかな光に包まれたアムステルダムの街角や、チューリップで一杯のキューケンホフ公園の陽だまりが眼に浮かぶ。
やはり「EJT」、私にとってのヨーロッパJAZZ、JAZZピアノ・トリオの原点である・・・・。

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