
北欧の短い夏。ストックホルム。太古に氷河が大地を削り取って出来た複雑な地形のフィヨルド。そのフィヨルドが、ストックホルムの街まで複雑に深く入り込んでいる。ストックホルム市の発生の原点でもあり、いまなお市の中心でもあり、中世がいまも息づく街、「ガムラスタン」。車はまったく通れないほどの狭い石畳の路地を抜けると、日の光の差しにくい路地とは対称的に、真夏の光にきらめくストックホルムの港が目の前に開ける。そこには、オスロ(ノルウェイ)、ヘルシンキ(フィンランド)、タリン(エストニア)などへの客船や大型クルーザーが、真っ白に輝く優美な船体を横たえて停泊している。それらの船を見ると、日本から、はるかかなたのストックホルムの埠頭にたたずみながらもなお、まだ訪れたことの無い他の北欧やバルト海沿岸の街への憧れを掻き立てられていることに驚きもした。
「北欧のヴェネチア」と呼ばれ、フィヨルドの特徴である複雑な地形を見せる入り江や湾と島々から成るストックホルム市街は、島が連なった優美な街で、「ヨーロッパで最も美しい首都」の一つに挙げられている。
13世紀、この「古い町・旧市街」を意味するガムラスタン地区にストックホルムの基礎となる初めての居住が行われたという。この東西700m南北800mほどの島である旧市街、「ガムラスタン」には、ストックホルムは勿論、スウェーデンの重要な建造物の多くが集まっているのだ。
王家の居城はストックホル郊外のドロットニングホルム宮殿であるが、国王の執務などが行われる王宮、国会議事堂、大聖堂など・・・。

そして、ガムラスタンには中世の古い通りがそのまま残されていて、無数の石畳の通り路地が交差し、建物と建物の間隔が1m前後の狭い路地、あるいは階段や曲線状の通路などが、街の景観と風情を創りだし、旅人達の心に旅情を醸し出している。これらの通りや路地には、お土産ショップ、アートやアンティークショップ、ファッションショップ、あるいはカフェやレストランなどが軒を連ね、ツーリスト達を迎えている。勿論、JAZZクラブもいくつかあり、ストックホルムの夜を楽しんだことが思い出としていまも残っています。あ、そうそうノーベル賞の受賞晩餐会はガムラスタン近くの美しい赤レンガ造りの市庁舎で行われるのです。今年は4人の日本人が受賞という快挙でしたね。
そんなストックホルムの埠頭から、私がなお遠く思いを馳せたフィンランドやエストニアからも素晴らしいJAZZアーティストが生まれているのだ。
ウラジミール・シャフラノフ(Vladimir Shafranov)。現在フィンランドに住まいを持っての悠々の活動を展開しているが、かの澤野工房が発掘し、紹介してから日本でも急速に人気が高まったアーティスト。その幻の名盤といわれたアルバムを復刻したのが「White Nights」。全体的には、落ち着いたやや地味な印象ではあるが、タイトル曲の「White Nights」はその透明感といい、哀愁といい、際立っている。「名盤」と呼ぶにふさわしい一枚。
White Nights/Vladimir Shafranov
そして、歌物スタンダードにボッサ、クラシックなどの趣味の良い選曲を加え、いつもながらのスウィング感溢れる演奏で聴かせてくれる。その抒情性とその手際やタッチの鮮やかさにいつもながら感心してしまう一枚。
Kids Are Pretty People/Vladimir Shafranov
最新作は、「Easy To Love」。コール・ポーター、トミー・フラナガン、A.C.ジョビンなどのスタンダードに、ショパンのノクターン「別れの曲」を加えて聴かせる。どんなとき、どんな場所で聴いても決してその場の雰囲気を裏切らないBGMの極みと言っていい上質のアルバム。ふっと肩の力が抜け、体がリズムを刻み出しますよ。
Easy To Love/Vladimir Shafranov
「ついに澤野もエストニアのアーティストまで・・・・」と話題にもなった「トヌー・ナイソー・トリオ/Tonu Naissoo Trio」。エストニアは、旧ソ連崩壊後独立を果たしたバルト三国の一つである。思いを馳せただけで訪れたことの無いエストニアの地同様、いまだ聴いていませんので、キャッチコピーを引用しておきましょう。いつか願いがかなうように・・・。
いつもはるか遠くエストニアの国から、驚くほど素敵なジャズを届けてくれるトヌー・ナイソー・トリオの新録です。スピーディにリズムを刻む快活なドラムと、まろやかな音色で穏やかに包み込むベース。そして何よりも、軽々と鍵盤の上を踊るトヌーのタッチが目に浮かぶような、クリアなピアノ。バラードでは子守唄のように滑らかに耳に馴染み、聴く者の心を静めてくれます。
トヌー・ナイソー・トリオ/FOR NOW AND FOREVER
