JAZZYな生活

プレミアムエイジ ジョインブログ

奇跡のシンガー・ソングライター

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(写真はMelody Gardot HPより)

何ヶ月か前のことであるが、CDショップでたまたま目についた「静寂に情熱を奏でる、奇跡のシンガー・ソングライター」というコピーに惹かれてCDを試聴してみて驚いた。JAZZYでブルージー、アコースティックでノスタルジック。あの「ノラ・ジョーンズ」や「マデリン・ペルー」を初めて聞いたときの印象に極めて近いものを感じたのだ。新人歌手の名は「Melody Gardot/メロディ・ガルドー」。アルバムは「Worrisome Heart/夜と朝の間で」。

フィラデルフィア出身、現在23歳のシンガー・ソングライター。16歳の頃、ピアノ・バーでアルバイトとして歌い始める。19歳の時、自転車で帰宅途中ジープに跳ねられ、背骨を含む数箇所の複雑骨折、神経、頭も怪我をするなどの瀕死の重傷を負い、一年間寝たきりの生活を余儀なくされる。リハビリとして医者に音楽セラピーを勧められ、曲を書き始める。病室でみずから録音した6曲入りのEP『SOME LESSONS:The Bedroom Sessions』を2005年に発表。これが話題を呼び、2006年にアルバムをインディーズからリリースしたが、その後ユニバーサルと契約し、「Worrisome Heart」が世界デビュー・アルバムとして2008年8月にリリースされた。

「Worrisome Heart(くよくよする心)/(邦題)夜と朝の間で」。スタンダート・ナンバーのカバーではなく、全編彼女のオリジナル曲で、全10曲、35分程度でちょっと短めだけど、 輸入盤¥1,140 は安い!歌詞を楽しみたい方は国内盤(1600円)がお薦め。
冒頭のブルース、タイトル曲「Worrisome Heart」から惹き込まれてしまう。ゆったりとした、ややけだるい空気の中に感じられる熱いハートと説得力。ハスキーだけどしっとりしたセクシーな歌声。20代の前半の若さながら、欝っぽい暗さだけど色っぽい成熟した女を感じる。「Quiet Fire」。このアルバム全編の印象を表すようなタイトルの曲。そして「Love Me Like A River Does」の切ない歌唱に聴き入ってしまった。

ビジネス・ウィーク誌は評していわく、
「トム・ウェイツの詩に出会ったビリー・ホリディ・・・、或いはニーナ・シモン、初期のリッキー・リー・ジョーンズ、コール・ポーターの洗練さすら思い起こさせる・・・。」

Worrisome Heart

Melody Gardot / Verve


第2作目アルバムの「My One and Only Thrill」(輸入盤)は、すでに発売されているが、『マイ・オンリー・スリル』(国内盤)は4月8日にリリースされる予定。その最新作では,ストリングス・オーケストラをバックにガルドーのソングライターとしての音楽性が浮き彫りになっている。プロデューサーにラリー・クライン,アレンジャーにビンス・メンドーサを迎え,一作目と相通ずる繊細さと深みを持つガルドーの音楽の魅力が、ここでも一層鮮やかな輝きを放つ。デビュー作よりやや明るくリズミカルなアルバムとなっているが、ここでも全編オリジナルの中にあって、ただ一曲ラストのスタンダード「虹の彼方へ」は、明るい希望を感じさせる佳唱。

My One and Only Thrill

Melody Gardot / UCJ


交通事故の後遺症として残った視覚過敏症により、生涯サングラスを手放せなくなったという。アルバム・ジャケットの写真からも、サングラスの奥に、23才の若さながら、背負ってしまったもの重さや人生や人間に対する優しい視線を感じる。
ハスキーで独特のビブラートで優しく包み込むような歌声が魅力で、聴く人の心に深く迫ってくる奇跡のシンガー・ソングライター「メロディ・ガルドー」は、今年最初の収穫・・・。

選択の自由、不自由 ~マーケッターとしてのシニア考(17)~

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海外のレコード店を覗いてみると、「日本ではCDが高い」と感ずることがよくある。特に中国などでは、正規盤の日本や欧米のアーティストのCDでも20~30元(約300円~450円)程度であるのにびっくりしてしまう。何故だろうか?中国の場合などははっきりしている。製造コストが先進国に比べかなり安いうえに、発展途上国に対しては、著作権料も特別措置として安く設定しているため、前述のような価格が実現できているのだ。これに目をつけた業者が発展途上国から日本のアーティストのCDを逆輸入し、かなりやすく販売をしたことがあるが、レコード会社の猛反発によって、逆輸入が禁止された。

このような中国の場合はよく分かるのだが、同じ先進国のアメリカと日本の場合を見てみよう。
この3月25日に日本盤が発売された、我がミューズでもある人気JAZZシンガー「ダイアナ・クラール」の「クワイエット・ナイツ」と言うアルバムがある。以下に輸入盤と国内盤を比較してみた。この結果どう思いますか?

アメリカ輸入盤 ;Amazon予約価格 1,485円  発売日3月31日
             一般CD仕様、全12曲
日本盤(通常盤);CDショップ 2,500円  発売日3月25日
             一般CD仕様、ボーナストラック1曲日本語の解説、歌詞カード
日本盤(初回限定盤);CDショップ 3,000円 発売日3月25日
              高音質CD(SHM-CD)仕様、DVD添付(インタビュー等約8分)、
               ボーナストラック1曲、日本語の解説、歌詞カード

クワイエット・ナイツ(初回限定盤)(DVD付)

ダイアナ・クラール / UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)


輸入盤と初回限定国内盤とは倍の価格差があるのである。従来からも海外アーティストの場合は、日本盤にはボーナストラックをよくつけているが、そうでもしないと歌詞カードだけでは、その価格差を説明できないのである。かって海外のオリジナルには付いていないのに日本盤のみコピー禁止機能をつけ、しかもそのコストを価格にのせて、ユーザーの大反対にもかかわらず、CCCD(コピーコントロールCD)を発売したことがある。さすがにi-Podのような携帯音楽端末が普及するようになり、最近では眼にしなくなったが。
そして、本来は最高の音質でリスナーに提供しなければならないはずであるが、ダイアナ・クラールの新譜の事例の様に、高音質CDが価格アップの理由付けにされているようである。前回のブログで述べた様に「高音質化」などコストには殆ど反映しないと思われるのに・・・。

また、アルバム「ダイアナ・クラール/クワイエット・ナイツ」を音楽配信によってダウンロード(購入)する場合はどうであろうか?

i-tune shop;1曲150円、アルバム全体では1,500円 国内盤よりさらに1曲プラスされて全14曲

ダウンロードしたアルバム情報は「i-Pod」に入れることは勿論可能だし、CD-Rに焼き付ければ、国内盤と遜色のないCDが出来上がるのだ。

私が観るところ、日本のCDが高い理由は二つ。一つ目は著作権料、二つ目は流通の問題であると思われる。著作権(アーティストの側からいうと印税)というもの、小室某の事件でも報道されたようにかなり不透明なものらしく、それがどう配分され、コストにのっているのかよくわからないこと。そしてもう一つは業界の流通コスト、再販価格制度の問題。このご時世に、自由な価格で売れないのである。そして業界の最大のライバルは「インターネット」と情報技術の「技術革新」である。この情報技術の進歩にレコード業界の古い体質では追いついていけず、ますます苦境に追い込まれて行くのではないだろうか。

私はどうしたかって?我がミューズ「ダイアナ・クラール」をはずすわけにはいきませんし、「モノ」を所有することから抜け出せない旧世代ですので、輸入盤を予約しましたが・・・。

60歳過ぎたら聴きたい歌(34) ~手紙 親愛なる子供たちへ~

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前回の「聴きたい歌」で、「泣ける歌」ブームについて触れた。そして、「泣ける歌」とやらをいくつか聴いてみた。いい曲もつまらない曲もあるが、どちらかというと愛、家族などがテーマであり、我々より下の世代か、若い人達が対象になっている歌のように感じた。ここでもまた、シニア世代のための歌の欠落を感じてしまった。確かにいくつかの歌はいい歌にはちがいないのだが、泣けるほどかといわれると、「う~~ん」と首をひねってしまうのだ。そして、CDショップの「泣ける歌」コーナーに、ある曲を見つけて試聴してみた。パンフレットがそばにおいてあり、キャッチ・コピーと歌詞全文がのっていた。「こころのポストに届く手紙(うた) 樋口了一/手紙 ~親愛なる子供たちへ~」。心に沁みた。

昨年の10月上旬、早朝のラジオ番組で「聞きたくない人はボリュームを下げて」と呼びかけ流された樋口了一氏(44)の「手紙~親愛なる子供たちへ~」が「泣ける歌」と話題を集めている。年老いていく親から子へ「死は悲しいことじゃない。年老いた自分を見て、自分が無力と思わないで欲しい」と歌うこの曲は、親を介護中のリスナー、親の死をみとった人など色々な人から、共感、拒否を含め大きな反響があったという。

2年ほど前、一通のメールが、「樋口了一」の友人である「角智織(すみ ともお)」の元に届いた。それは、ポルトガル語で書かれた散文のような詩であった。角はその詠み人知らずの詩に感銘を受け、訳し、樋口に見せた。樋口は故郷に両親を、そして子を持つ父親として、その詩に圧倒的なリアリティを感じた。数日後、樋口は「あの詩を歌にしたい」という思いを角に伝え、言葉に導かれるままに曲をつけ歌にした。「この歌は、この言葉を必要としている人に、自ら歩いていくような曲」と樋口は言う。一昨年、こころのポストに届く手紙(うた)と信じて、ライブで歌い始めたという。
「手紙 ~親愛なる子供たちへ~」のメッセージは、樋口同様、故郷に親を残している私の心にも届き、そして響き、沁みた。CDショップの試聴機の前でヘッドホンから流れるこの歌にたちすくむ私がいた。

「手紙 ~親愛なる子供たちへ~」
           原作詞:不詳 訳詞:角 智織 補足詞:樋口了一 作曲:樋口了一

「♪ 年老いた私が ある日 今までの私と違っていたとしても
   どうかそのままの私を理解して欲しい
   私が服の上に食べ物をこぼしても 靴ひもを結び忘れても
   あなたに色んなことを教えたように見守って欲しい
   あなたと話す時 同じ話を何度も何度も繰り返しても
   その結末をどうかさえぎらずにうなずいて欲しい
   あなたにせがまれて繰り返し読んだ絵本のあたたかな結末は
   いつも同じでも私の心を平和にしてくれた
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   私の姿を見て悲しんだり 自分が無力だと思わないで欲しい
   あなたを抱きしめる力がないのを知ることはつらい事だけど
   私を理解して支えてくれる心だけを持っていて欲しい
   きっとそれだけでそれだけで 私には勇気がわいてくるのです
   あなたの人生の始まりに私がしっかりと付き添ったように
   私の人生の終わりに少しだけ付き添って欲しい
   あなたが生まれてくれたことで私が受けた多くの喜びと
   あなたに対する変わらぬ愛をもって笑顔で答えたい
   私の子供達へ
   愛する子供達へ                     ♪」   

   クリック ⇒ 歌詞全文を見られます

手紙~親愛なる子供たちへ~

樋口了一 / タクミノート


この「手紙」の前半部の歌唱は「YOU TUBE」(⇒クリック)で見る事が出来ます。

最近、「誰も知らない泣ける歌」でもこの歌を取り上げたらしい。

60歳過ぎたら聴きたい歌(33) ~When The World Turns Blue~  

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「泣ける歌」ブームであるという。確かにCDショップへ行ってもTSUTAYAへ行っても専用のコーナーが設けてあり、いくつもCDが並んでいて結構売れているようである。どうも、日本テレビ「誰も知らない泣ける歌」から火がついたようであるが、この手の演出過剰の番組が、実は私は大嫌いである。

私は番組を見たことがないので勝手な想像にしか過ぎないのであるが、ゲストのタレントが、本当に泣いたかどうかわからかないような曲を、「泣けた曲」と紹介し、あらかじめ用意されている演出過剰のVTRの感動ストーリを見せられ、TVカメラの前の他のゲストたちも、泣かなければ「KY」みたいな雰囲気で、すべて台本にしたがって番組が進行する。多分タレントの好感度を上げたい芸能プロダクションと、誰も知らない歌の売り上げを上げたいレコード会社と試聴率をアップしたいTV局組んだ演出番組ではないだろうか。それはそれで視聴率至上主義のTV番組だから、私がけちをつける筋合いのものではないのだが、私は見ないだけである。人それぞれの人生の中で出会った歌、勇気をもらったり、胸を熱くしたり、じんとくる歌がそれぞれの心の中に秘められていれば、それでいいのである。そのことを、誰かが知っていようと、知らなかろうとも、そんなことは関係ないのである。その歌は、その人の中で生きつづけるのだから・・・。
このような番組は、一般の市民であるリスナーとパーソナリティの距離感が近く、コミュニケーションが濃密であるラジオこそが、むしろふさわしいと思うのだ。だから「ラジオ深夜便」が好きで時々聞く・・・。

それはさておき、この「泣ける歌」ブーム、いまどきのご時勢や世相を映しているのであろう。この殺伐とした時代に「泣けるような感動を与えてくれる、忘れていたかっての暖かい感動を思い出させてくれる音楽がほしい」ということなのかもしれない。その意味では、「音楽のチカラ」もちょっとばかり効果があるのかな。そしてそれぞれの人の心の中で生きつづけるその歌の「チカラ」・・・。

前置きが長くなってしまったが、今回の「60歳過ぎたら聴きたい歌」は、「When The World Turns Blue」(世界がブルーに染まるとき)。
この曲は、フュージョン全盛期の人気グループ「クルセーダーズ」のリーダー、「Joe Sample」の曲です。もともと「ジョー・サンプル」が作曲したピアノ曲「Melodies of Love」に、映画「タイタニック」のテーマソングも手掛けた作詞家、「ウィル・ジェニングス」が歌詞を付け、その歌詞の初めの部分をタイトルにして「When the World Turns Blue」ができたという。
この「When the world turns blue(Melodies Of Love)」は、「Merry Clayton」という歌手が、1979年に「Emotion」というアルバムの中で発表したのが初めらしい。その歌詞とメロディのよさから、現在でも、多くのシンガーにカバーされようになっている。人の心の中で、永遠に生きつづけていく「歌のチカラ」を歌った歌。

「When The World Turns Blue」
                作詞;Will Jennings 作曲;Joe Sample

「♪ When the world turns blue
   Somewhere after you
   I’ll just have to handle it
   with all I know how to do
   I’ll write a song about you
   How love can’t live without you
   How every place you touched me
   made me feel new

   And when we are gone
   The song will live on
   Some stranger will hear and he’ll say
   ”This is just how I feel
    Every line,every moment is true”
   When the world turns blue
   When the world turns blue
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ♪」

「世界がブルーに染まるとき」
「♪ 世界がブルーに染まるときに
   あなたのいなくなったどこかの場所で
   わたしが力の限りすべてを注いでしなくてはならないことは
   あなたについての歌を書くことです
   あなたなしでは愛は続いていかないということを
   そしてあなたが触れてくれるたびに
   新鮮な思いを私は感じることができたということを
   
   わたしたちが死んでしまっても、
   この歌は生き続けるでしょう
   見知らぬ人が、この歌を聴いてきっと言うでしょう
   「この歌は僕の気持ちをぴったりとあらわしている
   どの言葉、どの部分をとってみても真実を歌っている」と
   世界がブルーに染まるときに   
   世界がブルーに染まるときに   
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・          ♪」

「伊藤君子/KIMIKO」から。ただ一人の日本人枠に入っている我がいとしのJAZZミューズ、「伊藤君子」のスタンダード曲集から。JAZZピアニスト「小曽根真」がアルバムのプロデュースはもちろん、アレンジおよび演奏面でも全面的に協力した作品である。ピアニストとして参加することはあっても、他人のリーダー作に小曽根がここまで深く、本格的に係わるのは、多分これが初めてのアルバムといわれている。 ゆるぎない力強さを感じさせる、スケールの大きな堂々たる熱唱が好きである。

KIMIKO

伊藤君子 / ビデオアーツ・ミュージック


「ジョーサンプル」自身のものでは、「ダニー・ハザウェイ」の娘「レイラ・ハザウェイ」とのコラボによる極上のジャズサウンドが堪能できるアルバム「ソング・リブズ・オン」に収録されている。アルバム冒頭、ピアノでブルージーに演奏される美しいタイトル曲「Song Lives On(歌は生きつづける)」が、このアルバムのコンセプトを示し、「When The World ・・・」はその中心に位置づけられる歌である。レイラはこの歌をいつくしむように、時には力強く、時には切なくて、あたたかかく歌っている。サンプルのピアノも美しいサポートを。
ラストのボーナス曲は、サンプルのラグ・タイム・ピアノの伴奏によって歌われる「It’s Sin To Tell A Lie(嘘は罪)」。多くの歌手にカバーされ、今も生き続けている懐かしい往年の名曲。 

ソング・リブズ・オン

ジョー・サンプル / ビデオアーツ・ミュージック


原曲であった「Melodies of Love」は、「Rainbow Seeker (邦題:虹の楽園)」に収録されている。こちらもサンプルのピアノが美しい調べとリズムを刻む。

虹の楽園

ジョー・サンプル / ユニバーサル ミュージック クラシック


「ジョー・サンプル(Joe Sample、1939年2月1日~)」。テキサス州・ヒューストン出身のジャズ・フュージョン界で活躍するピアニスト。リリカルで透明感のあるピアノでありながら、時折ファンキーな音色を見せるのが特徴である。1960年に「ジャズ・クルセイダーズ」の名でデビューした。私たちの年代のJAZZファンはむしろこちらの名前のほうが、なじみがあるかもしれない。 1972年、「クルセイダーズ」と改名し、よりポップなフュージョン路線を強調したアルバム「Street Life」が大ヒットする。サンプルは、多くのソロ活動もしていて、クルセイダーズ時代に発表した「Rainbow Seeker (邦題:虹の楽園)」(1978)、「Carmel (邦題:渚にて)」(1979)などのアルバムが有名である。

シンデレラは硝子のCDの夢を見るか? ~マーケッターとしてのシニア考(16)~

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(写真;エヌ・アンド・エフ社のガラスのCD  nikkei BPnet 記事より)

前回の高音質CDの続編である。話を従来のポリカーボネートの代わりにガラスを採用した『Extreme HARD GLASS CD』が、2006年に発売され、その後、オーディオファンやクラシックファンの間で大きな話題となっていると言う記事(1) (2)を読んだところから始めよう。
2006年10月、エヌ・アンド・エフ社とトエミ・メディア・ソリューションズ社が共同開発した「ガラス製」のCD、「Extreme Hard Glass CD」が発売された。クラシックの名曲を中心に収録したこのガラスCDは、ラジカセ・クラスの安価なオーディオでも歴然とその音質の差が分かるという。そして価格もなんと驚きの9万8700円であるが、その半分は材料費だという。前回述べたように高音質化するためには、素材の変形や型の加工精度という要素が大きいというから、素材としてはガラスは究極の選択かもしれない。しかし、ガラスCDは専用のプレス機で一日に15枚程度しか作れない。通常のCDは2秒~4秒で1枚という。従ってコストへの影響大きいことも理解できる。反響は大きかったが、売れ行きは、いまいちのようで、やはり高価格がネックになっているらしい。開発者は、「マスター・テープ」という形で残されている歴史的名演の数々が、どんどん劣化していくことから救うためにガラスCDへ保存するということが開発の大きな動機であったとその想いを語っている。その意味では確かに大変有意義であり、国の文化予算などをつけてもいいかもしれない。しかしCDのフォーマットである以上、その制約内での究極の「高音質」ということである。SA-CDやDVD-Audioでなく、なぜCDなんだという疑問は残った。

その後メジャーなレコード会社から、このガラスCDのアルバムがいくつか発売された。ユニヴァーサルミュージックからは「カラヤン/ベルリンフィル」の「ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125<合唱>1962」。価格はなんと20万円。単純に計算すると、20万円と先ほどの9万8700円のうちの材料費約5万円との値差15万円がレコード会社での付加価値である。これをどう見ますか?

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ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125<合唱>1962

ビクター・エンタテインメントからも、「村治佳織/アランフェス協奏曲」、「フジ子・ヘミング/奇蹟のカンパネラ」、「川井郁子/新世界」、ガラスCD3タイトルを「Super Excellent Glass」シリーズとして2009年4月に発売される予定という。いずれも完全予約制/限定生産で、こちらも価格は1タイトル18万円。
このような高価な硝子のCDを手に入れることが出来る「シンデレラ・リスナー」は一体誰でしょうかねえ? もちろん私としても一度聴いてみたい気は十分にありますが・・・。

こんな程度で驚いてはいけません。上には上があるものです。ここからは、もう「JAZZ的トリビア」といっていい、私の想像をはるかに絶する世界の話題を3件・・・・。

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1)ゼファン社は、オーストラリアのオーディオメーカー・Continuum Audio Laboratoriesの製品の取り扱い開始を発表した。第1弾として販売されるのは、アナログレコードプレイヤーシステム「Caliburn」で、既に受注を開始している。受注生産となっており、価格は1,700万円。注文後、2か月程度での納品になるという。
記事詳細はこちら ⇒

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2)ラスベガスで今年1月に開催されていた、世界最大の家電展示会「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」で、イタリアのメーカー、アンジェリス・レーバー社は6万4000ドル(約576万円)の超高級ターンテーブル「ガブリエル」を発表した。アームは、フェラーリの部品工場が製作し、最高4本まで装着できる。すべて受注生産で、発注者の名前がはいるという。ターンテーブルだけの値段ですよ!!
記事詳細はこちら ⇒

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3)ステラヴォックスジャパン(株)は、ドイツROLF-KELCH(ロルフ・ケルヒ)ブランドのハイエンド・アナログターンテーブル「Reference II」を発売する。価格は5,775,000円(税込)。本機は、トーンアームレスのアナログターンテーブル。外部からの振動、内部で発生する振動の両方を完全にシャットアウトするために様々な技術が導入されている。
記事詳細はこちら ⇒

アナログ・レコードによる高音質を極めることが究極の贅沢?であると考えるオーディオ・ファンが世界には多くいるらしいが、その中でもプレイヤーは極める要素が多い。レコードの重量、盤のソリやゆがみに加え、ターテーブルの重量、回転ムラ・振動、ソリ、ピックアップ・アームの針圧、バランス、針の振動特性、信号の減衰特性、電気回路のノイズ・・・・・など。いずれをとってもアナログなるがゆえに音質に大きな影響を与える要素です。これらの要素を追求し極めることは至難の業であるし、また相当のコストがかかってしまうことは、信号処理や制御部分、電源のICが量産できてしまえば、あっという間にコモディティ化が進んでしまうデジタルの場合の比ではない。クオーツ腕時計と機械巻き腕時計を思い浮かべてみれば、すぐお分かりいただけると思う。
しかし、技術的課題をクリアして、究極の音を追求するメーカーとそれを求めるリスナーがいるんですねえ。かって技術屋であった私の心をちょっぴりくすぐられる話ではある。

さあ、このプレイヤーで何を聴くのかが大問題。私には思い浮かべられるアルバムがありませんので、いつものおすすめアルバム紹介は断念させていただきます。う~~ん、これだけのお金があれば、何回コンサートにいけるやら、自分一人のためだけのコンサートさえ開けるのでは・・・・・。そもそも買う人がいるかって?オーディオのためなら家や部屋まで作る人がいるんですから、もちろんいるんですよ。

手放しでは喜べない高音質CD ~マーケッターとしてのシニア考(15)~

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最近、高音質のCDのリリースが相次いでいる。CDショップでも専用のコーナーを設けているところもあるくらいだ。コロンビアからは「SAVOY JAZZ HQCDシリーズ」、ユニバーサル、ワーナー、日本ビクターからは「SHM-CDシリーズ」、EMIは「HQCD」、ソニー・ミュージックは、「Blu-spec CD」といった具合だ。価格も従来CDとそう変わらない価格に設定されているようである。
CDの売り上げ低下、CD離れが言われてから久しいが、レコード会社各社は、そんな情況をなんとか打開しようと、クラシックやJAZZファン、言い換えると、高年齢で、音楽配信などには興味もなく(ITオンチといってもいい)、多少金をかけても音質にこだわるマニアックな音楽ファン層にターゲットを絞った戦略とも見えるが、あたっているだろうか?

これらの高音質CDは、一般的なCDとまったく同じCD-DA規格に準拠しているため、以前このブログでも取り上げた「SACD」とは違い、一般的なCDプレーヤーで再生することができる。その製造過程や素材に工夫を凝らすことで、CDの持つ実力を最大限に発揮、高い音質を獲得しているという。技術的な話で恐縮だが、CDなどの光ディスク系メディアは、マスター音源からスタンパーと呼ばれる型(かた)を作成し、それをポリカーボネートの円盤に型押したのち、反射面を塗布して製品が完成する。従って、この光ディスクの製造工程において、スタンパーの精度とポリカーボネートの品質が最終的なCDのクオリティーを大きく左右するのである。同じ音源、マスターテープから作られたCDでも、製造工場や時期などによって音質にばらつきがあるとは、よく言われてきたことで、前述の製造工程を考えれば、理解も出来る。そして、各社は、マスター音源からの信号をゆがみや狂いを抑えるために、型の極微細加工開発や型(スタンパー)に刻まれたピット(ディジタル情報)を正確に転写するためのポリカーボネート樹脂の材質開発にしのぎを削った結果、高音質CDが実現できたと言う。レコード会社の説明する理屈はよく分かるのだが、本当に手放しで喜べる話なんだろうか?

勿論、高音質で価格も変わらないとなればリスナーは大歓迎。しかしCDのコスト構造がよく分からないが、日本のCDが高すぎるといわれるのは、製造に関わるコストではなく、著作権、流通、宣伝などの費用がコストの大半を占めているのではないかと思う。高音質化という付加価値を実現するためのスタンパーの加工費、高品質ポリカーボネートの材料費などは、量産効果によって殆ど薄まってしまうので、結果、従来と同等価格が実現できていると思われる。それが証拠に、内外のアーティストのCD、海賊版や違法コピーでなく正規CDが、発展途上国に対する著作権料の特別措置により、中国では30~40元(450円~600円)で購入できるのだ。そして、JASRACが独占禁止法抵触しているという最近のNEWS、小室某の著作権を巡る詐欺事件などをみると、この著作権業界のビジネスに不透明なものを感じてしまうのは、決して私だけではないだろう。 

さて、この高音質CD、聴いてみると確かに従来より音質はいい。しかし、「限りなくマスター音源に近い」などといっているが、CD-DA規格に準拠している以上、「サンプリング周波数 44.1kHz、量子化ビット深度 16bit」というCDの規格仕様の範囲内での話なのだ。ちなみに、DVD-Audioは最大192kHz, 24bit、方式が違うがSACDは1bit2822.4kHz と圧倒的にサンプリング周波数が大きいので原音をより忠実に再現できる。従って、「ポリカ素材とスタンパーの精度の向上により・・」といっても、マスター音源からの複製劣化を最小限に抑えているといったほうが正しいのではないだろうか。そして、コストも大して変わらずに高音質が出来るのならば、いままでのCDは一体何だったのだろうか。いまだに相当ひどい音質レベルのCDもリリースされている現状は、一体何故なんだ、プロデューサーは、最終的にはリスナーに届られるCDの音質にまで責任があるはずだと苦言を呈したくなる。

技術進歩により、大容量のメモリーに、超高周波でサンプリングしたデジタル音楽情報を、高速でダウンロードし、それが再生できれば、そのほうがCDなどより、多分音質ははるかに良いはずである。そしてこのことはコンテンツ業界と通信業界、電子機器業界が組めば簡単に出来ることであろう。既存の著作権益や流通のしくみだけにを守り、技術進歩、新しい音楽メディアやライフスタイル、リスナーの利益について消極的であった業界体質を考えると、リーゾナブルな価格で真の高音質を手に入れるのはこれからも至難の業であるかもしれない。そして、文化庁長官の諮問機関・文化審議会では、「i-Pod」など記録媒体を内蔵した一体型機器への補償金を課金する報告案がまとまったという。業界は相も変わらず、こちらについては熱心であるみたいですね。
リスナーは、とりあえずは、従来よりはましな高音質CD?を楽しむしか方法はないのか。

最高のBGMであろうと私が考えているピアノ・トリオ、「サイラス・チェスナット」率いる「マンハッタン・トリニティ」のHQCD-JAZZ「ベスト・マスター・クォリティーズ」がリリース。ミスティ、シャレード、イエスタデイズなどのスタンダードな美曲が満載。価格は2500円、従来CDと変わりはない。

ベスト・マスター・クォリティーズ

マンハッタン・トリニティ / エム アンド アイ カンパニー


高音質CDを体感するためのサンプラーCDも、各社からいくつもでている。「カレル・ボエリー」、「ルイス・ヴァン・ダイク」、「エリック・リード」などM&Iレーベルの代表アーティストの曲が10曲はいっている完全収録CDもおすすめ。「チェロキー」、「慕情」、「イエスタデイズ」など、JAZZスタンダードの名曲、美曲が一杯。しかも価格はわずか1000円。これは安い、お得ですよ。

みんなのHQCD-JAZZ編-

オムニバス / エム アンド アイ カンパニー

もしもピアノが弾けたなら(20)  ~彼岸のBGMは・・・~ 

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春のお彼岸。ここまでくると、もう桜の開花も間近、待ち焦がれた「春来る」という感じですね。今日は、朝からゆっくりと音楽に身を委ねてみました。

Wikipediaで調べてみると、「彼岸(ひがん)」とは、煩悩を脱した悟りの境地のことをさし、煩悩や迷いに満ちたこの世をこちら側の岸「此岸」(しがん)と言うのに対して、向う側の岸「彼岸」というのだそうだ。
春秋2回の彼岸があるが、春分と秋分は、太陽が真東から昇り、真西に沈むので、西方に沈む太陽を礼拝し、遙か彼方の極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まりであるという。もとはシルクロードを経て伝わった、生を終えた後の世界を願う考え方に基づいている。心に、西方の遙か彼方にあると考えられている極楽浄土(阿弥陀如来が治める浄土の一種)を思い描き、浄土に生まれ変われることを願ったもの(念仏)と理解されているようだ。

明るく穏やかな陽光注ぐ海の見える高台の自宅で、エンリコ・ピエラヌンツイの「Enrico Pieranunzi/Racconti Mediterranei 」を聴きながら、涅槃を迎え、彼岸の彼方へ渡れたら、もうそれは最高のBGM・・・、最高の夢・・・。
ピアノとダブルベース(Marc Johnson)とクラリネット(Gabriele Mirabassi)という編成の、エンリコのオリジナル曲のアルバム。アルバムタイトルの「Racconti Mediterranei (地中海物語)」どおり、穏やかな春の地中海をほうふつとさせる美しいメロディと演奏が淡々と続いてゆく。通常のピアノトリオとは少し違って、クラリネットが明るい日差しを感じさせる。中でも、3曲目「Canto Nacosto (秘められた歌)」、9曲目「Un’alba Dipinta Sui Muri (壁に描かれた夜明け)」 の美しさは特筆。

Racconti Mediterranei

Enrico Pieranunzi / Egea


ビル・エヴァンスの流れを汲んだ、欧州のピアニストのなかでもっとも大きな存在感と影響力を放つのが、イタリアの名手ピエラヌンツィ。
「Ballads」。結晶格子が放つ光のようにも見えるジャケット・・・。静謐の暗闇から徐々にかすかに見えてくる彼岸の明かり。60分の夢と喜び、至福の時間を味わえる。いつものトリオのメンバーは、ベース、「マーク・ジョンソン」、ドラムは「ジョーイ・バロン」。

   春の闇 静寂(しじま)を揺らす ピアノフォルテ 結晶格子の 光にも似て  (爵士)

Ballads

Enrico Pieranunzi / Carrion

異界に遊ぶ  ~京都・東山花灯路~

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(写真;小雨の中、あんどんで照らされた石畳を散策する観光客ら=13日夜、京都市東山区、上田潤撮影 朝日新聞より)

今日の「おやじの遠足」は、待望の「夜」の遠足。誰が待望かって? 勿論奥さんですよ。以前から風情のある京都の夜を楽しみたいというご要望にお応えしたもの。
さて、13日から「京都・東山花灯路(はなとうろ)2009」が始まりました。八坂神社や清水寺をつなぐ沿道約5キロに行灯(あんどん)をともし、石畳に映えるほのかな約2400基の露地行灯の「灯り」が風情を醸すという、灯りのイベント。さらに一帯の、青蓮院、知恩院、八坂神社、高台寺、清水寺などの寺院や円山公園ではライトアップを施し、幽玄の世界を演出しています。
「淀屋橋」で妻と待ち合わせをし、京阪特急で京都へひとっ飛。「清水五条」で下車、そこから歩き始めて、五条坂、清水坂、三年坂(産寧坂)、二年坂、八坂の塔、高台寺、石塀小路、円山公園が、夜の遠足のコース。

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(写真は石塀小路の昼間の風景 2008年の遠足時に撮影のもの)

なんといっても風情のあるのが石塀小路。現役時代接待で2,3回行ったことがあるが、高台寺の西側、高台寺道と下河原通りを結ぶ、狭く曲がった路地である。路地の両側に並ぶ町屋の基礎部分の石垣がまるで石塀のように見えることから、「石塀小路」の名が付いたとか。石畳の小路の両側には料亭や旅館、スナックが建ち並んでいるが、昼間でも路地へ入ると、まるで異界へ誘い込まれたような不思議な空間である。 花灯路以外の普通の時でも、日の暮れと共に料亭の看板や行灯に灯が入り、なおのこと異界の趣が一層ますところである。

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そんな石塀小路の一角に偶然見つけたカフェ・ダイニング。画家「金子國義」氏の京都の別邸を氏が全面的にプロデュースしてオープンしたという「美術倶楽部・金子國義 紅蝙蝠」で食事をとることにした。ちょっと危ない世界を描いた金子國義の絵や著作にかこまれて頂く「京のおばんざい」は、大変おいしくもあったが、異界の味つけも混じっていたようであった。

img727a3441zikazj.jpg 「気分を出して」 油彩 1992年作品

金子 國義(かねこ くによし、1936年 – )は、彼が故・澁澤龍彦氏の『O嬢の物語』の翻訳の挿絵を手がけることで氏にその才能を見出され、「花咲く乙女たち」(1967年)でデビューした。そのころ、澁澤龍彦のファンであった私はちょうど大学生であった。倒錯した世界や美少女と美青年が好きというその世紀末的・デカダンスな雰囲気を漂わせる奇妙な味の画風に宇野亜喜良とともに、ずいぶん魅かれたものだ。「不思議な国のアリス(新潮文庫)」の挿絵などでも有名であり、現在は「L’Arc〜en〜Ciel」の「hyde」とも親交が深く、彼の好きな蝙蝠をモチーフにした浴衣をデザインしたり、「hyde」のアルバム「FAITH」のジャケットのデザインをしているという。彼が好きなその「蝙蝠」を名前につけたお店であったのだ。いわゆる「京の町屋」を改造した店で、奇妙な名前のお店と雰囲気に魅かれ入ったのだが、あちこちに金子國義の絵が飾ってあるのに気がついてお店の人に聞いたところ金子氏プロデュースの店とのことででびっくりした。メインの壁には、写真の絵が人目を惹くようにでんと飾ってあった。
絵と食事を堪能して、再び花灯路を円山公園~祇園・花見小路を抜け、すっかり満足して日常生活が待つ家路へと・・・。

12月のルミナリエに代表されるような冬の街のイルミネーション、薪能のかがり火のつくりだす幽玄と陰翳、そして花灯路の和の街灯り。暗がり、翳、闇とあかり、谷崎の「陰翳礼讃」を出すまでもなく、非日常的ではあるが、このような人間や街と灯りの作り出す異界には、わくわくしてしまうのだ。また来年もこようかな・・・・。

人間と夜の都市空間がテーマになっているJAZZアルバムからオススメを。ベースの「チャーリー・ヘイデン」 とピアノの「ケニー・バロン」によるデュオの傑作「ナイト・イン・ザ・シティ」 (原タイトルは、「Night And The City」)。とんがったり、ピリピリするようなところは何一つ無く、ゆったりとした心地よさ、しかし上質のJAZZの感覚を失うこと無い珠玉のアルバムである。まさしくデュオの名匠「チャーリー・ヘイデン 」。

ナイト・イン・ザ・シティ
チャーリー・ヘイデン ケニー・バロン / ユニバーサルクラシック
ISBN : B00005FKHX
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夜の街と女性とお酒、音楽といえばこれでしょう。「You And The Night And The Music」。
「ロバート・ラカトシュ」の3rdアルバムで、去年の来日時のトリオによる演奏である。タイトル曲「You And The Night ・・・・」、「Fragile」、「Whisper Not」、など美しいスタンダードとスインギーな曲が絶妙な組み合わせで芳醇な雰囲気を醸し出す、きっとあなたの夜を素敵に演出する一枚となるでしょう。

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You And The Night And The Music ロバート・ラカトシュ/澤野工房

60歳過ぎたら聴きたい歌(32) ~You Must Believe In Spring~

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やっと季節は春。しかしアメリカの強欲資本主義や日本の政治の無策によって、これから冬の時代を迎える人たち、もうすでに迎えている人たちがいる。歌や音楽がどれほどの力を持っているか、決して過信はしていないが、凍てつくような日々をすごしている人たちに、「春はきっと巡ってくる」と、せめてものエールを贈りたい。明日はわが身かもしれないのだが・・・。

贈りたい曲は、「You Must Believe In Spring」。「ビル・エヴァンス」の演奏のほうが有名かもしれないが、スタンダードとして色々な人に歌われている。原曲は、我が永遠の憧れ「カトリーヌ・ドヌーヴ」が出演したフランス映画「ロシュフォールの恋人たち」で使われた名曲。いまでは英語のタイトルと詩のほうが有名であるが、仏語の原曲はジャック・ドゥミ監督、自らが作詞した「CHANSON DE MAXENCE(マクサンスの歌)」。 作曲は「ミシェル・ルグラン」で、英詞は、「風のささやき」(Windmills of My Mind)などでもルグランとコンビを組み、彼の曲の英詞をこれまでも手がけている「アラン&マリリン・バーグマン」夫妻。歌詞は、とくにひねった意味などなく、文字を追っているだけで、心に余韻が残る詩的な世界が拡がる。英詞全文をあげておきましょう。私の下手な訳が台無しにしてしまわないことを祈るばかり・・・。

『You Must Believe In Spring (やがては春が・・・)』 
                  英詞;アラン&マリリン・バーグマン 作曲;ミシェル・ルグラン
                      (Alan & Marilyn Bergman / Michel Legrand)

「♪ When lonely feelings chill
   The meadows of your mind,
   Just think if Winter comes,
   Can Spring be far behind?

   Beneath the deepest snows,
   The secret of a rose
   Is merely that it knows
   You must believe in Spring!

   Just as a tree is sure
   Its leaves will reappear;
   It knows its emptiness
   Is just the time of year

   The frozen mountain dreams
   Of April’s melting streams,
   How crystal clear it seems,
   You must believe in Spring!

   You must believe in love
   And trust it’s on its way,
   Just as the sleeping rose
   Awaits the kiss of May

   So in a world of snow,
   Of things that come and go,
   Where what you think you know,
   You can’t be certain of,
   You must believe in Spring and love
   You must believe in Spring and love  ♪」

「♪ 孤独な想いがあなたの心を凍らすとき
   冬の後には春がやってくることを思い浮かべてみませんか?

   深い雪の下にもバラのつぼみが隠されていることは知ってますね
   だから、やがては春がくることを信じましょうよ!

   木々は、その葉が落ちても、再び芽吹いてくることをわかっています
   すっかり葉が落ちてしまった時期も、一年の季節に過ぎないと知っているのです

   氷に閉ざされた山は、やがて来る4月の雪融けの流れを夢見ています
   今はかたい水晶のように見えても、やがて融けることを知っているのです
   やがては春がくることを信じましょうよ!

   あなたは愛を信じ、その愛はこれから花開くのだと信じてください
   バラの蕾みが5月のキスを待ち続けているように・・・

   雪に覆われた世界の中でも、万物は変化しているのです
   あなたが考えたり、知っている世界は、決して定まった世界なんかではありません
   春がくることを、愛が生まれることを信じましょうよ!
   ほら、もうそこに春が・・  ほら、もうそこに愛が・・・   ♪」

まずは、「エミリー・クレア・バーロウ」の新作アルバムの歌唱を選んでみよう。カナダで活躍中の実力派女性ヴォーカリスト。高速スキャットなどを駆使し、おなじみのジャズ・スタンダードからボサノバ、ストリングスをバックにしたバラードなど彼女の魅力がたっぷり詰まったアルバム。アルバム、ラストで自ら指揮するオーケストラをバックに「You Must・・・」を熱唱。本作ではプロデュース、アレンジ、そしてストリングス・アレンジ&指揮に至るまで、シンガーという枠に留まらない才女ぶりを見事に発揮しています。

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ハヴント・ウイ・メット?

エミリー・クレア・バーロウ / ビクターエンタテインメント


「マリーナ・ショウ」のアルバムから。「Who is this bitch Anyway(1974年)」のアフロ・ヘアのイケイケ娘もあれから35年。すっかり素敵に年輪を重ねた女性になった。彼女の出自であるR&Bのエッセンスを存分に注ぎ込んだ1972年、若かりし頃ののアルバム。こちらもフル・オーケストラをバックに切々と唄い、スケールの大きいヴォーカルを聴かせてくれる。

マリーナ

マリーナ・ショウ / EMIミュージック・ジャパン


耽美派といわれるJAZZピアニスト「ビル・エヴァンス」の「You Must Believe in Spring」について触れない訳にはいかないが、このアルバムは、エールを送るどころか、かえって逆効果になりそうなので、あまり詳しく触れずに紹介だけにとどめておこう。
タイトル曲を含め、バラードを中心にした選曲で、なぜか没後に追悼盤として発表された後期エバンスの代表アルバム。元妻や兄が自殺し,自分の死もすぐそこという状況で収録されたセンチメンタルでなんともいえない寂寥感の漂う晩年のアルバム。度重なった悲劇、逆境を乗り越えるためか、自分の内面に語りかけるように弾くエヴァンス・・・。

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング(+3)(SHM-CD/紙ジャケットCD)

ビル・エヴァンス / Warner Music Japan =music=

かって浪花は海運の街だった ~大阪・南港界隈の今・・~

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(写真;手前がATC、奥にそびえるのがWTC)

今日のおやじの遠足は、今大阪では話題のスポット、住之江区の埋立地、咲洲(さきしま)、南港です。何が話題かって? 就任以来過激な発言で注目を浴びている橋本知事が、老朽化した現在の大阪府庁舎を、建替えるのでなく、ここにある大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC、愛称コスモタワー)に移転させる方が安上がりだけでなく、大阪を活性化させるためにも有効だとして、賛否両論、色々な波紋を巻き起こしているところです。

ATC(アジア太平洋トレードセンター)は、大阪で有数の規模を持つ複合施設。敷地面積;68,000㎡、建築面積;48,000㎡。1994年開業。本来は貿易のためのトレードセンターとして大阪市により総事業費1,465億円で建設された。施設全体が保税地域に指定されていることから、貿易拠点となることが期待されていた。しかし、高い賃料や市内からのアクセスの不便さなどから入居企業が相次いで撤退した。現在は、保税地域としての機能はほとんど使われず、アウトレットモールの運営などで活性化のてこ入れを図っているが、とても効果があったとは思えない。まさに、ウィークディではあったが閑古鳥が鳴いている有様。

WTC、コスモタワーは、高さ256.0m、地上55階・地下3階建ての西日本第2位である超高層インテリジェントビル。総事業費は1,193億円。延べ床面積 150,000 m²。 1995年に完成したが、ATCと同様理由で、オフィス入居の予測が大外れ。そこで、大阪市は市役所にあった行政部門のうち港湾局・水道局・建設局などを多数移転し入居させた結果、テナントの7~8割は役所とその外郭団体となってしまった。「大阪市役所南港庁舎」或いは「大阪市立バブルの塔」と揶揄され、TVのワイドショーなどで税金の無駄使いの箱モノの定番として登場する始末。

もともと、国際都市大阪の地位を確固たるもの?にしようと、ベイエリアの咲州、舞洲、夢洲3つの人工島を開発して、咲州には、コスモタワーをランドマークとする臨海副都心計画が2兆2千億円もの巨費を投じて進められ、舞洲(まいしま)には、あの夢と消えた2008年の五輪会場として開発、夢洲(ゆめしま)にはその選手村などを造成し、そのあとは住宅地などを建設する予定だった。ここまでは、東京の「お台場」、横浜の「港みらい」などと、同じ様な土建屋・ハコもの的構想であったが、どうして結果が大きく違ったものになってしまったのだろうか。WTCは2003年6月に債務超過になり、同じ大阪市の第三セクターであるATCなどと合同で計580億円の債務超過を抱えているという。大阪地盤沈下、まさに、その象徴であるエリアなのだ。

私がまず単純に感じるのは、箱物によって国際都市の地位を確固たるものにさせようなんて発想が基本的に間違っているのだ。吉本や阪神タイガース、カラオケなどの大阪発のヒット商品を見ればわかるように、人や文化やものづくりなどは、大阪独特の「ひと」あっての話である。そこが「ハコ」に有機的に絡んでこないと・・・。さらに、アクセスが極めて悪いことが致命的な欠陥である。大阪中心部から極めて近い距離にありながら、中心部や周辺都市から乗り換えなしの直通電車でいけない。河をまたいだすぐ近くには、ユニバーサル・スタジオや超大型水族館「海遊館」、「サントリー・ミュージアム」、「京セラ大阪ドーム球場」など集客力の高いスポットがあるが、それらを有機的に結ぶ交通アクセスがまったくないのだ。これでどうやって集客できると言うのだ。お客さんの視点で物事を考えていなかった証拠である。総合的な都市開発企画における行政の発想の貧しさを感じさせるのである。そしてそれらの背景には、犬猿の仲とまで言われた「大阪府」と「大阪市」の確執があろうし、オリンピック招致のときの国の冷淡さなどもあっただろう。それに加え私鉄各社間の思惑も絡んだであろう。私鉄相互間の乗り入れや新線開発が殆ど出来ていないので、首都圏に比べ、不便この上ない。役人の縄張り意識が働くかぎり、総合的な都市開発などできると思われず、「お台場」や「みなとみらい」との彼我の差にため息が出そう・・・。

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しかしATC、WTCは、私にとっては想い出のある建物である。かって、私がビル設備システムの企画開発を担当したとき、最初に手がけたシステムを納入した建物だからである。そんな私のサラリーマン生活におけるメルクマーク的な建物。そんな係わりもあって、かってATCの建築設計者と対談したときの忘れられない言葉ががある。「大阪は海に向かって開けた街、海とのかかわりで発展してきた町だから、ATCは海から見て一目でその存在と意義が分かるような建物にしたかった。」
写真にあるように、南ヨーロッパを思わせるような、日本的でないそのデザインと色使い、エクステリアは今でも色褪せない。西日本各地へ出航していく大型フェリー、時折係留されている実習用大型帆船「あこがれ」。私はここへくると何時も、バルセロナの港や丘の上の「ミロ美術館」をおもいだす。

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かって海運によって発展した大阪の歴史は、ATC近くの大阪市立の海洋博物館、「なにわの海の時空館」によって観ることができる。総工費176億円、2000年開館。建築は世界的に著名な建築家ポール・アンドリューの作品で、ユニークな4208枚のガラスのを用いたドーム型の建物。エントランス棟とドーム型の展示棟があり、両棟は海底トンネルで繋がっている。

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目玉展示は、復元されて実際に大阪湾を帆走した菱垣廻船「浪華丸」の実物模型(全長30m)。それに館内は、 古代・難波に都があった時代からの大陸、朝鮮半島、アジアとの海上文化交流史や天下の台所と称された江戸時代の大坂の繁栄と北前船、菱垣廻船など海運の歴史、明治時代に大阪にもあった外国人居留区など興味深くわかりやすい展示が一杯。ここの展示に大阪の活力再生のヒントがいくつも隠されているような気がする。ただ悲しいな、お客さんが少ないんですよ・・・。

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そして、和みの時間を求めて「海の時空館」の隣の野鳥園へと。ここ大阪南港一帯は、古くは住吉浦と呼ばれ、豊かな自然に恵まれ、日本でも指折りの渡り鳥の楽園としても良く知られていた所です。南港一帯はシギやチドリをはじめ、ガンカモ類が渡来し休息し餌を採る、日本における渡り鳥の重要な生息地であったという。総面積19.3ha、大阪南港野鳥園は港湾関係整備事業の一環として、おもに大阪湾岸一帯に生息する野鳥の保護を目的として設置されたものです。
人間界の問題ごととは無縁に、野鳥園の干潟では、渡来した渡り鳥や水鳥が、ただ無心にえさを漁ったり、羽を休めてのんびりと浮かんでいた。

ATCが想起させるバルセロナの丘に吹く風を、いま一度肌に感じてみたい・・・。日本有数のフュージョン・ギタリスト「増尾好秋/バルセロナの風」。降り注ぐ太陽の光と地中海からの陽気な風を感じることの出来るアルバム。

バルセロナの風(紙ジャケット仕様)

増尾好秋 / ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル



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