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ご近所の櫻 (2) ~美しき里山のエドヒガン~

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(写真;黒川の里山、櫻の森に群生するエドヒガン)

私のご近所に「日本の里100選」に選ばれた日本一とも称される川西市黒川地区の里山がある。「里山」とは、かって人々の暮らしを支えてきた炭や薪の生産を目的として定期的に伐採、再生を繰り返してきた人工林をそう呼ぶ。炭や薪を殆ど利用しなくなった現在、本当の意味での里山は全国的に殆どの地域で絶滅したが、この黒川周辺の里山では、室町時代に始まり、千利休や豊臣秀吉などが好んで愛用したと伝えられる池田炭(一庫炭、菊炭とも呼ばれる)をいまなお生産しており、美しい里山景観が維持されている貴重な地域である。

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(写真;切り口が美しい名産の菊炭)

黒川周辺は、昔から炭の原料となる良質なクヌギの産地で、そのクヌギを使った一庫(ひとくら)炭は火付きと火持ちがよく、切り口が菊の花のように美しいことから別名「菊炭」と呼ばれ、茶席などに用いる最高級の切炭として知られている。その黒川の里山に「ご近所櫻」の大本命エドヒガンの「櫻の森」がある。一般的によく知られている「ソメイヨシノ」は江戸時代に人工的に作られた品種だが、その親種は「エドヒガン」と「オオシマザクラ」である。開花時期はソメイヨシノより1週間程度早く、また寿命は100年以上といわれている櫻。

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(写真;櫻の森のランドマークとなるエドヒガン)

この「櫻の森」には、そのエドヒガンが約50本、その倍以上の数のヤマザクラが自生、群生している。ボランティアの桜守の方々の大変な努力によって一般の人が楽しめるように整備がすすんでいる。今が満開。写真は、その中の一本。樹高24m、推定樹齢150年以上の凛として聳え立つ堂々たるエドヒガン。その姿には圧倒され、感動すら覚えるほどだ。ソメイヨシノにくらべ花弁もかなり小振りで、楚々とした風情だが、その控えめな美しさに一層魅かれるのである。ソメイヨシノがあでやかな模様の若い娘の大振袖とすれば、エドヒガンは大人の女の江戸小紋か・・。今日は訪問する人もまばらで、我々夫婦がこの櫻を独占し、その下で持参した昼食を拡げ、いや何とも贅沢な昼食であった。櫻の森散策に汗を流しながら「この地に暮す幸せを実感できた」と言えば、少し大げさかな。

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明治37年(1904年)に建築され1世紀を経たこの地域のかっての小学校が、昭和52年(1977年)にダム建設や過疎化の進行などで廃校され、現在は公民館と資料館になっている。100年以上経た木造校舎、小さな机や椅子、黒板など郷愁を誘う風情が櫻満開の里山にマッチして残されている。薄暗い廊下の曲がり角から「ぬらりひょん」がひょっこりとでてきそうな朽ちかた・・。私はこんな感じは好きだなあ。

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一庫ダムによって作られたダム湖、知明湖のほとりやダム脇に咲く満開の櫻を、もう一押し楽しんで今日の贅沢な櫻づくしのフルコースは終り・・・。心も眼も大満足の一日であった。

「櫻めぐり」のお供は、前回につづいて「ケニーG/ロマンスの足おと」。スマートで華やかであるが、ラテンの哀愁に満ちたロマンスとリズムが聴こえてくるような、ケニーの新しい境地を感じさせるアルバム。ケニーのソプラノ・サックスの甘美な音色とボサノバがこんなに相性がいいとは思わなかった。ラテンのリズムに溶け合って、満開の桜の道を駆け抜けていくわが愛車・・。

ロマンスの足おと

ケニー・G / ユニバーサル ミュージック クラシック


里山の風景の中に生きる人々の営みを描いた日本映画の傑作があります。デビュー作「雨あがる」で世界的にも評価された小泉堯史監督による「阿弥陀堂だより」。
売れない作家・孝夫(寺尾聰)と有能な医者・美智子(樋口可南子)の夫婦は、美智子が心を病み、都会を離れて故郷に帰ってきた。北信濃の美しい里山を持つ村とそこの阿弥陀堂に一人で暮す96歳の老婆おうめ(北林谷栄)など、村の人々との温かい交流の中、夫婦は生きる喜びを取り戻していく…。北信濃の四季が、里山が、ため息が出るくらい美しい。虚栄を捨て、自然と共存することがいかに素晴らしいことであるかを思い出させてくれるこの映画を、日本映画の名作の一つに私はあげる。

阿弥陀堂だより 特別版 [DVD]

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そして、この映画の原作は、南木佳士著「阿弥陀堂だより」。映画は原作に沿ってほぼ忠実に製作されているが、活字で感じる著者の自然観、死生観、世界観は、映画とはまた違った新鮮さを読む人にもたらす。櫻によって人と自然の関わり方を再認識させられるこの時期、映画、本ともにお薦めである。

阿弥陀堂だより (文春文庫)

南木 佳士 / 文藝春秋

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