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60歳過ぎたら聴きたい歌(37)  ~ふしあわせという名の猫~

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(写真;浅川マキ 公式HPより)

立ち寄った本屋で眼にとまった一冊の文庫本。寺山修司著「書を捨てよ、町へ出よう」。初版は1967年、私が大学3年生のときであった。60年安保闘争が終わって7年経ち、再び近づいてくる70年安保闘争、先鋭化する兆しの大学紛争、ベトナム戦争の泥沼化・・・。不安の増幅の兆し。こんな時代を背景に、何かを変えたい、変わりたいという焦燥感、挫折感や孤独感を抱く若者達に連帯にもにた感覚でアピールして、若者のカリスマとなったのが「寺山修司」であった。当時もリアルタイムで読んだが、今出版されている文庫本は、初版が昭和50年(1975年)で単行本のそれとは大幅に改訂されているような気がする。しかし、「きみもヤクザになれる」、「裏町紳士録」、「不良少年入門」、「歌謡曲人間入門」などという章を読むと、あの時代の空気や皮膚感覚が、もう感傷になってしまったかすかな傷みや記憶とともに甦ってきた。

書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

寺山 修司 / 角川書店

寺山修司の本やエッセイは、当時ずいぶんと読んだ記憶がある。ノンポリであった私は、とくに新書館から発刊されていた、センチメンタルで可憐な物語やエッセイ、詩を収録した「フォア・レディース・シリーズ」、「宇野亜喜良」のイラストにも夢中になった。

そんな「寺山修司」が見出し、プロデュースし、ほぼ同時期に歌手として世に送り出した「二人のマキ」がいる。一人は「浅川マキ」、もう一人は「カルメン・マキ」である。

「浅川マキ(1942年1月27日 – )」は、石川県石川郡美川町(現:白山市)出身。町役場で国民年金窓口係の職を得たが、程なくして上京する。 マヘリア・ジャクソンやビリー・ホリデイのようなスタイルを指向し、米軍キャンプやキャバレーなどで歌手として活動を始める。1968年、寺山修司に見出され、新宿のアンダー・グラウンド・シアター「蠍座」で初のワンマン公演を三日間に渡り実施、口コミで徐々にその知名度が上がり、1969年7月、EXPRESS-レーベルより「夜が明けたら / かもめ」でレコード・デビューした。そして、翌1970年には、「ふしあわせという名の猫」(作詞;寺山修司)で一躍注目される。「浅川マキ」は音楽そのものに限らず音質、ジャケットデザイン、ライナーノート、ポスターにも一貫した独自の美意識を持ち、今日もその姿勢は崩していない。

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(写真;カルメン・マキ 公式HPより)

もう一人の「マキ」、「カルメン・マキ(1951年5月18日 – )」は、神奈川県鎌倉市出身。アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれる。1968年、高校を2年で中退し、イラストレーターか役者になろうかと考えていた時期に、「寺山修司」が主宰していた劇団「天井桟敷」の舞台「青ひげ」にたまたま友人に連れられていった。その舞台に感銘を受けた彼女は即入団を決意。同じ年の8月に新宿厚生年金会館での「書を捨てよ、町へ出よう」が初舞台。この時、CBSソニーの関係者の目に止まり、歌手として契約し、翌1969年に「時には母のない子のように」(作詞;寺山修司)でデビュー。十七歳とは思えないその妖艶な雰囲気と歌唱力、そして投げやりな歌いっぷりが話題を呼び大ヒット、レコード大賞を受賞した。このころ、たしか、雑誌「話の特集」で彼女の鮮烈なヌードが掲載され、私も衝撃を受けた記憶がある。

一回りほど歳が離れている二人の「マキ」。その後、浅川はルーツであるJAZZ色を一層強めた独自の世界へ、カルメンは「ジャニス・ジョプリン」に強い影響を受け、ロックの世界へと踏み出していくのであった。

昭和45年(1970年)2月、安田講堂落城の翌年、大阪万博開幕の直前、高度成長に酔いしれてはいるが、心の奥深いどこかで醒めている若者達の気分にフィットした歌がリリースされた。浅川マキが唄う「ふしあわせという名の猫」である。タイトルの絶妙な語感、歌詞に溢れるダークな気分、グルーミーなメロディ、今のこの時代でも少しも色あせず、むしろ、今の時代感覚や空気をより反映している様に聴こえるのだ。

【 ふしあわせという名の猫 】    作詞;寺山修司 作曲;山木幸三郎

歌詞はこちら。

この歌は、EP盤シングル、LPアルバム「浅川マキの世界」に収められたが、おすすめは彼女の活動記録を凝縮したアルバム・シリーズ「DARKNESS Ⅰ」。これによって、初期の彼女の活動を俯瞰できる。Disc1収録の「セント・ジェームズ病院」では、神田共立講堂における鬼気迫る彼女のライブ歌唱が、トランペッター南里文雄の最後の演奏とともに聴くことが出来る。Disc2では、山下洋輔、本田俊之、近藤等則などの日本を代表するJAZZメンとのセッションのアルバム、「ONE」、「マイ・マン」などからのピック・アップが収録されている。情念の闇、日本のブルース、「浅川マキ・ワールド」。

DARKNESS I

浅川マキ / EMIミュージック・ジャパン

 

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動画ではありませんが「ふしあわせという名の猫」を唄うYOU TUBEでの映像はこちら

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