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60歳過ぎたら聴きたい歌(41) ~ I’m A Fool To Want You ~

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もう遥かな昔になるが、二十代の頃、初めて深く心が傷ついたとき、一晩中、同じ歌を何回も聴いていた記憶がある。なんの歌だったかは、もう記憶の底に沈んでしまって、もはや思い出せないのですが・・。貧乏だったが、まだ青くて若くて多感で、夢や野心があって、傷つけることも、傷つくことも恐れていなかったが、あの時の、ただただ切なかった自分を、想いだして懐かしむために、今でもときどき秋の夜更けなどに聴く歌がある。その歌は、「チェット・ベイカー/Chet Baker」が歌う「I’m a fool to want you」。
この歌は、ジョエル・S・ヘロンが作曲し、ジャック・ウルフとフランク・シナトラが作詞したもので、1951年に「フランク・シナトラ」が歌って発表され、ヒットしたスタンダード曲。

【 I’m a fool to want you 】 作詞;Jack Wolf & Frank Sinatra 作曲;Joel Herron

「♪ I’m a fool to want you
   I’m a fool to want you
   To want a love that can’t be true
   A love that’s there for others too

   I’m a fool to hold you
   Such a fool to hold you
   To seek a kiss not mine alone
   To share a kiss the devil has known

   Time and time again I said I’d leave you
   Time and time again I went away
   Then would come the time when I would need you
   And once again these words I’d have to say

   I’m a fool to want you
   Pity me, I need you
   I know it’s wrong
   It must be wrong
   But right or wrong
   I can’t get along
   Without you    ♪」

「♪ こんなに君を恋焦がれるなんて愚かな僕
   そう、君を求める愚か者さ
   決して実を結ぶことがない恋を求めるなんて
   他のだれかを愛しているかも知れない君に恋するなんて   

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   こんなに君を恋焦がれるなんて愚かな僕
   こんなに君を必要とする僕を哀れんでくれよ
   間違っているのはわかっているさ、きっと間違っているに違いないよ
   しかし、正しいにせよ、間違っているにせよ
   僕は君なしでは生きていけないんだ・・・    ♪」

あの傷ついた二十代のとき、この歌を知っていれば、きっと一晩中、聴きつづけていたに違いない。トランペッターにして恋唄唄い、「チェット・ベイカー」の「Love song」というアルバムに収録されている「I’m a fool to want you」。ホテルの窓から転落して死ぬ2年前の1986年、アムステルダムでの録音である。生涯麻薬と酒から脱却することができなかった破滅的白人JAZZマンの代表格みたいな男だが、その声のもつ毒に痺れ、その毒が今でも後遺症のように私には残っているようだ。だから、いまだにこの歌は私を泣かす。辺見庸は、月刊「プレイボーイ」誌2008年8月号でチェットの歌う、「I’m a fool to want you」についてこんな風に語っている。

「老残のチェットが血涙をしぼるようにうたい、吹くとき、もらい泣きをしない者がいるとしたら、たしかに人非人にちがいない。・・・・ここに疲れや苦渋があっても、感傷はない。更正の意欲も生きなおす気もない。だからたとえようもなく切なく、深いのである。そのようにうたい、吹くようになるまで、チェットは五十数年を要し、そのように聴けるようになるまで、私は私でほぼ六十年の徒労を必要としたということだ。・・・・ 徹底した落伍者の眼の色と声質は、たいがいはほとんど耐えがたいほど下卑ているけれど、しかし、成功者や更正者たちのそれにくらべて、はるかに深い奥行きがあり、ときに神性さえおびるということなのだ。」

ラヴ・ソング

チェット・ベイカー / BMG JAPAN


この「I’m a fool to want you」を聴いたら「鳥肌もの」という、もう一枚のアルバムがある。「ビリー・ホリディ」。アルバムは「レディ・イン・サテン」。このアルバムも、亡くなる前年の1958年の録音。体はぼろぼろで、声は衰え痛々しいほどだが、気力をふり絞って歌う。これはもう執念としかいいようがない。死を目前した超新星のような一瞬の輝きか残照か。しかし、「恋は愚かというけれど」という邦題では、この歌の持つ深いせつなさや哀しみは表わせない。

レディ・イン・サテン+4

ビリー・ホリデイ / ソニーレコード

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4 Responses to “60歳過ぎたら聴きたい歌(41) ~ I’m A Fool To Want You ~”


  1. Yuko Inamura
    on 10月 7th, 2018
    @ 10:23 AM

    はじめまして。私はJazz が大好きで現在51歳です。
    Chat Baker を毎日聴いています。
    まさしく彼の血と涙を絞り出すような歌声、悲しく、心に響きます。そして涙がこぼれます。何度聴いても鳥肌です。
    まだ60歳にはなっていませんが、彼の歌を聴きながら、後半の人生を過ごしていきたいです。


  2. 大屋地 爵士
    on 10月 7th, 2018
    @ 3:04 PM

    Yuko Inamura さん  初めまして。Chat Baker を毎日ですか・・。 それは大変ですね。私もファンの一人ですが、やはり女性ファンの方が多いのでしょうか。かの「アストラッド・ジルベルト」も大のファンだったと聞いてます。もう、とっくに見ているかもしれませんが、死の直前に撮影されたドキュメンタリー、「Let’s Get Lost」、2年ほど前に公開された映画、「ブルーに生まれついて」も必見です。そうそう、「終わりなき闇 ~チェット・ベイカーのすべて~/ジェイムズ・ギャビン著、鈴木玲子訳」(河出書房新社)も、500ページにものぼる大作であるが、ドラッグにおぼれ孤独な死に至るまで、今まで語られてこなかった彼のすべてを語った決定版評伝です。


  3. yama/fan
    on 10月 31st, 2018
    @ 2:22 PM

    大屋地さんのブログはボリュームが膨大!一度覗くと時間がすぐ過ってしまいますね。
    ところで、私は哀感に満ちたメロディのイディッシュ/ユダヤ音楽がとても好きです。
    一寸思いつくのは、屋根の上のバイオリン弾き、シンドラーのリスト、ドナドナ、マイムマイム、素敵なあなた、とか。また、これらのベースともなるユダヤのクレズマー音楽/民族音楽?に興味を惹かれます。
    一方、東欧圏のポーランド、チェコなどの音楽にもそうした感じが聴き取れます。面白いことに、イスラエルの国歌がスメタナの「モルダウ」によく似ていますね。
    YouTubeでは、Rivkele ‐Rebeka Yiddish Tango、Old Jewish Polesye など良かったですが、どのような演奏者かは分かりません。
    ジャズやその他にもユダヤに関連したものはあるのでしょうが、一度、取り上げていただければうれしいです。


  4. 大屋地 爵士
    on 10月 31st, 2018
    @ 5:08 PM

    yama/fan さん  いたずらに量ばかり多くてすみません。ところで、ユダヤですか? ジャズ評論家の岩波洋三氏はこんな事を語っています。「・・・レナード・コーエンというカナダの吟遊詩人、シンガー・ソングライターも有名である。・・・ユダヤ系の人がポピュラーやジャズの世界でまず頭角を現してきたのは、ティンパン・アレーの作曲家・作詞家たちで、ガーシュイン、アーヴィング・バーリン、リチャード・ロジャース、等々みんなユダヤ系である。そして30年代以降はベニー・グッドマンが「すてきなあなた」「そして天使は歌う」などのユダヤ系の歌をヒットさせ、ハリー・ジェイムス、ジギー・エルマン、スタン・ゲッツなどのユダヤ系の人たちをメンバーに加えた。50年代からは「オー・マイ・パパ」「チェナ・チェナ」「ハイ・ヌーン」「蜜の味」「エクソダス」「アニバーサリー・ソング」などのユダヤ・メロディがヒットし、僕もいつの間にかユダヤ的旋律の虜になってしまっていったようだ。」

     コンテンポラリーとして私が知っているのは、1981年イスラエル、テルアビブ生まれ、現在はフランス在住のピアニスト、「ヤロン・ヘルマン/Yaron Herman」。 「梅は咲いたか、桜はまだかいな」 などで紹介したことがあります。

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