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読むジャズ(9) ~ダブル・ミーニング~

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買ったきりそのままに本棚に放ってあった本の何冊かを読み出した。その中にJAZZのスタンダード曲がキーワードになっている小説があった。「伊坂幸太郎/ラッシュライフ」、「浅暮三文(あさぐれ みつふみ)/石の中の蜘蛛」である。購入時には、特にJAZZを意識して買ったわけではないので、まったくの偶然で、そうだったということだ。本への論評は差し控えるが、いずれも人気作家の野心作、私としては大変面白かった。

「伊坂幸太郎」。「ラッシュライフ(2009年公開)」もそうであるが、「アヒルと鴨のコインロッカー(2007年)」、「 死神の精度(2008年)」、「フィッシュストーリー(2009年)」、「重力ピエロ(2009年」など映画化された作品も多く、いま最も人気のある若手作家の一人といっていいだろう。1971年(昭和46年)生まれ、宮城県仙台市在住。評論家に注目され始めた2002年の「ラッシュライフ」は、5つの別々に見える話が最後にリンクしていく群像劇と呼ばれる手法を使った作品である。

「金で買えないものはない」と豪語する画商、泥棒を生業とする男、父に自殺され神に憧れる青年。不倫相手との再婚を企む女性カウンセラー、職を失い家族に見捨てられた男。並走する5人の5つの物語と交錯する人生。その果てに待つ意外な結末。「ラッシュライフ」とあるが、副題は「A Life」となっていて、物語を構成する5人それぞれの人生を、ラッシュという同じカタカナで意味が違う言葉で想像できるように仕掛けがなされている。「lash、lush、rash、rush」。そう冒頭の見開きに載せてあるエッシャーの騙し絵のように・・。


 

ラッシュライフ (新潮文庫)

伊坂 幸太郎 / 新潮社

 
冒頭、金さえあれば何でもかなうと信じている画商が連れの女に問いかける言葉が、「ラッシュライフを知っているか? ・・・・  曲だよ。そういうな名の曲だ。ジャズは聴かないのか。 ・・・ コルトレーンの名演だ。Lush Life。豊潤な人生。いいじゃないか。 ・・・・」
このほか、「キース・ジャレット」などに関するくだりもあり、作者がJAZZに関心が強いことを窺わせる。

画商が言う「ジョン・コルトレーン」の名演「Lush Life/豊潤なる人生」はこのアルバム。

ラッシュ・ライフ

ジョン・コルトレーン / ユニバーサル ミュージック クラシック

「LUSH LIFE」の「lush」には画商が思い込んでいる「豊富な、豊潤な、華麗な」などという意味のほかに、「酒、のんだくれ、やけくそ」などという意味がある。「LUSH LIFE」の歌詞は、「私は、どこかの小さな場末の酒場で、飲んだくれの人生を送りたい 同じようにつらい寂しい人生を送っている飲んだくれどもと一緒に そこで酔いつぶれて朽ち果てるまで ・・・ 」。歌詞のように、この歌は「豊潤な人生」といった歌であるわけがない。著者・伊坂はそのダブル・ミーニングをちゃんと分かったうえで、画商に言わせているのである。「飲んだくれの人生」、「酒びたりの人生」、「やけくその人生」というタイトルが正しいのである。ここにもまた伊坂は「ダブル・ミーニング」の仕掛けを施していたのである。

「LUSH LIFE」は、「Take The “A” Train (A列車で行こう)」の作詞、作曲でしられている「ビリー・ストレイホーン/Billy Strayhorn(1915-1967)」の1949年の作詞、作曲によるものである。鉄鋼の都市ピッツバーグの貧困街に育った「ビリー・ストレイホーン」は、黒人への差別、大恐慌時代の貧困という現実に向き合いながら、音楽家への道をあゆみ、ついにはデューク・エリントン楽団に加わることとなる。しかしこの歌は、彼のその後の人生を暗示するような歌でもあった。彼は酒びたりの生活を送り、51歳の若さで食道がんで死を迎えることになる。まさに「LUSH LIFE(飲んだくれの人生)」であった。

「Lush Life/飲んだくれの人生」をボーカルで味わい方へのお薦めは、私がもっとも好きな男性JAZZボーカル「ジョニー・ハートマン」がコルトレーンとくんだ名盤バラード・アルバム「ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン」である。(参照男唄に男が惚れて(3)~ジョニー・ハートマン ビロードの声に包まれて~

ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン

ジョン・コルトレーン ジョニー・ハートマン マッコイ・タイナー ジミー・ギャリソン エルヴィン・ジョーンズユニバーサルクラシック

そして、アジアの癒し姫「ジャシンサ/Jacintha」もまたおすすめ。(参照「アジアの癒し姫たち」

Lush Life  Jacintha / JVC

 (次回 「浅暮三文」へつづく)

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