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忘れかけている味

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母親と実家のケアのため、名神から中央高速を北に向かって車を走らせる。多分、今年最後の帰省となるだろう。私が住んでいるあたりでは、ここ数日の間に、紅葉が急速に進んだが、中央高速では、多治見を過ぎたあたりから、ちょうど見ごろ、色とりどりの紅葉のパッチワークが目に入ってきて、それは美しい。恵那山トンネルを抜けると、冠雪した中央アルプス、南アルプスの山稜の白がそれに加わり、紅葉と清冽な山肌のコントラストが何とも見事である。

故郷・松本は、今年は紅葉も冬の到来も少し遅かったようで、いつもであれば11月初旬までには終わっているこの地方の晩秋の風物詩「お菜(野沢菜)漬け」がまだ行われているようである。というのも、いつもこの時期、林檎の発送を頼むお店には、野沢菜が山盛りになっていたからである。子供のころ、自転車にリアカーを付け、その年自宅で漬けるリアカー山盛りのお菜と大根を農家から運ばされたものである。当時はまだ上水道が普及していなかったので、日曜日に近くの河原で、近所の奥さん連が総出で、お菜や大根を洗ったものである。「お菜洗い」といって子供にしてみたら、にぎやかな祭りみたいな行事であった。一軒の家で、野沢菜だけでも三樽ほどは付けたであろうか、塩加減などは家長の仕事であり、朝からの家族総出の一日仕事であった。そして、「お菜洗い」が終わると、アルプスから木枯らしが吹いて、故郷は本格的な冬の支度を始めるのであった。

両親が年老い、実家でお菜を漬けなくなってから、もう相当な年月が経つ。最初は関西へも送ってもらってもいたが、松本との環境・気候の違いのためか、実家で口にしていた、あのシャキッとしたみずみずしさと歯ごたえや、適度のしょっぱさはすっかり失われてしまうため、帰省のとき以外は口にしなくなっていた。その実家のお菜漬けの味も忘れかけているのだ。そんなことを思い出しながら、中町・蔵通りあたりの喫茶店で、とてもこの季節とは思えないほどの暖かい日差しの朝日を浴び、モーニング・コーヒーで体を目覚めさせてから、母親に会いに行った。

冬の時期の故郷とイメージがダブる曲は、ピアノとベースのデュオ・アルバムの傑作、「ミルチョ・レヴィエフ & デイヴ・ホランド/Milcho Leviev & Dave Holland」の「Up and Down」に収録されている「カヴァティーナ/Cavatina」。「マイケル・チミノ/Michael Cimino」監督、1979年公開の映画「ディア・ハンター/The Deer Hunter」の中で使われたあの美しくも鮮烈な曲である。「ミルチョ・レヴィエフ」は、旧共産圏ブルガリア出身で、クラシックにベースを持つJAZZピアニスト。東西冷戦のまっただ中、彼はJAZZのため、家族も祖国も捨てて、1971年単身アメリカに渡った。雪の中を丘に向かって続く一本の道。ジャケットの絵もレヴィエフの心根を表しているようで私の好きな一枚である。音質も秀逸で、1987年9月、東京サントリー・ホールでのライブ。

Up and Down

Milcho LevievM.a. Recordings

「Milcho Leviev & Dave Holland – Cavatina」

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2 Responses to “忘れかけている味”


  1. もとよし
    on 12 月 9th, 2011
    @ 1:47 AM

    このカヴァティーナにはシビレました!
    先程からReplayして再生中です。
    しばらくは、クセになりそうです。(^ァ^)


  2. 大屋地 爵士
    on 12 月 9th, 2011
    @ 10:08 AM

    もとよしさん    このCD1999年?のリリース。たしか冬の季節だったと思いますが、FMラジオから流れてきたこの演奏に耳が釘付けになりました。曲名だけはわかっていたんですが、演奏者、レーベル等一切わからず、このCDにたどり着くまで少し時間がかかったことを記憶しています。以来、ヘビーローテの一枚になっています。

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