今宵も「森/forest」をテーマにしたピアノ演奏。「上原ひろみ&チック・コリア/Hiromi Uehara & Chick Corea」のデュオ・アルバム、「デュエット/Duet (Chick Corea & Hiromi)」(2008)から、「Old Castle, By the River, In the Middle of a Forest/古城、川のほとり、深い森の中」。2007年9月、「ブルーノート東京」での白熱のライブ・アルバム。
今宵の曲、「セイリング/Sailing」、「ニューヨーク・シティー・セレナーデ/Authur’s Theme (Best That You Can Do)」などのヒット曲で知られている、シンガー・ソングライター、「クリストファー・クロス/Christopher Cross」が歌う「Words of Wisdom(智慧の言葉、名言)」。アルバム、「Another Page」(1983)、「The Very Best of Christopher Cross」(2002)から。
【 Words of Wisdom 】 by Christopher Cross
「♪ I can hear your voice and I have no choice 君の声を聞きたくてたまらない
’Cause the pain is too deep inside それほどこの痛みは深いから
And the hurt of a love that is lost has no cure 失った愛の傷はもう癒せない
But the love of another heart でも、彼女の愛をふたたび
Your friends try and say it will all get better 取り戻せると友達は気を使って言う
They say that they know how you feel 彼らは君がどう思っているかを知っていると言うが
But your heart isn’t sure 君の心に確信が持てない
’cause it knows what it heard だって、無責任に言っていることだから
All the things that it read in the letter この手紙に書いてあることがすべて
All the words of wisdom どんな知恵の言葉も
Never seem to ease the pain この痛みを癒せはしない
All the words of wisdom sound the same どんな知恵の言葉も同じように虚しく響く
今宵の曲、「Remembering the Start of a Never Ending Story」。ちょっと異色の女性、「ヴォーカリスト、「ノーマ・ウィンストン/Norma Winstone」。英国を代表する孤高のヴォーカリストで、ジャズ・ファンからも多くの支持を得ているヴォーカリストで、ピアノの詩人と呼ばれたイギリス人のピアニスト、「ジョン・テイラー/John Taylor」の元妻でもある。
1941年、ロンドン生まれ。ジャズ・シンガーであり、詩人。40年を超えるキャリアを持ち、その独自の「wordless improvisations」、「声」自体を活かす唱法がよく知られている。16歳の時にロンドンのクラブ、「ロニー・スコッツ/Ronnie Scott’s club」で「ローランド・カーク/Roland Kirk」の演奏に魅了されジャズに興味を持ったという。1960年代からジャズ・ヴォーカリストとして活動をはじめる。自分自身の名義による初アルバム「Edge of Time」を1971年に録音。1970年代後半には当時、夫でもあったピアニストの「ジョン・テイラー/John Taylor」と、トランペット奏者の「ケニー・ウィ―ラ―/Kenny Wheeler」とともに、「アジマス/Azimuth」というグループを結成し、ECMレコードに名作を残している。またソロとしてもECMに「Somewhere Called Home」(1986)等の伝説的名盤を残した。2001年には、「BBCジャズ・アワード・ベスト・ヴォーカリスト賞」を受賞。2013年には最新作、「Dance Without Answer」をECMよりリリースし、話題を集めた。
「Remembering the Start of a Never Ending Story」。アルバム、「Distances」(2008)から。バス・クラリネットとソプラノ・サックス奏者の「クラウス・ゲーシング/Klaus Gesing」とピアニストの「グラウコ・ヴェニエル/Glauco Venier」とのトリオによるアルバムであるが、この歌唱を、なんと表現したらいいのだろうか。ECM的ボーカルとでも、或いは管楽器のようなボーカルとでも ・・・。アルバムのクレジットの多くには、「VOCAL」ではなく、「VOICE」と書かれているという。
今宵の曲、「I’ve Grown Accustomed To Her (His) Face」。邦題は、「彼女(彼)の顔に慣れてきた」。ブロードウェイのヒット・ミュージカルで、「オードリー・ヘプバーン/Audrey Hepburn」、「レックス・ハリソン/Rex Harrison」主演、「ジョージ・キューカー/George Cukor」監督で映画化もされた 「マイ・フェア・レディ/My Fair Lady」(1964)の挿入歌、スタンダードになっている曲。たしか、ヒギンズ教授が喧嘩別れしたイライザを思い、「忘れられない、彼女の顔が ・・・」 と歌うシーンだったと思う。
スタンダードのため、カバーも多く、女性目線で「her face」を「his face」に置き換え歌う女性シンガーも多い。作詞、「アラン・ジェイ・ラーナー/Alan Jay Lerner」、作曲、「フレデリック・ロウ/Frederick Loewe」。
【 I’ve Grown Accustomed To Her (His) Face 】
by Alan Jay Lerner, Frederick Loewe
「♪ I’ve grown accustomed to her face あの娘の顔に慣れてきた
She almost makes the day begin 彼女とともに一日が始まるといってもいい
I’ve grown accustomed to the tune 彼女が昼も夜も吹くあの口笛にも
she whistles night and noon 慣れてきた
Her smiles, her frowns, her ups and downs 彼女の笑顔しかめ面、機嫌のいい時悪い時
Are second nature to me now ごく自然に僕の一部になっている
Like breathing out and breathing in まるで呼吸をするように
I was serenely independent 僕は彼女に会うまでは、自由で平穏だったし
and content before we met それに満足していた
Surely I could always be that way again and yet きっとその状態にまた戻れるさ
I’ve grown accustomed to her looks, でも彼女の姿が忘れられない
accustomed to her voice 声が忘れられない
Accustomed to her face 彼女の顔が忘れられない
1971年、ポーランドのグダニスク生まれ。両親のすすめで5歳の時にピアノを始め、1996年グダニスク音楽アカデミーを卒業。これまで「クシシュトフ・コメダ」賞(1992年)、ポーランド外務大臣賞(2007年)などを受賞。 これまでに多くの音楽作品に参加しており、コラボレーションしたアーティストは、「パット・メセニー/Pat Metheny」、「アンナ・マリア・ヨペック/Anna Maria Jopek」など多数に及ぶ。
その「レシェック・モジジェル」が演奏するのが、同じポーランド出身のジャズ・ピアニストで作曲家の「クリシュトフ・コメダ/Krzysztof Komeda」(1931年 – 1969年)の作品。東欧諸国やポーランドにおけるジャズの革新に最大の貢献をしたイノベーターであり、リーダーであり、斬新なセンスに満ちたピアニストが「コメダ」。そして、「コメダ」は、「ロマン・ポランスキー/Roman Polanski」監督の「水の中のナイフ/原題:Nóż w wodzie/Knife in the Water」(1962)や「ローズマリーの赤ちゃん/原題:Rosemary’s Baby」(1968)、また「アンジェイ・ワイダ/Andrzej Wajda」監督の「夜の終わりに/Niewinni czarodzieje」(1960)などの映画音楽を手掛けている。
濁りの無いピュアな音の連なりが、陰翳のある東欧の風土を想起させ、「コメダ」の残した音楽的遺産がぎっしりと詰まっているアルバム、「Komeda」(2011)から、映画「ローズマリーの赤ちゃん」でも使われた曲、「Sleep safe and warm」。その鮮烈さが際立つ。
2曲目は、「Sleep Warm」。「ステイシーケント/Stacey Kent」。初期のアルバム、「 Close Your Eyes」(1997)から。
【 Sleep Warm 】 by Alan & Marilyn Bergman / Lews Spence
「♪ Sleep warm, sleep tight 暖かくしてお眠り しっかりとね
When you turn off the light 明りを消して
Sleep warm, sleep well, my love 暖かくしてお眠り ぐっすりとね
Put your head on the pillow 幸せの枕とよばれる枕に
What a lucky pillow 頭を横たえてね
Close to you 目を閉じて
So close to you all night ぐっすりと眠るのよ
今宵のピアノ曲。クラシックから、フランスの作曲家、「ドビュッシー/Claude Debussy」が1909年から1910年にかけて作曲した「prelude for piano」の6曲の一つ、「Des pas sur la neige(雪の上の足跡)」。これをジャズ・アレンジした、「リッチー・バイラーク/Richie Beirach」の演奏がお気にいり。得意とするクラシックの名曲を素材ににしたスウィンギーでロマンティックな演奏を収録したアルバム、「No Borders (哀歌)」(2002)から。
今宵の曲、「Out in the Cold」。「キャロル・キング/Carole King」です。直訳すると、「寒さの中に放り出されて」というような意味でしょうが、「冷たくされて、無視されて、忘れられて、のけ者にされて」という慣用句。名盤、「つづれ織り(タペストリー)/Tapestry」(1971)に収録。
【 Out in the Cold 】 by Carole King
「♪ I only wanted to play 祈ることしかできなかった
I thought what he didn’t know これぽっちも私が彼を傷つけようなんて
wouldn’t hurt him anyway 思ってもみなかったに気付いて欲しいと
But he found out でも、彼は見つけてしまった
and someone else gave him her hand to hold 彼に手を差し伸べてくれる他の人に
And suddenly I find myself out in the cold そして、突然、冷たくされてしまった
He trusted me all the time 彼はいつでも私を信じてくれた
I thought I could see another man ほかの男に目移りした時も
and he would still be mine 彼はいつも私だけを見てくれた
Well yesterday I had a good thing そう、私は昨日まではゴールドより
worth more than gold 価値のあるものを持っていたのだ
Today he’s got a truer love でも今、彼は真実の愛を見つけ
and I’m out in the cold 私は寂しく一人ぼっち
さて今宵の曲、JAZZYな日本人アーティストをピックアップ。まず、「今井美樹」のアルバム「I Love A Piano」(2008)から、「春の日」。彼女が、「小曽根真」、「武部聡志」、「大野雄二」、「塩谷哲」など7人のジャズ・ピアニストとの共演したアルバムである。「今井美樹」の透明感のあるピュアな声が、ピアノとよくマッチして新たな彼女の魅力を引き出している。「春の日」は、「武部聡志」とコラボ。
続いては、「春へつづく道」。最近は全く消息を聞かないが、2003年、艶やかな着物姿でデビューし、独自の世界を打ち立て注目された異色のジャズ・シンガーがいた。「Bebe(ベベ)」。彼女の2ndアルバムは、「東京の休日」(2004)。彼女の日本語詞による1950年、60年代のシネマ音楽のカヴァー集である。モンローの「お熱いのがお好き/原題:Some Like It Hot」(1959)の「I Wanna Be Loved By You」が「ラズベリー・ランデヴー」に、「いそしぎ/原題:The Sandpiper」(1965)の主題歌、「The Shadow of Your Smile」が「春へつづく道」に、そして、「太陽がいっぱい/原題:Plein soleil」(1965)が「緋色(あかいろ)の家」に、「グレン・ミラー物語/原題:The Glenn Miller Story」(1954)の「ムーンライト・セレナーデ/Moonlight Serenade」が、「待つ宵」にといった具合。「元々の歌詞がベストにきまっているので、意訳してもいいものはできないから、自分の感じるまま、あらたに作詞した」という。原曲の歌詞の内容とはまったく違うが、彼女のレトロな世界が展開される。そして、平成も終わる。
【 春へつづく道(The Shadow of Your Smile) 】 by Bebe Jonny Mandel
【 Winter Green and Summer Blue 】 作詞:奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ
「♪ Winter green and summer blue 冬はグリーンに、夏はブルーに
Lavender spring turn 春のラベンダー色は
To autumn hues やがて秋の色へと変ってしまう
Things have a way すべてのものは
Of changing colours いつかは色が変わるのだ
Seems my time is up with you あなたと過ごす私の時がいつかは終わるように
You showed me あなたは教えてくれた
A lifetime of seasons 季節にも寿命があるということを
Was it years or weeks or a day ? それは数年、数週間、たった一日かもしれない
It wasn’t just a dream we shared でも二人がともに見た夢はきっと違う
But seasons that change yet stay 移ろうはずの季節はいまだ変わらず
You let me know love is the same あなたへの愛も移ろわないと
・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ♪」
「ナンシー・ウィルソン」。1937年生まれ、オハイオ州出身の女性ジャズ&ブルース歌手。70枚以上のアルバムをリリースし、3度のグラミー賞を受賞した大ベテラン。生前最後のアルバムは、グラミー賞「最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム賞」を受賞した、2006年のアルバム、「Turned to Blue」となった。
「Winter Green and Summer Blue」は、アルバム、「Keep You Satisfied」(1989)に収録されている。
最近のコメント