
神戸へ出かけた。妻のお供である。はっきり言えば運転手。そういえば、「アッシーくん」なんて言葉はもう死語になってしまったのでしょうか? 「ヴィラブリ・ガーデン/Villabli Garden」の絶品の「海鮮焼きそば」喰いたさに運転手を引き受けたようなものである。さっそく、まず駄賃は先払いとお目当ての食事をし、街歩きのお供を開始 ・・・。妻の趣味の材料の仕入れ、お気に入りの居留地や栄町界隈でのウインドウ・ショッピング、神戸に本社のある手芸の通販会社主催の雑貨フェスタなどと盛りだくさん。GWとこの19日から始まる「神戸まつり」のあいだの中休みみたいで、三宮、元町もあまり人出はなく、いつもに比べ歩きやすい。結局、手芸材料に加え、孫娘へのTシャツなどを買い込んだ。
私はといえば、ウォーキング途中、元町にあるジャズ・カフェで一息つく。夜はライブのジャズ・クラブになる、「カフェ萬屋宗兵衛」。昼間にジャズ喫茶なるところでコーヒーを飲むなんて何十年ぶりであろうか。まあ、中に入って驚いた。我々が知っている、あの大音響でジャズが鳴り響き、客のほとんどが若い男性、もうもうたる煙草の煙の中で、みなものも言わず、ただ苦虫を噛んだような顔で、ジャズに聞き入っていたあの暗くて重い雰囲気など微塵もないのである。客の多くは女性、音楽も会話をあまり邪魔しないように絞ってある。そして、甘さを抑えたチーズ・ケーキと珈琲が売り ・・・。いやあ、変われば変わったものである。多分この変わりようはいいことなのでしょう。そして、中古のレコード・CDショップへ。そこで、「パトリシア・カース/Patricia Kaas」の初期のCDを見つける。しばらく聴いてなかったなあ ・・・。
こんな何気ない日常生活から得られる心地よさや、取るに足らないようなささやかな満足感がいい。口に出してはなかなか言い難いが、先はそう長くないのである。そんなことは、誰かさんに教えられるまでもなく、みんなよくわかっていることである。「人生の仕舞い方」をどうするかについても、口には出さないだけで、みんな悩んでいることである。だからこそ、仕事に最後の情熱を注いだり、家族や孫を慈しんだり、花を愛でたり、写真や音楽に心を和ませたり、喜びを見つけていまを生きている。みんなそれぞれに自分にあった「残りの人生の生き方」や「仕舞い方」を模索しているのである。それを「仮面だ」と嗤いたければ、どうぞ嗤うがいい。

「パトリシア・カース」は、1966年生まれのフランスの歌手。シャンソンとジャズ、ブルース、POPSの混然とした世界を見せてくれる。私が聴くようになったのは、もう円熟期に達していた彼女のアルバム「ピアノ・バー/Piano Bar」(2001年)をすっかり感心してしまったことがきっかけである。彼女は、1987年に世界中で大ヒットした「マドモワゼル・シャントゥ・ブルース/Mademoiselle chante le blues」でデビューしたが、デビュー当時は、「エディット・ピアフ/Édith Piaf」の再来、あるいは、90年代の「ヌーヴェル・シャンソン」のリーダーなどと騒がれたという。買い求めたアルバムは、1990年リリースのセカンド・アルバム、「セーヌ・ドゥ・ヴィ~人生のシーン~ /Scène de vie」。「ミシェル・ルグラン/Michel Legrand」や「シャルル・アズナブール/Charles Aznavour」といった、フランスの偉大なソング・ライターの名曲をカバーし、彼女を知るきっかけになった「ピアノ・バー」と違って、もっと骨太の声でダイナミックに歌うその姿は、若さのほとばしりの中に凄みすら感じさせる。
ピアノ・バー パトリシア・カース ソニーミュージックエンタテインメント
「セーヌ・ドゥ・ヴィ~人生のシーン~」がリリースされたのは、ベルリンの壁が破壊された翌年。新しいムーヴメントを求める欧州の若者の大きなうねりや胎動に、呼応したのかも知れない。特に反応したのは、「ケネディ・ローズ/Kennedy Rose」という曲。「ジョン・F・ケネディ/John.F.Kennedy」大統領の母、「ローズ・ケネディ/Rose Kennedy」をテーマに歌った歌である。
セーヌ・ドゥ・ヴィ パトリシア・カース / エピックレコードジャパン

リリース後に行われた「セーヌ・ドゥ・ヴィ」ツアーは、13カ国210会場、65万人の観衆を動員。彼女はこのツアーで、日本も訪れた。このツアー・ライブを収録したCDアルバム、DVDアルバム、「カルネ・ドゥ・セーヌ/ Carnet de scène」がリリースされているが、ジャズとシャンソンとブルース、POPSが混然としたその世界の中で、シャウトするその姿はまさに「凄み」すら感じさせる。
「♪ あたしは あのローズ・ケネディとは違うわ
愛する息子たちが
いつか合衆国大統領になるなんて
そんなバカげたことは望んだりしない
彼女の名前はケネディ・ローズ
いったいどんな運命の悪戯が
あんなに綺麗な薔薇を
一生を続けて挑戦し続け
一生をかけて闘い続けるような
息子たちの母親にしたというの
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」(訳;祈本雪臣)
「Patricia Kaas ~ Kennedy Rose (Live 1990)」
そして、シャンソンとブルースと、「中島みゆき」の融合もまた彼女の世界。「パトリシア・カース」が歌っても、全く違和感がなく、むしろ別の新しい世界が構築されたと感ずるのは、「中島みゆき」の「かもめの歌/Juste une Chanson」。アルバム、「永遠に愛する人へ/Je te dis vous」(1993年)の日本盤に収録するボーナス・トラックのために「中島みゆき」が書き下ろした曲である。「中島みゆき」自身も、同じ年の1993年に発売されたアルバム、「時代-Time goes around」に収録している。
永遠に愛する人へ パトリシア・カース / エピックレコードジャパン
カースは「中島みゆき」の書いた詞をもとにしたフランス語の歌詞を歌っている。私はフランス語はさっぱりであるので、対訳もいいが、「中島みゆき」の歌詞で雰囲気や気分を味わってみる。
「♪ いつかひとりになった時に
この歌を思い出しなさい
どんななぐさめも追いつかない
ひとりの時に歌いなさい
おまえより多くあきらめた人の
吐息をつづって風よ吹け
おまえより多く泣いた人の
涙をつづって雨よ降れ ・・・・・・ ♪」 (中島みゆき)
「Patricia Kaas -Juste une chanson」


















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