TVを観ていたら、「ノーベル文学賞に日系人のカズオ・イシグロ氏」というテロップが流れてびっくり。確かに「カズオ・イシグロ」氏は素晴らしい作家であるが、ノーベル文学賞を受賞するとは、思ってもみなかった。しかし、うれしい限りである。
このブログで、彼を取り上げたのはいつだったろうか。前のブログを繰ってみたら、2009年8月10日の記事、「読むJAZZ(7) ~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語~ 」が最初のようである。
『ずっと気になっていたひとりの作家、「カズオ・イシグロ」。その名前からして日系の作家であることは容易に察せられる。この名前が目に留まったのは、彼が、わがジャズ・ミューズの一人、「ステイシー・ケント/Stacey Kent」が2007年9月にリリースした最新アルバム「市街電車で朝食を/Breakfast on the morning tram」にタイトル曲を含め4曲の詩を提供していたからである。 ・・・(中略)・・・ 「二人の愛を確かめる旅にふさわしいのは北極よ」と誘う「アイス・ホテル/The Ice Hotel」、「傷心のあまり眠れなかった朝を迎えるには朝の路面電車で朝食をとることが一番」と歌う「市街電車で朝食を/Breakfast on the morning tram」など。ステーシーが語るように、良質の短編小説を読むような感性豊かな情景が拡がる。』
そんな記事であった。その後もジャズ歌手、「ステイシー・ケント/Stacey Kent」に詩を提供したことで、何回か取り上げたことがある。(参照拙ブログ「立春の朝に」、「とどろく爆音に ・・・」、「元気が出る朝の食卓」 など)
彼の経歴や作品については、新聞などに詳しく報道されているから、そちらに譲るとして、「ステイシー・ケント」に提供されたいくつかの詩のうち、「アイス・ホテル」と「市街電車で朝食を」を紹介しておきましょう。
市街電車で朝食を
ステイシー・ケント / EMIミュージック・ジャパン
Breakfast on the Morning Tram
Stacey Kent / Blue Note Records
【 The Ice Hotel 】 作詞;Kazuo Ishiguro 作曲;Jim Tomlinson
「♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Let’s you and me go away 二人で行きましょうよ
To the Ice Hotel アイス・ホテルへ
They’ve built it all with ice that’s pure and clear 透明で純粋な氷で造られているの
The sofas, the lobby ソファーも、ロビーも
Even the chandelier シャンデリアさえも
A thermostat guarantees 温度は常に
A steady minus 5 degrees マイナス5度に保たれていて
What other place could serve our needs so well 私たちのニーズに叶う所は他にないわ
Let’s you and me go away 二人で行きましょうよ
To the Ice Hotel アイス・ホテルへ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ♪」
「Stacey Kent & Kazuro Ishiguro’s ‘The Ice Hotel’」
【 Breakfast on the Morning Tram 】
作詞:Kazuo Ishiguro 作曲:Jim Tomlinson
「♪ So here you are in this city この街に佇んでいる そうあなた
With a shattered heart, it seems こころを閉ざしているように見えるわ
Though when you arrived この街についたときから
you thought you’d have ずっと夢で考えていたような
The holiday of your dreams 休日を過ごせるなんて思っていた
You’d cry yourself to sleep if you could できることなら泣きながら眠ってしまいたいと
But you’ve been awake all night しかし残念ね 一晩中起きていたんでしょ
Well here’s something that you need to do 何が必要か教えてあげようか
At the first hint of morning light 夜が明けてしなくてはならない最初の事を
Walk right across the deserted city まだ誰もいない街を歩いて
To the Boulevard Amsterdam アムステルダム大通りへ行き
And wait there しばらく待ってなさい
For what the citizens here この街の人たちがこう呼ぶ
Refer to as the Breakfast Tram 「ブレックファスト・トラム」を薦めるわ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
And even though you’re a stranger 初めて訪れた土地にもなのに
They’ll make you feel 街の人たちは
Right at home 家にでもいるように心地よくさせてくれる
They’ll be offering to refill your coffee コーヒーのおかわりを注いでくれたりして
They won’t have you sitting there alone 人々はあなたを一人で放って置きはしない
’Cause they’ve seen many others just like you あなたのような人は大勢見てきたから
And each one of them has had it happen too みんな同じようなことを経験している
So just enjoy your fresh croissant and jam さあ、クロワッサンとジャムを楽しんで
And don’t neglect the Belgian waffles ベルギー・ワッフルも忘れないで
You’ll soon forget your troubles 食べれば、悩みなんかすぐ消えるわ
When you have breakfast on the morning tram 朝の電車で朝食をとれば ♪」
「Stacey Kent – Breakfast on the Morning Tram」
もうひとり、毎年ノーベル文学賞の候補に上がるのが、元ジャズ喫茶のオヤジにして、ジャズに関連した著書も多くある「村上春樹」。(参照拙ブログ 「読むJAZZ(2) 或いは読みたいJAZZ ~村上春樹の世界~ 」、「読むJAZZ(12) ~村上春樹の音楽観~ 」 など)
そうそう、「カズオ・イシグロ 」氏が最も関心のある作家は「村上春樹」だそうで、彼とロンドンであったときは、専らジャズの話をしていたと、あるインタビューで語っている。なんと「カズオ・イシグロ 」もご同様の御仁であったのだ。来年こそは ・・・。
さて、小説以外の私のお気に入りの「村上春樹」の本は、彼がお気に入りの曲を自らの訳詩とエッセイで紹介した本、「村上ソングス」。
村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)
村上 春樹 / 中央公論新社
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