プレミアムエイジ ジョインブログ
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不覚の涙

F氏に罵倒され、そのことに逆切れして、そのまま会社から帰って来てしまった日は、金曜日だったので、翌土曜日曜は会社が休みだった。

その2日間は、そのことを考えないようにしても、どうしても頭がそっちの方に行ってしまう。カミサンは「どうかしたの?会社で何かあったの?」と盛んに聞くので、「何でもない。仕事が旨く行かないだけだ」と少しだけ情報を伝えるに止めた。カミサンも心配なのだろうがそれ以上聞くのは我慢したようだ。

直後は、僕も腹に据えかね会社を辞めようと思ったものだが、このまま言われっ放しで引き下がるのも悔しいという思いが強くなっていた。自然と「どうしたら入力ミスは減るか」をああでもないこうでもないと考えては、「いや、もういいんだ。やるだけのことはやったんだから」と思考を止め、暫くしてはまた考え出すという繰り返しを2日間続けた。食事中でも、風呂に入っても。

考えが纏まらない内に、月曜の朝が来てしまった。「俺は今日会社に行くのか?行かないのか?」「辞めるならそれを伝えに出社する日になるんだぞ」。自問自答。しかし、自分の中では明確に決めた訳ではないものの、多分、これから通勤電車に乗って会社に着くまでには、「仕事を途中で放り投げて辞めるのは男らしくない、曲がりなりにもケリを付けてから(喩え失敗は失敗でも正式にその結論を出してから)辞めるべきだ」という結論になるだろうことを予感して家を出た。それでも迷ってるなら途中で引き返せばいい。

会社に着くなり、先輩のNさんが「神童!ちょっと」と言って、小部屋に僕を呼んだ。「この土日、俺やHさん、Mさん、それにKさんがFさんから会社に呼び出されてな、今神童がやってることがピンチを迎えているから、お前等も知恵を出せってね。大した知恵は出ないんだけどさ、ここに纏めておいたから参考にして貰えればいい」と。「え!これ、2日間論議された纏めですか?」と僕。「何せFさん、知恵出すまで帰さないと言うんだ。結局土曜の夜は徹夜になっちゃって。参ったよ」。

僕は思わずNさんに「スイマセン」と深々と頭を下げた。「おっと、ホントに大したアイデアが出た訳じゃないんだから、やめてくれ」。僕は、自分のことで先輩達に迷惑を掛けてしまったという思いで胸が締め付けられた。

Nさんは「今日Fさんは出張で一日いないので、それを俺から君に渡すように言われたんだ」と言ったあと、更に付け加えた。「それから、俺達にな。お前等は神童の先輩だろうが、先輩なら先輩として、神童を絶対に孤立させるんじゃない!って、Fさん強い調子で言ってたよ」。

不覚にも僕はNさんの前なのに涙が滲んでしまった。昭和56年の初夏の頃だった。

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