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試作品第三号

「神童!お前は1人じゃないぞ。全員でおまえをサポートする」とのF部長のメッセージを、先輩のNさんから間接的に伝えられ、僕のFさんへのわだかまりは完全に氷解してしまった。多分、Fさんの口から直接伝えられるよりも、僕にとっては遙かに素直に受け止めることが出来た。何せこの騒ぎに巻き込まれた人(Nさん)の声を通じてだったから、第三者の証言のように真実の言葉として僕の心を打ったのだと思う。

僕は早速、S君にも声を掛け、「営業店事務オートメーション化チーム」を召集し、入力ミスを劇的に減らすために、今までのシステムをチャラにして、もう一度、一から作り直すことを宣言した。

この会議には、事の成り行きを心配したメーカーのSEのKさんも参加してくれた。彼はプロジェクトの最初から参加してSを助け、ミニコンのOSを一緒に作ってくれた実力者だ。この「事務システム開発」のピンチに際して、彼の参加は心強かった。嬉しかった。先輩達が考えてくれた対策も参考にしながら、早速僕は前回の実験データを詳細に分析させ、何かエラーのパターンはないか調べさせた。

その結果、前回「項目番号+項目内容」の入力方式に変え、項目番号にCD(チェック・ディジット)を付けても、相変わらず項目番号の入力誤りが多い。それも、入力原票が、何行にも亘る縦横の表形式のもので、かなり狭いスペースに無理やりレイアウトしたような細かな帳票の入力に間違いが集中している。表の各マス毎に項目番号がふられているのだが、入力担当者は一行上とか下の項目番号を間違って打ってしまうケースが多いことに気が付いた。これでは番号にCDを付けてもコンピューターは間違いを認識出来ない筈だ。

プロジェクト・メンバーと相当激しい議論をした結果、帳票の中の表形式の項目については、「項目番号+項目内容」の入力方式はそぐわない、そういう箇所だけは、原票のイメージの通りの画面を作って、画面上の該当の欄に入力して貰う方式に戻さざるを得ないとの結論となった。その他幾つもの改善を盛り込んで、試作品第三号は1ヶ月で完成した。正に突貫工事、その間、殆んどのメンバーは会社に泊り込み、家には1週間に1~2度帰れば良い方だった。

今度は、試作品第二号のシステムも保存しておき、全く同じ入力原票で、第二号での入力、第三号での入力、それにプロのパンチャーによる入力の3者比較を行った。結果が出る瞬間は、正に神に祈る心境だ。「人事を尽くして天命を待つ」。この言葉が、この時ほど相応しいと思える場面はなかった。

結果が出た。試作品第三号は、遂に!遂に!遂に!プロのパンチャー並みの水準という結果が出た。試作品第一号の時から入力実験を都合3回も行い、その全てに参加してくれた八王子支店や、パンチャーに心から感謝した。

そして3回の作り直しにも拘らず、よく投げ出しもせずに、最後まで僕に付いて来てくれたプロジェクト・メンバーとは抱き合って喜び、その夜は久し振りに街に繰り出した。勿論僕の奢り。ここ数ヶ月は小遣いも残業代も使う暇さえなかった。だからこの夜は大盤振る舞い。

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