先行本番開始
この原票計上システムとそれにリンクした会計システムをセットにした営業店事務の「分散型オンライン・システム」を、いよいよ実際の営業店3店舗で先行稼動させることが決まった。3店とは八王子・立川・小金井の各支店である。
とは言え、まだその時点のシステムは、事務のコア(中核)部分のみだから、予定している内容全体からすれば、まだほんの一部だったが、営業店にすれば、事務の大変革となる部分なので、数店で良いから早く本番実施して、実績を積み重ねながら改善に改善を重ねることになっていた。
一方、Sがリーダーを務めて開発して来た「制御システム開発チーム」も、3店舗での先行実施を目指して、必要最低限の機能は全て用意すべく、突貫工事により間に合わせた。本番当日、僕は店側に張り付く責任者となり、Sには、コンピュータ・センターに残って、不測の事態に備える責任者になって貰った。
事務システム開発側と制御システム開発側から夫々1名、事前にこの新事務システムのオペレーション教育を受け、現地指導に当たる女子社員1名の各店3名の編成で、昭和56年8月1日、現地に飛んだ。Fさんは僕に「爽やかな印象を残して来い」と言って送り出してくれた。
僕は立川支店を担当することにした。八王子支店はもう何回も行き来して、新事務システムもかなり理解して貰っていたが、立川支店は初めてなので、初日と二日目は、レクチャー、実技研修、質疑応答など、特に事務を行う女子社員に新しい事務の全体像を理解して貰うことに重点を置いた。
最初の内は、実際の事務も、システム部門から指導員として派遣された女子社員が自ら行なって見せ、事務員の理解を深めて行った。1週間も経つ頃には、事務員もテキパキとは行かないまでも、何をどうすれば良いのか理解が出来たらしく、少しずつ慣れて行った。
システムの初期故障も含め、様々な問題も発生したが、各店とも概ね好意的に協力してくれた。この現場への張り付き対応は、月末の量的ピークを乗り切り、月末締切処理(月締)というマンスリー処理が終る9月初めまで行われた。この間に、突然、社長が立川支店に僕等のシステムを見に来たのには驚かされた。
僕等はシステム作りと新事務の定着に全精力を注いでいたので、経営者がこれをどう見ているかなんて、全く考えたこともなかったが、会社にとっては一大改革になる取り組みだから、最高責任者が現地を視察するのは至極当然のことなのかも知れない。
説明役は僕がやるしかなかった。途中、社長が支店長に「君はこのシステムを理解出来たのかね?」と質問され、支店長が困惑気味だったのが印象的だった。


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