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エピソード(2)

昭和58年の暮、あるコンピューター・メーカーにミニコン300台、端末1,000台を発注し、両社間で正式契約書も締結し終えて暫くした頃、そのメーカーの営業部隊の責任者ではなく、経理財務部門の担当役員がFさんを訪ねて来た。

僕も同席するようにFさんに言われたので2人で出迎えた。先方はお1人で来られた。そのメーカーの役員さんのお話の趣旨は凡そ次の通り。

「沢山のミニコンと端末機を弊社に発注して頂いたのは、会社としては大変有難く喜ばしいことである。しかし、弊社はコンピューター・メーカーとして、ただ売れれば良いと言うものではなく、売った責任というものがある。今回、製造業でない御社のような金融機関から大量のミニコンを発注頂いたが、どんなことを始められるのか、そして、それが本当に大丈夫なのか、大変ぶしつけながら、弊社の営業には内緒で確認のためお邪魔した」ということの様だった。

僕は「ヘー」と思った。コンピューター・メーカーも大したものだ。売る側の責任というものをちゃんと心得ているんだと初めて知った。しかし、こんなことは初めてだから、多分、当社側の計画が無謀過ぎるという危惧を持ったからこそ訪ねて来たに相違ない。

さて、これに対してFさんはどう答えるのか。「当社のような業界大手でもない会社が、ミニコンなんぞを使って、変わったオンライン・システムを造ると言えば、そんな実力があるのかと心配になるのは、至極当然です。お考えの通り、これはとても当社だけでやれる筈もありませんから、以前からずっと共同開発のパートナーシップを結んでいる、N社の指導を受けながらやって来ていますので、多分ご心配の点はクリアーしていると思っております」とFさんは言われた。

半分本当で半分嘘。N社は日本の金融機関で始めてオンラインを成功させた実績を持ち、当時、日本を代表するオンライン・システム構築のプロ集団だった。N社とは確かにパートナーシップを結んでおり、昭和50年の、第一次オンラインはFさんの言われる形で、N社の指導と支援を受けて構築したのだった。そして、パートナーシップはそれ以降今も続いている。

しかし、この第二次オンラインとも言える、分散型オンライン構築には、N社は1人も加わっていない。謂わば僕等単独の挑戦なのだから、この点では嘘なのだ。

しかし、Fさんの答えに全ての危惧は吹き飛んだようで、このメーカーの役員さん、急に笑顔になって、暫く雑談の後、納得顔で帰って行った。

Fさん、僕に一言、「嘘も方便だな」。「メーカーに対するN社の威光は凄いですね」と僕。「俺達のやろうとしていることが、いろんな意味で注目され始めたということだろうよ」。

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