人生の師(完)
部下から見れば、後を継いだ僕はどう見てもFさんより見劣りする。こういう場合、本当に集団を率いて行くのは大変だ。部下の中には「神童でなく俺の方が後継者に相応しい」と思う人間も現われて、いきなり僕の指導力や統率力・マネージメント力などが試される場面となってしまったのだ。
悪口流布、疑心暗鬼・分派行動・四分五裂・修羅場・・・。
詳細は省くが、そういう入社以来最悪の苦しい時期を何とか乗り越え、平成11年6月末、僕は取締役に推挙された。その時がまた、Fさんの完全リタイアのタイミングと一致した。運命的なものを感じる。
僕は、2年後輩のAと一緒に、Fさんの送別パーティー「感謝の会」を主催した。会場は、以前Fさんが僕等のために、分散型オンラインの完成祝賀会を開催してくれた思い出の「新宿京王プラザホテル」。あれから14年の歳月が流れていた。
ご本人は「感謝の会など柄でない」と厭がられたのだが、「これはFさんのためだけではなく、我々弟子達のこれからの決意の場でもあるのだから」と説得して何とか開催に漕ぎ着けたのだった。
師匠Fさんから沢山の薫陶を受けながら、彼が残した業績をステップにして、大きく発展させることもろくに出来ない不肖の弟子として、せめてもの恩返しの気持ちで気合を入れて主催した会だったが、200人にも及ぶ方々が参加してくれて、盛大な会にすることが出来た。
会の終了後、Fさんは苦笑しながらも、「君らには感謝する。ありがとう」と仰って下さった。僕等にとっての1つの時代が終った。
人生の師(了)


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