他流試合(1)
「好きこそ物の上手なれ」とは言うが、なかなか僕のドラムの腕が上がらない。音楽が好きで、ドラムを叩くのが大好きで、クーペの店で素人セッションをやらせて貰うようになった。そのうちに「クーペ&Shifo」のバックバンドをやるようになった。それから3年以上も経ったが、僕の腕前は最初の頃と殆ど変わりがない。
それなのにクーペは日比谷野音や国際フォーラム・NHKホールなど彼等のヒノキ舞台でも僕らおじさんバンドを懲りもせず使い続ける。クーペ曰く「おじさんバンドは上手くなくていいんだよ。おじさんバンドの持つ空気を観客に伝えたいんだから」。
そうは言っても、僕が大失態を演じて、「クーペ&Shifo」の晴れの舞台をぶち壊してはいけない。コンサート直前には練習にも熱が入る。しかし、コンサートが終わってしまえば、再び緊張感もなくなり、元のレベルに戻ってしまう、という繰り返しだった。
「上手くなくていい」と言い続けてくれていたクーペが、4月のNHKが終わった後僕に、「3年以内に絶対にニューヨークのカーネギー・ホールに行く。ジャズの本場でコンサートをやる訳だから、神童さんもちゃんと習いに行ってドラムの腕を上げてよ」と言った。
しかしこの僕は、学校卒業後、誰かから何かを習うという経験を全く持たない人なのだ。ゴルフ然り、スキー然り、ドラム然り。見よう見まねでやって来た。上手い人のやり方を盗みながら勝手に練習して何とか習得するというやり方だ。若しかしたら仕事だってそうだったかも知れない。
だから、僕には教わり方というのが分からない。ゴルフ練習場などで、プロに教わっている人を見掛けることが多いが、生徒の方が実に旨く先生を乗せている。愛想も良くて質問も的を射ていて、先生が自ずと一生懸命になるように持って行っている。
僕にはそんな芸当は出来ない。だが一方では、自己流だから一定のレベル以上にはなれないのかも知れないとは思う。そこで何か方法はないかと考えてふと思い出した。他流試合で鍛える方法だ。
僕の大学の時のバンド仲間のAが、月一回位のペースで都内あちこちのライブハウスでサックス演奏をやっている。彼は四日市の食品会社の社長さんで、普段はそちらに住んでいるのだけれど、毎月2~3日、東京の会合で上京する。その時に、知り合いのプロのジャズメン達とセッションしているのだ。
そうだ。そこでプロの演奏を聞かせて貰ったり、馴染でないお客さんの前でAやプロと一緒に緊張感溢れる演奏をさせて貰おう。2年前、一度だけ六本木で同じメンバーに僕も加わってセッションしたことあるからAに頼んでみよう。


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