他流試合(2)
学生時代のバンド仲間のAに電話したら、何と3日後にJR東中野の駅の近くにある「DRUM」という名のジャズの店でやることになっているから、是非来てくれと言う。店の名前の由来を聞くと、昔、有名ジャズバンドで活躍していた70歳近いドラマーがやってる店だからそういう名前になったのだそうだ。
新宿から総武線で2駅だったら、僕の町からも40~50分で行けるから「必ず行く」と約束をして電話を切った。現地に夜7時集合。
Aとは以前クーペの店でセッションして以来だな。その時、Aはジャズがものす凄く上手くなっていてとてもビックリしたっけ。その前は確か、彼が東京から四日市に赴任する前、六本木のライブバーで、今回も一緒にやらせて貰うプロ・ピアニストの坂口さん達の中に入って僕らも演奏させて貰ったなぁ。
高いお金払ってジャズを聴きながら旨いバーボンを飲もうとやってくる、耳の肥えた客の前でど素人がやる訳だから、そらー緊張しますよ。だけど、六本木の店の主もよく我々の飛び入りを許してくれたものだと思うね。
だって、最低でもお客さんは1万円は払って帰る店だよ。尤も僕らも当然払って演奏したんだけどね。演奏を始めると思いの外、お客さんも好意的で、手拍子なんかで合わせてくれる。当然1曲だけのつもりだったが、酔客が「アンコール!」と言ってくれたお蔭で2曲もやらせて貰った。怖いもの知らずと言うか図々しいと言うか、良くやるよ。
Aはそういう所で演奏するのは慣れているが、僕は正直、ドキドキしたり縮んだりするので、本当はそんな場所でプロ達と一緒にやりたくはないけど、今の僕には修行が必要だ。今回は僕の方からAにお願いをしたのだ。
今日の修行の場所は、東中野駅を降りて直ぐ目の前に走る環状6号線に面した所にあった。「DRUM」は地下一階だった。店に入ったら正面にAが待っていてくれた。


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