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他流試合(6)

最初僕はブラシでフォービートのリズムを刻んだ。Aがリズムに乗ってメロディー・ラインを吹く。覚悟を決めて始めてしまえば、この「バイ・ミア・ビスト・ドゥ・シェーン」は、店で良くクーペが歌う曲でもあったから、いつものようにやれば良いので、幾らか精神安定剤の役割を果たしてくれた。

さあ、いよいよAのサックスによるアドリブが始まる。僕はここからブラシをスティックに持ち替えてライド・シンバルとスネア・ドラムを中心にスィングのリズムで進む。

僕の直ぐ隣にプロのベースマン秋元さんがいてくれるので、僕はベースの音を聞きながら、それにシンクロさせるようにドラムを叩けば良いので、リズムが狂う心配もなく、徐々に楽しくなって来た。

アルト・サックスのアドリブが終わり、会場から拍手が来た。その拍手もおざなりの社交辞令的拍手じゃなく、驚きと称賛の拍手なのだ。Aはプロじゃないのに凄いよと言った観客の表情。

次に坂口さんのピアノのアドリブが始まった。彼も弟子のAが素晴らしい演奏をしたから気持ち良さそうだし、乗りに乗って演奏している。坂口さんのアドリブが終り、ベースのアドリブが終わり、さて、このあとはサックスの主旋律に戻るのだろうと思ったら、坂口さんが僕に4本指を立てて合図を送って来た。

4バース。ピアノとドラムを交互に4小節ずつアドリブを繰り返すという合図。予想もしていない展開だったから僕は焦った。

でも、僕には大したテクニックがある訳じゃないから、ドラム・ソロのバリエーションの豊かさよりも、4小節を正しくアドリブすることに集中した。心の中で「イチ・ニ・サン・シ」「ニ・二・サン・シ」「サン・ニ・サン・シ」「ヨン・ニ・サン・シ」と数えながら。

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