他流試合(7)最終
やっと僕等のアドリブが1コーラス終わり、サックスの主旋律に戻るだろうとホッとした。が、坂口さんはアドリブを止めない。もう1コーラス、ピアノとドラム交互のアドリブをやるぞと目が言ってる。
しかし、僕の集中力はそんなに続かない。益して、まさか2コーラスもやると思ってないから意表を突かれ、スタート・ポイントが分からなくなってしまい、1コーラス目のようには正しく数えられない。もうこうなったら適当にやるしかない。案の定、最後の方はきっかり4小節で終われなかったり、早く終わり過ぎたり。
それでも、僕のアドリブが全部終わったところで、お客さんが拍手をくれた。これはAのと違って社交辞令的だ。冷や汗を掻きながらも「バイ・ミア・ビスト・・・」が終わり、休憩に入った。僕とAは自分達の席に戻った。正直、緊張疲れも手伝って汗だくだ。
暫くして坂口さんが僕らのテーブルにやって来た。「神童さん、2年前より凄く良くなってるね。その調子ですよ」「いやー、すいません。最後の方、カウントも出来なくなってしまって」「そんなことどうでもいいんですよ。楽しんでやってたから」。坂口さんの気遣いの言葉と、一緒にセッションさせて貰ったこと両方に「ありがとうございました」。
そしたら坂口さん、「それで、次のステージの頭で2曲ほどもう一度やりましょう」と言ってくれた。第2部は、Aと僕、坂口さん、秋元さんの4人でスタート。「ミスティー」と「枯葉」の2曲を演奏した。「ミスティー」はブラッシングで通し、「枯葉」は「バイ・ミア・・・」と同じく、途中から4ビートで参加。再び4バースのドラムとピアノの掛け合い2コーラス。今度は何とか全部カウント出来たと思う。坂口さんありがとう。
帰り際、坂口さんは、「ドラム・ソロ、もっと思い切り叩いた方がいい。遠慮なんか全く要らないから。そうすればもっともっと良くなりますよ。来月もう一度ここでやりませんか?」と言ってくれた。プロに言われると嘘でも嬉しいものだ。
勿論、僕はAと坂口さんと来月またここで再会することを約束し、「DRUM」のマスターで、プロドラマーの三戸部さんには、大事な商売道具のドラムセットなのに、僕のような素人に叩かせてくれたことを感謝して店を出た。勿論、3曲分1,500円の追加料金(客が歌ったり、飛び入り演奏すると1曲当り500円也)を支払って。
胃が痛くなるような緊張感があったけど、何となく気分が良い。やっとジャズの入口に立てたような気がした。あと何回か一緒にやらせて貰えばコツを呑み込めそうな気がする。
他流試合―了―



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