嘘みたいな話
7月下旬のパルテノン多摩で行った「クーペ&Shifo の心に効くコンサート」に来てくれた友人にN君がいた。
彼は、僕が定年退職した後、完全リタイアし再就職もしないでブラブラしてるのを心配し、システム経験を活かして彼の仕事をシステム面で助けて貰えないかと、仕事に復帰することを僕に勧めてくれている人だ。是非とも彼の会社の社長に会ってくれと言う。
しかし、40年近く自社のシステムに従事し、後半は会社に対してシステムの全責任を負うという仕事がどれだけキツイものかは、身を持って経験しているだけに、一旦、そういう世界から引退を決意し、その緊張感から自身を心身ともに解放してしまった後では、簡単に戻れるものではない。
覚悟するのに必要な時間を貰うということにして、結論を先送りした。その場でキッパリ断らなかったのには、人に言えない恥ずかしい理由があるのだ。
それは、今まで毎朝決まった時間に家を出て会社に行ってたのが、このところ朝も家にいるし出掛けるのは早くて10時過ぎ。自分で言うのも憚られるが、どちらかと言えば年齢より若く見えるので、近所の人には定年退職とは見えず、リストラされたと思われてるんではないかという懸念があったからだ。
くだらない理由、周りの目を気にしなきゃ良いだけの話。分かってはいるけど家の周りの目は意外と気になるもの。24時間四六時中だから。
そのN君が、僕等のライブのことを知って、是非行きたいのでチケットを送って欲しいと言って来てくれたのは、ライブの1週間前だった。その時、このライブの4日後に結論を伝えるべく、彼と会うことにした。
ライブが終わって、いよいよ彼に答えを伝えなくてはいけない。新宿のとある喫茶店に向かった。彼が既に来ていた。コーヒーを注文して、先ずは、ライブに来てくれた礼を言ったり、彼の感想を聞いたりした。N君は相当気に入ってくれた模様だ。
元々彼は、昨年「クーペ&Shifo」のライブを見て、彼の後輩に当る「ビクター・エンタテイメント社」の社長を紹介したいと申し出てくれたことがあったが、その時「クーペ&Shifo」は既に「テイチク」からのデビューが決まっていたので、話はそれ以上は進まなかった経緯がある。
その彼が今回は何と、おじさんバンドだけでも、ビクターに話を持って行きたいと言うのだ。嘘みたいな話。「おじさんバンドの何がそんなに良いと思ったの?」と聞いたら、「キル・ミー・ソフトリーのボーカル、あれは凄くいいよ。ピアノ、クラリネットもいいし」との答え。ドラムは?コンガは?タンバリンは?聞けなかった。
しかし、こちらは冗談半分だと思っているから、「まさかビクターがそんな話には乗らないだろうけど、気持ちは嬉しい」と応じたら「じゃぁ、本当に話持ってっていいんだね?」とマジに聞き返す。それにはこっちが慌てたね。
「オジサン達、みんなチャンとした仕事を持ってるから、芸能界みたいなところに顔を突っ込む訳には行かないのよ」と私の一存で断った。
そして、彼の持って来てくれた折角の仕事の口もお断りした。彼の好意を2つとも無にしてしまった。これでは人の道に反する。よし、ボランティアで彼のシステムを助けよう。


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