頑張り過ぎは罪3
客観的に見てAの不満は半分的を射ている。サブリーダー達は優秀なSEなのだから、その気になれば問題解決策の一つや二つ考えられる筈なのだ。
Aのプロジェクト運営方針がどうであれ、サブリーダーたる者、そういう時こそ力を発揮するのが役割だ。どういう状況でもしっかりした仕事をするのがプロというもの。だから、メンバーが力を100%発揮していないとAが言うのも、あながち間違いではない。
しかしだ。Aの方が彼らよりも力があると目されたからこそ、この重要プロジェクトを任された筈だ。であれば、この時期に予測不可能な問題や、様々な考慮漏れが発生し、チーム全体が多忙を極めることはAが一番分かっていた筈なのだ。
それを予測出来ていなかったとすれば、「自分がリーダーをやる限り絶対にそんな事態にはならない」と思う、余程うぬぼれの強い奴か、「そんなこと考えたこともない」という能天気な奴かのどちらかだ。
Aはその時期に備えて、少なくともサブリーダー達に権限委譲をして彼等に責任を担って貰っておくべきだった。A一人ではとても追い付かないからだ。Aは最悪に備えるという発想が根本的に欠けていたと言うべきかも知れない。
プロジェクトがニッチもサッチも行かなくなった最悪の状況を切り抜けられるとすれば、それは「何としても遣り遂げる」という執念なのだ。その執念・執着は一人リーダーだけが持っていたって大したパワーにならない。プロジェクト・チーム全体の執念や目標達成意欲が、自主的・主体的アイデアを生み壁を乗り越えるパワーとなる。
Aは計画の最初から、執念作りに失敗した。全て自分一人で考え細部を決めて来たので、参加メンバーにとっては、今作ろうとしているシステムが自分の作品だという感覚を持てないまま推移してしまった。Aの頑張り過ぎが招いたチーム全体のシラケと言える。
人々の心に火を着けるのがリーダーなのに、火を消してどうする。Aの上司であるK次長が動いた。鼻っぱしの強いAにプロジェクトを任せたものの旨く行っていないことは分かっていたらしい。それでもかなり我慢して見守っていたが、計画遅延が明らかになるに及んで、これ以上Aに任せておけなくなったのだ。
KはまずAと話した後、サブリーダー層から現状認識と問題点を次々と聞いて行った。サブリーダー達の意見が完全に一致しているのは、残りの期間でシステムを完成し稼働させるのは不可能という点だ。一方Aは、簡単ではないが期限は守れると言う。Kにはその根拠が見えない。
より重要な問題は、全ての権限と情報はAに集中し過ぎて、サブリーダー達が全貌を捉えにくく、互いに連携するということが難しくなっていることだ。言い換えれば、リーダーのAとサブリーダー層との間には決定的とも言えるコミュニケーション不足があり、もっと言えば心の離反が起きてしまっていることだった。これではとてもピンチを切り抜けられない。
事ここに至ってKは、Aを外して自らがリーダーを務めることを決意し、経営陣に罵倒されながらもスケジュール延長の了解を何とか取り付け、当初より3か月遅れながら完成に持ち込んだのであった。
頑張り過ぎは罪-了-


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