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音楽の力(5)

兎に角驚いた。番町小学校→麹町中学→日比谷高校→東大法学部という、典型的なエリート・コースを歩んで来られたAさんが、彼とは全く別世界の人達と、それも見ず知らずの人達と瞬間的に仲良くなってしまうAさんの人間の大きさを見た気がしたからだ。彼の気さくさ。規格外の気さくさ。僕は一発で彼を好きになった。

その後、Aさんはシステムを離れ、北海道の営業本部長などを歴任され、7年前、遂にX社の社長にまで上り詰めたのであった。

たまに当時の7社プロジェクトのメンバーとは会うが、一番会いたいと思うAさんはもう雲の上の人になってしまって、お会い出来るような存在でなくなってしまった。もう13年も前のことだし、超多忙なAさんだから、既にそんなことは記憶の彼方に消えてしまっていることだろう。

そのAさんが、今、X社園遊会のメイン・ステージの上で会長挨拶をしている。テレビや新聞でお顔は良く見掛けていたが、実物を見るとやはり昔とは違いお年を召された感じがした。

激動の時代を大会社の社長として指揮し、次々と起きる難題に直面してそれを乗り越えて来られたのだから、その苦労が外見に現われても何ら不思議はない。大変だったんだろうな。

でも僕は、こうして大勢の参加者の中で遠くからAさんを眺められただけで、今日、ここへ来た甲斐があったと思った。

次にB社長の乾杯のご発声があり、夏祭りが始まった。あの方がBさんか。Bさんは新聞などで知っているだけで、この時初めて見た。

さあ、僕等が演奏を始める番だ。4階のホールに上がったら、「クーペ&Shifo」、コーラス隊、他のおじさんバンド・メンバーが全員揃っていて、僕が最後だった。みんな律儀だなぁ。しかし1階でセレモニーが終わったばかりだから、観客がまだほんのチラホラしかいない。

演奏は6時スタート予定だったが、もう少し人が集まってから始めることにして、少し待っていたらどんどん席が埋まって行く。7割がた埋まったところで、10分遅れて漸く演奏を開始した。

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