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音楽の力(7)-最終-

私を真っ直ぐに見ながら、笑顔を浮かべて近付いて来られる。「あっ!Aさん!」。僕は思わず声を出してしまった。彼は右手を伸ばしながら「神童さん、ドラム格好良かったですよ」と言ってくれた。Aさんが僕のことを覚えていてくれた!

思わず僕はその手を強く握り返した。「大変ご無沙汰しております。今はシステムを離れて、こんな活動をやっています」。「素晴らしいことじゃないですか」。「ありがとうございます」。

丁度「クーペ&Shifo」が静かな曲を演奏中だったので、大きな声を出す訳にも行かず、2言3言会話した後、Aさんは「音楽頑張ってください。じゃぁ、またいずれお会いしましょう」と言って去って行かれた。

ひそひそ話のような会話になってしまったが、まさかAさんが私に会いに自ら足を運んでくれるなんて夢にも思わなかったので本当にビックリし嬉しかった。

友人のX社のY常務さんがお膳立てしてくれたということは簡単に察しられたが、僕はYさんの気遣いに心から感謝すると同時に、もし、こういうこと(再会)になるなら、社会的地位の遥か上の人に対しては、僕の方からご挨拶に伺うのが常識だと思い恐縮しきりだった。

だが、あれ程偉くなられたAさんが、あの当時のままの気さくさを今も持ち続けておられることが、僕は一番嬉しかった。

そして思った。今、もし僕が音楽活動をやっていなかったら、YさんからX社の夏祭りに呼ばれることもないし、A会長さんに13年振りにお会いすることもなかったと。

「クーペ&Shifo」のバックで本格的にドラムをやるようになってまだ3年半しか経っていないが、その間、クーペの身の周りには奇跡と呼ぶしかないことが次々に起きているが、僕の周りにも普通じゃ有り得ないことが起きた。音楽の力を信じない訳には行かない。

B社長は「クーペ&Shifo」のステージを最後の最後まで聴いて下さった。特にラスト・ナンバーの「どっちでも不思議」の時は身を乗り出さんばかりに真剣に聞き入っておられるのが傍目にも分かった。

それが終わると立ち上がって、ステージ上のクーペとShifo夫々に握手をして2人を讃えて下さった。私もB社長にご挨拶させて頂いて「とても良かったですよ」と言って貰えた。

僕は大満足でB社長をお見送りした。そしてB社長さんが僕の視界から消えた時、大事なことを思い出した。

いっけねぇ!肝心なことを言い忘れた。「クーペ&Shifoの曲を是非御社のCMに使って下さい」って。これが本当の、「あとの祭り」だぁ・・・。仕方ない、Yさんに甘えてもう一つだけ最後のお願いをしよう。僕からB社長への大事な伝言を。

音楽の力―完―

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