文化の貧困
別のバンドの知人がいる。彼は一部上場企業の部長さんだ。今大変悩んでいる。彼の会社は昨年夏以降のアメリカの景気後退の煽りを受け、輸出に急ブレーキが掛り、会社全体が大変な状況らしい。
彼の悩みは、担当役員から「会社がこういう状況の時、のん気にバンド活動なんかやってる場合か!他の社員へのシメシが付かないからやめてくれ」と言われたことだ。言外にバンド活動を続けるなら部長を降りて貰うというサインだったそうだ。
それまで彼は会社名も隠さず部長であることも明らかにして音楽活動をして来た。それが少しでも会社のメージアップになると思ったからだ。何年も続けて来た活動だから周囲にも浸透し理解してくれていた。
また、歴代の上司から一度もそれをノーと言われたこともなく、寧ろ理解をしてくれていると思っていた。
益して、彼は部長として、会社業績が落ち込む中、相対的に他の部門より頑張って来ているという自負もあり、趣味が仕事に悪影響を与えているなどとはつゆ程も思っていない。
だが、一旦会社の経営状況が悪くなると、役員から平社員まで皆が眉間にしわを寄せていないと、あいつは危機感のない奴と見做されかねない雰囲気になる。それが連帯意識の強い日本文化の特徴だろう。
会社を離れたプライベートな時間でも、破廉恥行為や法律違反を犯すとそれはやはり会社の名誉を傷付けたとして処分対象になることはあるが、真っ当な趣味が会社で問題になるなどと聞けば欧米のビジネスマンは目を剥くことだろう。
僕は彼にアドバイスをした。「私のバンド活動を禁ずると言う事は、プライベートの時間、一切の文化活動を禁止すると言うことだから、当然あなた方役員や社員のプライベート・ゴルフも禁止するということですね?って質問しろよ」と。万一、ゴルフは良いけど音楽はダメなどと言うなら言語道断。ゴルフと音楽の何が違うのかと更に質問しろと伝えたのは当然のこと。
それにしても、仕事で失敗したから部長を降りろと言うのならまだ納得出来るが、プライベートの時間、音楽をやるなら部長を降りろとは。経営危機を招いたトップの責任を置いといて、社員の趣味を槍玉に挙げるなんて、無節操な八当たりではないか。
いやはや、一部上場大企業の「文化の貧困」ここに至れりだ。いや、日本は戦後から今日までずっと「貧困の文化」から抜け出せていないか。


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