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メープル街道の旅(15)

ナイアガラのカナダ滝直ぐ近くに停車したバスから、僕等は飛び出すように外に出た。ゴーという物凄く大きな滝の音。水しぶきが小雨のように体に降り注ぐ。僕とカミサンは濡れるのも厭わず、手摺りから滝を覗き込んだ。

そこは丁度滝の真横だったから、大量の水が真下に流れ落ちて行くのが良く見える。この大迫力。勿論下の方は水煙で落ち際まではとても見えないが、思わず引き込まれそう。

僕の右手から豊かな水を湛えて静かに流れて来た大河が、いきなり崖っぷちに立たされてしまい、行き場所を失って勢い良く左手に落下して行く。この荒々しさは、自然が作り出した静から動への巨大なスケールの激変ドラマだ。これを大スペクタクルと言わずして何と言うか。

水しぶきが凄くて雨の中にいるようなもの。ヤッケを着ていても中まで濡れて来そうなので、その場を離れてカナダ滝とアメリカ滝の両方の全貌が見える展望台に上った。ここからは、滝から少し離れているので濡れることはない。改めて眺めると、空は結構晴れていて、滝の近くだけが水煙に覆われている。

そうだ、30年前、僕はこの同じ場所で、Sと一緒にこの同じ滝を眺めたっけ。50日間のアメリカ研修の合間に彼とここを訪れたんだ。あの日は本当に雨だったから、滝の水煙なのか雨なのか判然としないまま、ここから眺めたよな。そしたら親切なアメリカ人老夫婦が、ここでは濡れるから自分たちが泊っているホテルの部屋から見たらいいと僕らを誘ってくれた。

今は近辺に沢山のホテルが建っていて、それがどのホテルだったかもう分からないが、部屋から見たナイアガラの滝の光景は今でも覚えている。親切なあの老夫婦は、確か、70歳を過ぎていた筈だから、今生きていたら100歳を優に超えている。もうこの世にはいないんだろうな。ジョージア州からやって来たと言っていた。死ぬまでに一度ナイアガラの滝を見たかったと言っていた。

僕等夫婦もあと10年もすれば同じような年回りになる。その時、観光地で見ず知らずの外人さんに声を掛け、自分達の宿泊室に招き入れるような親切を行えるだろうかと考えた。そんな余計なこと出来る訳ない。そんな危ないこと出来る訳ない。

その時はそれほど迄に思わなかったが、今考えれば、僕等はあの夫婦に途轍もない親切を受けたんだと思った。あの時と同じ場所で、30年も経ってやっと気付いた。

その後、僕等ツアー一行は、霧の乙女号(遊覧船)に乗って、滝の直ぐ近くまで行った。落ちて来る水の量と勢いと音。その迫力は上から見るのとは大違いだった。前回来た時は雨で乙女号が欠航していたから、今回の乗船で2回目のナイアガラも強烈な思い出となった。

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