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経済小説

皆さんは「楡周平」という作家をご存じだろうか?年齢は私より丁度10歳若いので現在52歳。作家デビューは13年前。慶應義塾大学院を出て外資系企業に勤める傍ら小説を書いたら、いきなりベストセラーとなって、翌年には会社を辞めて執筆に専念し、後立て続けに話題作を発表して来た。

衝撃のデビューを飾った最初の小説が「Cの福音」というハードボイルド。主人公は決して正義の味方ではない。アメリカのマフィアのボスを後ろ盾にする若い日本人だ。輸入管理の盲点をついたコカイン密輸の完璧なシステムを作り上げる「悪のヒーロー」の物語だ。

僕は丁度その頃仙台に単身赴任していて、仕事以外の時間は全部自分の時間だったから本はよく読んだ。それでも、何か気分転換になる本は何かないかと、会社の部下のT君に聞いたら、「今、楡周平ってサラリーマンが書いたハード・ボイルドが売れてるみたいですよ」と言う。「君はそれ読んだの?」「ええ。読み終わったから明日持って来ますよ」。

彼から借りて社宅で読んでみた。2晩で読み終わった。面白かった。ストーリーを紹介するつもりはないが、兎に角「楡周平」が考えた意表を突く密輸システムに感心し、良くこんなこと考え付くなぁ、とただただ驚いたのだ。その後も同じ主人公のシリーズで「クーデター」「猛禽の宴」「クラッシュ」「ターゲット」と間を置かず世に出したから、彼は完全に犯罪小説やサスペンス小説の人と思っていた。

1年ほど前になるか、久し振りに本屋で「楡周平」の新刊を目にしたので購入したのだが、忙しさにかまけてどこかにしまい忘れていた。それが自宅の引っ越しの際出て来たのだ。本の帯や裏表紙には「新世代の経済小説ここに誕生」とか書いてある。「???」。あの「楡周平」が経済小説?同じ人物なのか?買った時確認しただろうって?買ったことも忘れてた位だから、驚くのも無理ないでしょう。

今、僕は友人と元の会社に於いて、得難いある経験、ある出来事を共有している。それを、そろそろ何らかの形で備忘録として残しておこうかという話になった。どうせ残すなら、あまり業務文書みたいじゃなく、経済小説みたいにしようと勝手に話だけは進んだ。

しかし、そういうつもりで書き始めてみたものの素人の悲しさ。ストーリー展開も狭い範囲にしか飛んで行けないし、文章も簡潔でない。読む人をとても引き付けられない。やってみて初めて分かる。小説家って大したもん。

そんな困ってた時に、これを読めと僕の前に現れた「楡周平」。題名は「再生巨流」。面白い。一気に読んだ。会社の中の新規プロジェクト立ち上げと幾つもの紆余曲折の後、遂に成功するのだが、その新機軸の事業がまたとても空想とは思えない精緻な内容で、その推進方法も人々の意表を突く作戦。「楡周平」の頭脳は「Cの福音」のまま。或いはそれ以上に凄い。

参考にはなったが、どうすりゃ良いの?そんなの読んじゃうと無理だよって思っちゃうねぇ。逆効果だぁ。う~ん・・・

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