(続)思い込み
浅田次郎氏の思い込みによる失敗を前回書いた。そういうことなら負けていないよ、と友人のWさん。思い込みの自慢話を披露してくれた。
高校3年になる前の春休み、京都・奈良への修学旅行があった。もう45年も前のことだ。僕等は長野という田舎の高校だったから、それまで聞いたことも体験したこともない事態に直面した。泊まった京都の旅館が洋式トイレだったのだ。
W君、部屋の中のトイレ入った。ただ小便をしたかったのだが、初めて見るトイレの形に驚いた。どうしていいか分らない。小さな図解の説明に従えばいいんだなと思った。ここまでは正解。図には立って用を足すように書いてあった。
まあ、幾らなんでも、蓋は明けるのだろうと思いそれを開けたまでは良いのだが、はてさて、小便はどこを的にすれば良いのか。きっと合理主義者の欧米人が考えたのだから、感心するような仕掛けになっているのだろうと思い、良~く観察すると、今開けたばかりの蓋が「オイ、ここだよ」と言わんばかりに、正面に立っている。
「だったら、弓の的のように三重丸でも付けておいてくれれば良いのに」と思いながら、蓋の中側の真ん中辺を狙ってことに及んだ。W君は、小便は見事にトイレの中に流れ入って行くものと思ったら、両サイドから床にぽたぽたと落ち始めたではないか。
彼は焦りに焦って、中断しようと努力したが、150%に膨らんだ膀胱はそう簡単にブレーキが効かない。それからは的を直接トイレの中に変更して後半は事無きを得たが、前半の失敗はどうやっても取り戻せない。
トイレット・ぺーパーをふんだんに使って、床を掃除したと言うが、大きな大きな世界地図は消せない。そこで、トイレから出るなり「このトイレ、故障しているから、廊下のを使うように」と同部屋の者達に触れまわり、ご丁寧にも「故障中」という張り紙まで貼った。
浅田次郎のエッセーにも出てくるが、洋式トイレに座ってはどうも出が良くないようで、トイレの上に登って両足を台座に乗せて踏ん張る奴の話も出てくる。また、何十年も逆向きに座ってた奴のことも。様式トイレを巡ってはいろんな失敗談があるようだが、本人にとっては大真面目で深刻なのだが、他人の失敗談はとても面白い。
スイマセン。今回は尾籠な話で。W君、折角の話題提供でしたので。


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