初芝居(3)
衣装は特に用意していないという。てことは、各自が自分で考えなくてはいけない。大体80歳過ぎの小人の服装なんて難しいテーマを与えられてもイメージ湧かないよ。
それでも何とかしないと。こういう時はカミサン。最初「アホらし」とか言ってたが、「甚平にセッタ、杖でいいんじゃない?」「なるほど」。
車で近くのドンキホーテに買いに行く。「夏もの大処分」。丁度良い。あった。サイズも良い。柄もステージ向き。上下で980円。やすー。セッタ、杖全部で2千円もしない。よーし全部買った。白い口髭などは純次さんが用意してくれると言う。
さて当日の午後。現地のステージの上で最終リハーサル。前半は、Shifo魔女が魔女笑いするところからスタートする。このリハを見ていて、僕はShifoの魔女振りを正直、尊敬の念で見ていた。
一つには、物凄く台詞が長く、また沢山あるのを、何も見ずに全部諳んじて演じ切っているのが凄い。二つ目、あそこまで行くと歌うことと演ずることは同じなのかも知れない、と思わせるほど堂々とした演技。三つ目、Shifo魔女が、正直怖い。あの魔女笑いは背筋も凍る。が、ぞっとするような色気も。
あれは演技なのか地なのか議論が分かれるところ。おじさんバンドは7ゼロで地に軍配だったが。
さて僕等の出番。二日前の成果をリハーサルで再現しよう。修正後の台本の通りに進んだ。まあ、完璧とは言い難いが素人にはこれ以上求めても無理。出番の2幕が終わった。最後の幕。クーペが言う。「ここもおじさんバンドやってよ」「え!まだやるの?」「台詞もね。ここはマッちゃん。そしてここは神童さん」「まっ、待ってよ。今日本番だよ。自信無いよ」「大丈夫、簡単なんだから」。そういう問題じゃないでしょ。
タダでも忘れっぽいのに、リハで覚えて本番でやれと?50年振りの学芸会なの。年甲斐もなく緊張してるのに、もっと緊張させようってコンタン?
波乱のリハーサルが終わって、開演。第一部のコンサートが終わって、いよいよ第二部の芝居の開始。まっ暗の中、ステージ上で、Shifo魔女の笑い声。同時に彼女にだけ青のピン・ライト。リハの時より数段怖い。「ハハハハハハハ」。照明効果なのだろうけど、これは絶対に演技じゃない。もうShifoに逆らわないようにしようっと。くわばら、くわばら。
実はShifoが初代白雪姫で、年取って魔女になり、二代目白雪姫のボーカリスト・リカさんが魔女の毒林檎の毒牙に掛って魔女になり、そして、後半、三代目の白雪姫が、お腹を空かせて僕等の家に迷い込む。そして、僕等の食べ物を食べて寝ているところに、僕等80歳過ぎの小人達が現れる場面からが出番なのだ。
「ハイホー、ハイホー」「あっ、パンがない」「シチューもない」「こいつが食ったんだ」「どうやらこいつ、外人みたいだ」「外人なら任せておけ。ハーイ、レッスンワン、サンキュー」「泥棒に礼を言ってどうすんだ、俺に任せろ。ベサメムーチョ、オーソレミーヨ、イッヒリーベディッヒ」「全然通じてねーじゃねーか」「うるせー、禿」「何だと、禿はおめえの方だろう」「やめろやめろ」「こらこら、禿と禿とが喧嘩して、どうするんじゃ」「おめーだって禿じゃねーか」「何をー!」、7人のジジイ達どたばた騒ぎ・・・
と、まあ、こんな具合。それにしても、最初の台詞が言えちゃうと、一気にプレッシャーが取れて、アドリブ交じりの「楽しんじゃおう演技」になった。面白かった。今日は演奏で失敗した分、演技の方で思い切り盛り上がらせて貰った(勝手に)。はまりそうな予感がする。
初芝居-完-


0 comments
下記のフォームへの入力が必要となります。
コメント欄