プレミアムエイジ ジョインブログ
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Posts from — 8 月 2009

思い込み

浅田次郎という小説家が好きで良く読む。彼は「地下鉄に乗って」で吉川英治文学新人賞を取り、「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞、高倉健主演映画が大ヒットして超売れっ子作家になった。

しかし僕は、どちらかと言えば彼の小説よりもエッセーが面白くて愛読している。「勇気凛凛ルリの色」シリーズが面白いのだ。面白さは、勿論、彼の文筆の才が面白可笑しく読ませるのだろうが、何と言っても彼のそれまでの人生が破天荒だったからだ。

尊敬する三島由紀夫の市ヶ谷自衛隊駐屯地での割腹自殺にショックと憧れを持って、高校卒業後、自らも自衛隊に入隊した経歴を持つ。大学になど行っていない。

更に、企業舎弟と呼ばれる暴力団の構成員だったこともあり、ネズミ講に関わったと、エッセーの中で本人が告白している。また、競馬に関してはプロはだしで、それで生計を成り立たせていたこともあると言う。

その後、婦人服販売の会社を経営しながら、文筆活動を続け、やっと世間に認められたという半生。小説家になる夢は高校の頃からの夢で、何の仕事をしていても、物を書くということはずっと続けていたそうな。

まあ、これだけ常人とは異なる人生を送って来ているので、エピソードは無尽蔵にあるようなのだ。上記「勇気凛凛ルリの色」シリーズはもう何冊も文庫本になっている。

その中で書かれている、彼の思い込みによる失敗談が面白い。ある出版社の女性編集員と有名ホテルのロビーで仕事の打ち合わせをして終わった時、空腹を感じた。時計を見たら午後7時を少し過ぎていた。それで彼女に「これからまだ仕事?」と聞くと、「いえ。今日はこれで全部終わりました」「それじゃぁ、一緒に食事でもどう?」「はい、ありがとうございます」。

2人は、ホテルの5階程のところにあるレストランで、ワインを飲みながら食事をした。浅田次郎の話が面白いのか、彼女もころころと良く笑う楽しい食事だった。

さて、会計を済ませて2人はエレベーター前へ。2基あるエレベーターの内の一つは1階に向かって3階を下に降りて行っている。もう1台は地下にいる。浅田は早くここまで上がって来いと言う意味で(引っ張り上げるつもりで)△を押した。

その途端、「先生、そういうの、私困るんです・・・」。何故か慌てている。「私、先生はそういう方ではないと思っていました」「?」。

エレベーターが開いた。「先生、申し訳ないと思いますが、今日は帰らせて下さい。あまりに突然のことですし・・・」。浅田はエレベーターに乗り込んで、「1階」を押した。何故かエレベーターの扉が1回閉まって、また開いた。「閉」を押したらエレベーターは下降して行った。彼女が浅田に小さな声で「すいません」「???」。

浅田は各階の説明ボードを見て全てを理解した。6階から上は全て客室になっていたのだ。

8 月 1, 2009   No Comments