あの頃僕等にはマドンナがいた(1)
高校時代に一緒だったY君とは大学も一緒だった。彼とは4年間、何かと連絡し合いながら一緒に食事したり飲みに行ったりの仲で、友人の一人だった。お互い学部は違い、僕が経済、Y君は法学部。
彼は、大学2年以降ESSクラブに所属して、様々な活動をしていた。サークル活動まで英語をやりたいというYの気が知れなかったが、後にその訳が分かった。ESSは文学部の女子がやたら大勢入っているサークルだったのだ。
彼からそのコンパに誘われたのは、大学3年の9月頃だった。ESSの中の青少年支援班、活動の内容が今一僕には分からなかったが、多分、孤児院とか学童保育とか、そういう所で英語の紙芝居(ハローこんにちわ、のような和約入。)などをやってお手伝いしたりする活動をしているグループのコンパに特別参加させられたのだ。
学生のコンパは安い蕎麦屋の2階とか、大衆酒場の一部屋とかだったが、このコンパもそのような場所だった。
この日、グループのメンバーは、ESSでない人を一人連れて来るという趣旨の会だったらしい。ESSの活動をもっと拡げようという目的だったのかも知れない。
Yから日頃何かと借りのある僕は、何だか要領を得ないまま出席した。総勢14~15名。だから多分ESSメンバーはその半数。会の幹事はY君と文学部二年生のK子さんだった。Yが挨拶と乾杯の音頭を取って飲み会が始まった。K子さんが方々に気配りしてかいがいしく働く。
K子さん、実はESS内最高の美人なんだと予めYから聞いていた。身長は160cm位で、すらっとした知的美人。とは言え、つんとすましているのではなく、寧ろ、表情豊かで可愛らしい印象。ESS一どころか、もし当時我が大学にミス・コンテストがあったら間違いなく栄冠を手にしていただろう。
僕の印象では、当時、僕が憧れていた、ナタリー・ウッドとセザンヌ・プレシェットを足して2で割ったような容貌(言い過ぎですが)だった。要は、YがESSで頑張るのはK子に近付くことだったのだと判明した(僕は確信した)。
後日、Yは僕の追及に対しいとも簡単に白状した。やっぱり。
「いつかは彼女とデートするのが夢だ」
と抜け抜けと言う。だが、
「ESSは健全なサークルだから、そんなことをすれば他のメンバーから白い目で見られるし、まだ特別に彼女が自分に好意を示してくれている訳でもない」
とも言う。
どうも今のところはYの片思いらしい。Yが恥ずかしそうに僕に言う。
「だから、暫くはグループ交際として付き合って行きたいから、神童一緒に頼むよ」
「ええー。悪いけど俺、キューピットには向かないと思うよ」
「お前にしか頼めないんだから、頼むよ」
「俺が彼女を好きになっちゃうかも知れないしさ」
「もしそうなったら、それはそれでしょうがないよ。だからさ、頼むよ」
「・・・、しょうがねぇなぁ、分かったよ」


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