あの頃僕等にはマドンナがいた(2)
それからは、バンド活動とダブらない限り、Yが声を掛けて来る都度、彼の言う「グループ交際」に付き合った。それは大体土曜日の日中なのだ。場所も青葉城址公園だとか、広瀬川上流の河原だとかだ。ハイキングやバーべキューなど、健全な若者達といった趣で、正直僕には心から馴染めないところがあった。
だが、必ずと言って良いほど、K子も参加する。今風に言うところの野外合コン。リーダー役はいつもYで、K子がそのアシスタントみたいな役割だった。いつも7~8人のグループで行動していた。
K子の親友と思しきH美はいつも一緒だったが、他の女性はその時によって違ってた。男の方はいつも大体同じ。Yに僕。それに、Yの学部の友人Bと、K子と同じクラス(文学部)のD。YとBとDはESSサークルのメンバーだ。何回か行動を共にしている内に気心も知れて来る。僕の学生時代のバンドとは別のもう一つの仲間になって行く面々だ。
だが、直ぐに分かったことは、Y・B・Dの3人ともK子の魅力に中てられた者どもだということ。僕だって偶然K子と巡り合っていたら一目で参っていたかも知れないが、Yから打ち明けられているから、僕は他の3人よりもK子に対して冷静に少し距離を置いて対応していた。
僕は、この状況はあまり旨くないなと思った。折角参加してくれている他の女子学生達が面白くないだろうと思ったのだ。K子と話したいのは山々だが、僕はいつも来てくれるH美と親しく話すようにしていた。H美も決して不美人と言うのではないが、K子と並べば、どうしたって引き立て役にしかならないのに、H美はどうしてK子といつも一緒なのか。僕は不思議だった。
一番その理由を聞きたかったが、当時の若き日の僕には、H美を傷付けないようにそれを聞き出すなどという技術や勇気はとても無かった。代わりにいろいろな話をした。H美、意外と話題が豊富でインテリだった。僕が興味も無く読んだこともないカミュの小説などについて、読後の感動を熱っぽく語った。僕はそれでカミュという、人間の不条理を描く小説家の存在を知った。
H美との語らいは僕にとって知識欲が刺激されて楽しいし、ためになる時間だった。だが、誤解しないで欲しい。決して2人が恋に落ちるような雰囲気には最後までならなかった。
冷静な僕はH美と話をしながら、YとK子の動向を目の端に留めていた。何せ、YからK子とのキューピット役を頼まれている以上、BとDが先を越さないように監視しないといけないからだ。
Yはグループのリーダー役でK子がそのアシスタントといういい関係。DはK子と同学部で同じクラスの気楽さで昔からの友達のように振舞える。Bは一番不利に見えるが、さにあらず。3人の中では一番素直にストレートにK子に対して気持ちを表せるタイプだ。
公平な立場で見て、3人ともK子とは等距離だ。さてこのラブ・ゲーム一体誰が勝利を手にするのだろうか。


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