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あの頃僕等にはマドンナがいた(3)

学生だから時間は持て余すくらいに充分あったが、こんなグループ交際に3回も付き合わされると、流石に僕もバカらしくなった。次にYから誘われた時、僕は「もういい加減にしろ!」とYを詰った。が彼は「もう一回だけで良いから頼む」と言う。

「まどろっこしくて、もう見てらんないんだよ。ダメ元で好きなら好きって伝えりゃいいじゃないか。あんなこといつまで続けても何の進展もない」
「分かってる。だから、そろそろ勝負に出ようかと思ってたところだ」
「だったら、もうあんなグループ行動は不要じゃないか、2人で話せばいい」
「いや、これもけじめが必要だから、今度を最後にする。終了してから、サブ幹事をやってくれたK子を慰労する名目で食事に誘うよ」
「本当だな。じゃぁ、あと一回だけ参加するよ」

大学教養部の後ろの青葉山にある広大な植物園をハイキングすることになった。植物園は山の麓から斜面にそって広大な敷地に珍しい植物や樹木が生息しているのだが、晩秋の仙台は丁度紅葉の季節。見事な赤や黄色に染まった木々の中をハイキング・ロードが巡らされている。

例によって、僕はH美初めK子以外の女性と代わる代わる話をしながら、登って行った。植物園の青葉山中腹にある最上部のゴール地点は平らに開けている。そこで休憩。ベンチなども置いてある。僕が腰を下ろした隣りにK子も腰掛けた。

「紅葉が綺麗ですね。私、今の季節が一番好き。神童さんは?」
「本当に今が紅葉の見頃だよね。だけど俺は春が一番好きかな。春は俺達と同じ若さを感じるからねぇ」
「神童さん、この前初めて神童さんがバンドでドラム叩いている姿見ましたよ」
「え!どこで?」
「友達のサークルのダンス・パーティーに行った時です。神童さん素敵でしたよ。」
僕はドキッとした。
「そうだったんだ。声を掛けてくれれば良かったのに」
「とてもそんな勇気がなくて、遠くの方から見てました。でも憧れちゃうな。神童さん達に」
「いやー、ありがとう。下手な演奏をそう言って貰えると、喩えお世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないです。神童さんは私達と一緒の時とバンドの時と全く表情が違うんですね」
「どうちがうのかなぁ?」
「今日みたいな時は、優しいお兄さんって感じなんだけど、舞台の上では凛々しいと言うかカッコ良いんですよ。どちらも好きです」
「好き」と言う言葉に、何か胸がドキドキしちゃう。<Yよ、申し訳ない>
「・・・。お褒めに預かって光栄ですよ」
そういうのが精一杯。話題を変えなくちゃと思った。

「ところでK子さん。このグループ活動も今回が最後なんだってね。Yが言ってた」
「そうみたいです。残念ですぅ」
「YとK子さんが頑張ってくれたから、俺等何回も楽しい機会を持てた。ありがとうね」
「私なんか何もしてません。Yさんが全部リードしてくれたんです」
「2人の息がぴったりって感じで、俺から見ればいいコンビだったよ」
<Yよ、これがキューピット役として精一杯のフォローだよ>
「そうですかぁ?」
「そう言えば、Yが言ってたよ。終わったらサブ幹事のK子さんに食事をご馳走するって」
<フォローの追加だよ>
「ホントですか?嬉しい。神童さんもご一緒ですか?」
「多分ね」
Yが2人だけの食事に誘うと、K子が警戒するかも知れないと思い、こう答えておいた。そのことも、僕はYに伝えた。
「神童さんがご一緒なら是非ともお食事ご一緒させて頂きます」

当日僕はドタキャンするつもり。「ここが男の辛いところよ」。当時はまだシリーズが始まっていなかったが、今だったら寅さんの声が聞こえる。

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