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ライブ三昧の週末(3)

「それでは、皆様、暫しご歓談の時間とさせて頂きます」

係りの人達が一斉に飲み物と料理を運び始めた。暫くして司会者が再びマイク越しに言う。

「業務連絡、業務連絡。『クーペ&Shifo』のバンドの方々は準備の方、宜しくお願い致します」

飲み物も、中華料理も続々運ばれて来たのに、席を立たなくちゃいけない。仕方ない、演奏が終ってから、思いっ切り食べさせて貰うとしよう。

僕等は控え室に楽器を取りに戻り、会場の舞台との間を何往復かして、セットアップを急いだ。ドラムはスネア・ハット・シンバルの3点だけにしようと思っていたら、クーペが「『お祭りマンボ』の時、フロアタムが必要だからそれも持って行ってよ」という。

あの怖そうなおじさん達で混雑する中を、バス・ドラムの次に大きい太鼓を運びたくはないなぁ。
「どうしても要る?」
「そりゃ要るよ~」
「ホントに?」
「ホントに!」
分かったよ。「スイマセン」とか言いながら、何とか混雑の中を運んだ。皆さん思ったより紳士で、「あっ、どうぞ」と道を空けてくれた。

運びこむ物は、キーボード、ドラムセット、ウッド・ベース、ギター、フルート譜面台、マイクとスタンド、スピーカー2台、音響操作卓、その他備品、と5人で演奏するにしては、ほぼフル装備に近い。運び込んでスタンバイ・OKになるまで30分を要した。

司会者がその間、2度、「もう始めていいですか?」と僕に聞いた程だから、僕らの後も出し物が目白押しのようだ。

それでも何とか急いで準備を終えたところで、司会者からShifoに、演奏時間は15分と告げられた。また、その前に、X氏への還暦祝いのプレゼント贈呈式を執り行うから、演奏者は楽器の後ろにスタンバイしていて欲しいとのことだった。

「え~、それでは、これより、Xさんへ還暦祝いの贈呈式を執り行いたいと存じます」。

招待客全員が注目する中、まずは、X氏の実のお姉さんから赤に近いエンジ色の長いマフラーがプレゼントされた。続いて、X氏率いる右のつばさ会からとして、高級ジャケットの贈呈に移った。

スキンヘッドの若い衆代表者がカバーに覆われたジャケットを持って、ステージに向かって左手より登場。僕のドラムはステージの直ぐ左にセットしたから、彼は僕の前を通過して、舞台中央のX氏にジャケットを渡すものとばっかり思っていた。

ところが、僕の前に来た時、僕の方に体を向けて、深々と一礼するのである。「何で、俺に?」。僕の隣にShifoがいるから、僕じゃなくてShifoに一礼したのかなぁ?こんなこと慣れていないから面映いことこの上ない。

それにしても、これからだよ、演奏するのは。その前に、あんなに丁重に感謝されちゃうと寧ろこっちが緊張しちゃうよ。X氏の若い衆への教えは凄いなぁ。

長めの一礼の後、彼は頭を上げ、再びステージ中央のX氏の方に歩み寄って、カバーの中からこれまたエンジ色の見事なジャケットを取り出し、X氏に着させたのだった。会場は割れんばかりの拍手の渦。

僕はふと後ろを振り返った。大きな日章旗が壁一面に飾られていたのだ。彼は、僕でもなく、Shifoでもなく、日の丸に拝礼したのだった。なぁんだ!

(つづく)

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