写真家 桃井和馬
前日、テレビで偶然見た、桃井和馬氏の特集番組の予告編。ファインダーを覗くあの鋭い目、世界を撮って来た人間にしか出せない顔の渋さ。僕は直ぐに気が付いた、「おう、桃井さんだ!」と。
新聞のテレビ番組表で確認した。1月3日、テレビ朝日、午後3時30分から1時間の特集番組だと分かった。関係者に携帯メールやインターネット・メールで相手構わず知らせた。だから、何のことかチンプンカンプンの人もいただろうと思う。失礼しました。
番組の舞台はペルー。桃井氏曰く、「ペルーは地球上の様々な自然と、その自然が傷つく姿をダイジェストで見られる所」なのだそうだ。アンデス山脈に積もった雪が長い間に氷の原野になったが、この何年かで東京ドーム3万個分も氷の面積が小さくなった。
また、ペルーは風の強い場所が多く、海からの強い風にも必死に耐え身をよじりながらも立っている一本の木を、彼のカメラが捉えた。「けなげだ」と桃井氏が呟く。彼は「風は地球の呼吸だ」とも言う。桃井氏の感動が、彼の写真を通して、また、彼を密着取材しているカメラを通してこちらまで、バンバン伝わって来る。
桃井氏は、これまで、世界中の戦場に出向き、戦争の過酷さと人間の愚かさをカメラに収めて来た。その彼がびっくりするような、自然が織り成す美しさを撮る。
当初僕は危険な戦場をカメラ片手に走り回る桃井氏が彼の本当の姿だと思っていたが、今日の番組で、地球という自然が作り出す圧倒的な美に対しては、少年のように驚き感動を口にする彼こそ本当の桃井氏なのだと思った。
それだけに、今、危機を迎える地球温暖化に対する彼の鋭い視線は、戦争という、やはり人間が引き起こす愚かさの何倍もの怒りを心に秘めて、一瞬の美しさを切り取っているように見えた。
番組の最後に、若き2人組みが彼の写真に触発されて新曲を作ってそれを歌った。写真と歌のコラボ。なかなか良い。
だけど僕は一つだけ残念に思った。桃井氏の音楽コラボがShifoだったら良いのにと。Shifoは、国際フォーラムやNHKホール・オペラシティなどの晴れ舞台では必ずと言って良いほど、桃井氏の写真映像を背景に映して「どっちでも不思議」を歌うからだ。
それでも、クーペの店で出会い知り合いになった桃井さん。クーペもShifoも、彼の手配りで何年か前、ピース・ボードに乗ってこの地球を船旅させて貰って音楽の新しい境地を開いて行ったし、僕の会社にも講演に訪れてくれた桃井氏。いつか本当にコラボレーション出来ればなぁと思う。
2年前、若くして逝った彼の奥様のお葬式では、僕も涙を堪えることが出来なかった。その日から、父娘の2人の生活が始まったのだが、今日の映像を見る限り、完全に立ち直り、以前より寧ろ余人の及ばぬほどの深みを見据えた鋭い眼差しと、人と自然の対する愛に満ちた言葉の数々が印象的だった。
美しい自然を前に感動する桃井氏をテレビで見て、カメラマンとして、いや、彼流に言えば、フォト・ジャーナリストとして、正真正銘のメジャーとなった桃井氏にこちらも目一杯感動したのだった。


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