一年の計(1)
クーペから、「1月18日に、店で関係者全員で『新年会』をやる。そこで一人ひとり今年の目標を発表して貰うので、神童さんも是非、おじさんバンドのメンバーとしての目標をしゃべてよ」って言われた。
「悪いけど、その前日から、信友会(信州出身の中小企業の経営者の会)のメンバーで湯布院の方に旅行に行ってるから、新年会には出られない」と丁重に断わったつもり。
「じゃぁさ、神童さんの今年の目標を書いといてよ、俺が代読するから」とクーぺ。
そうだったな、現役時代は、毎年正月明けの初日の朝一番で、私から社員の皆さんに年頭の挨拶というのをしなければならなかったから、正月参賀日はしっかり一年の計を立てて、それを挨拶代わりに話したものだった。
公私に亘る一年の計を全社員の前で語るということは、結構覚悟が要るものなのだ。何故なら、社員はそれをしっかり覚えていて、「この約束は守れましたけど、これはダメでしたねぇ」と、勝手に総括するから、無責任なことは言えないのだ。
だが、年頭の挨拶ともなれば、少しは威勢の良いことを言って、心新たに新しい一年に立ち向かうため士気を鼓舞する必要もあり、安全運転みたいな話だけじゃ座が持たないから、自分の覚悟を含めてかなり踏み込んだ発言もする。
謂わば、私の社員に対する一年間のマニフェストみたいな位置付けのものだった。実際はどの位の割合で約束を守れたのか、敢えて採点しなかったので(その方が無難だったので)分からないが、約束を実現出来たことは、多分、出来なかったことの何分の1だったろうと思う。
だが、この歳になると出来なかったことはすっかり忘れ、達成出来たと胸を張れることだけしか覚えていない。それも生きる知恵なのかも知れない。
ある年の年頭挨拶で禁煙宣言はしたものの、見事に失敗して周囲から馬鹿にされたが、その2年後の宣言は、今日まで4年の間守っており、リベンジを果たせたのも、個人的には年頭挨拶のお蔭と思っている。年頭挨拶なかりせば、今もって禁煙は出来ていなかったと自信を持って言い切ることが出来るからだ。
もう一つ鮮明に覚えているのは、メイン業務に関する一年の計ではなく、関連会社の1つとして親会社の商品販売に協力する運動(契約紹介運動)で、1位となることを宣言したことだ。
会社合併後まだ2~3年しか経っていない時期だったが、日本経済の不調を反映して、親会社の前年の業績もマイナス成長だった。そうなるとグループ全体が暗くなる。
そこで、とてもカンフル剤とはならないだろうが、関連会社が契約紹介運動で1位を取ったら面白いから、是非やろうと年頭の挨拶で社員に提案したのだった。
社員の中には「メイン業務以外に、そこまで関連会社の社員を巻き込むのは、少々やり過ぎではないか」との意見もあったが、「グループ内で当社の地位が上がることは、社員にとっても誇れる会社になるということだから」と説得して、運動に突入して行った。
結果は、断トツの第1位。一躍グループ全体から脚光を浴びることになった。他の関連会社の社長さんからは、「偉いことをやってくれたね。お陰でこっちも、来年は契約紹介運動を真面目にやらないと拙い状況に追い込まれてしまったよ」と、賛辞だか文句だか分からないことを言われたりもした。
でも、何事も運動というのは面白いもので、成果が数字に現れると楽しくなるものだ。消極的だった人達も、本当に1位になれるかも知れないという状況になったら、積極的に運動に参加し、当社全体の数字を大きく底上げしたことが2位との大差(2位の倍の成績)となったのである。
子会社の社員が僕に誠に嬉しいことを言ってくれた。「初めて自分の会社にプライドが持てました。やって良かったです」と。


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