ペーパーレス
今から30年も前になるだろうか、会社のシステム部門に、オーストラリアの保険会社の視察団が訪ねて来たことがあった。彼らは当時の日本の金融ビジネスを調査・視察に来た一行だった。
彼らは銀行・証券・保険などを幅広い角度で視察するため、手分けして何社かを訪問して様々な分野の人間から話しを聞くツアーだったようだ。当社には保険システムを視察にやって来たらしい。
彼ら一行は全部で10名強とのことだが、我がシステム部門を訪れたのは3名。こちらは部長以下数名が出席。僕も若手SEとして参加を命じられた。
当社システムの概要を説明して(通訳が付いて来ているので説明は日本語)、質疑応答、更にフリー・ディスカッションとなった。
3人の中の責任者と思われる白人が、盛んに「パイパーレス」「パイパーレス」と言う。僕は最初それが「パイプ・レス」と言ってるように聞こえたから、「日本には、パイプ・タバコがない。シガレットしかない」と言ってるのかと思った。全く変なことを言う外人さんだ。
通訳がそれを「ペーパーレス」と日本語(?)に約してくれたから、やっと言っている意味が繋がった。かれは、僕等に「ペーパーレスについては、どういう取り組みをしているか?」と聞いていたのだ。
「ペイパー」を「パイパー」と発音するのは、オーストラリア圏独特の英語なのだ。「エイ」が「アイ」となる。それを遡ればロンドンの下町言葉だという。
英語の笑い話に、「I go to hospital today.」(私は今日病院に行く)をオーストラリア人が発音すると、「I go to hospital to die.」(私は病院に死にに行く)となるというのを思い出していた。
さて、ペーパーレス。こちらが答える前に、オーストラリアの保険会社ではどういう努力をしているのか聞いてみた。
彼は、「会社から顧客に何でもかんでも紙で知らせるのを、思い切って全部止めることを検討している」と言った。キャッシュカードのようなものを顧客に送って、以降、そのカードで店舗設置端末から内容が全て分かるようにするつもりのようだ。
銀行のATMで顧客の日常の用事は全て済むのだから、銀行以外の金融機関もいずれはそうなるかも知れない。ただ、日本の保険事情では顧客はまず保険会社の店舗に出向かない。おばちゃん部隊や代理店が顧客先に赴くのが慣例だから、簡単には銀行のようにはならないだろうと、彼の話を聞きながら思った。
なので、当社は、寧ろ、社員1人1台の端末を設置して、社内事務を紙ベースではなく、画面操作で全て終るようにして紙の使用量を抑えることを考えていると伝えた。
これは30年前のことだ。では、今、日本全体ではどうなのだろう。印刷業界のある重鎮が言うには、パソコンが企業に大量導入され社員1人1台の時代になってからは、それ以前に較べて、遥かに紙の使用量が増えたという。その後各家庭にまで普及してからは、更に使用量が伸びたという。
30年前、国を挙げて行なった筈のペーパーレス運動は、一体全体どうなっちゃったのだろうか。地球環境問題がここまで深刻になっている今、もう一度国民運動に引き上げる必要がある。
大事なのは、出来ることから。僕はささやかながら、今回から年賀状の出状はやめて、e-mail 年賀状に変えた。(手抜きのように受け止められかねないので)決して評判が良いとは言えないけれど、次回以降も続けようと思う。
メール・アドレスの分からなかった方には、新年のご挨拶を欠いた失礼を、この場を借りてお詫び致します。


0 comments
下記のフォームへの入力が必要となります。
コメント欄