プレミアムエイジ ジョインブログ
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あいつが辞める

  
  私が社長をしていた前の会社にWという社員がいた。ある保険会社のシステム関連会社のプロパー社員だ。年齢は僕の丁度10歳下。入社以来ずっと保険システムに従事して来た点では、僕と同じだ。

  10年前、私が属する保険会社が別の保険会社と合併することになり、システム統合を行なった。その時、自動車賠償責任保険(自賠責)のシステムは相手社のシステムに寄せて一本化することになった。

  システム統合の一方の責任者であった僕は、相手社の自賠責システムを知る必要があり、相手社システム部門のメンバーに、様々突っ込んだ質問をしたが、なかなか明解に答えてくれる人がおらず、誰かそのシステムに詳しい人を連れて来て欲しいと要求した。

  だが、現れたのはシステム部門の人間ではなく、商品開発部門の自賠責担当者だった。彼は、システムや事務処理を含めて自賠責全体のオーソリティーだと言う。自賠責だけは現金取り扱いが基本なので、金銭授受を含めて様々なリスクがある。それらをどうチェックし防御しているのかが、僕の最大の関心事だ。

  それに答えてくれる人物がやっと現れたと思った。しかし、自賠責の保険内容や事務フローなどについては答えられても、肝心のシステム内容を把握している訳でもない。僕は段々イラついて行った。「なんでシステム部門のメンバーが、自賠責システムの中身を知らないんだ?」と声を荒らげてしまった。

  その時、相手社システム部門の次長さんが、「子会社の社員でも宜しければ、自賠責システムの担当者を連れて来ますが」と言う。「えっ! 何だ、ちゃんといるんじゃない。早く言ってよ」「子会社の人間じゃ失礼かと・・・」「親会社だの子会社だの、一切関係ないよ。実務に強い人間だよ、必要なのは」。そこに現れたのがWだった。

  Wは僕の期待に違わず、自賠責システムの全貌を説明してくれた上で、僕の繰り出す沢山の質問に丁寧に答えてくれたので、やっと僕の疑問は解消された。その上で、「今のシステム機能でほぼ大丈夫だと分かったが、ここだけは機能改善して貰いたいが、可能か?」と質問すると、「勿論、可能ですし、直ぐにやれと言われれば、今週中に仕上げます」。

   こいつは使える。機能改善は彼が言う通りその週の内に完了したのだった。このことを通して僕は2つのことを感じ取った。1つは、相手社システム部門(親会社)より、子会社のSE達に好印象を持ったこと。2つ目は、システム開発やシステム改変の実務は、システム部門(親会社)のSEではなく、子会社のSE達の仕事となっていること。僕が必要としているのは、勿論、実務に強いSEの方だ・・・。

  その象徴だったWが、明日、会社を辞める。実はそのことで、1ヶ月前、2人で飲み明かした。理由を聞いて僕は、彼が辞めるのやめさせよう、とは思わなかった。
   

2 comments

1 poko { 03.10.10 at 7:59 am }

とても楽しい内容でした。神童さんの職場は、皆さんとてもやりがいがあったでしょうね。この続きを楽しみに待っています。
それにしても相手社の次長さんのような人がたくさんいて情けなくなります。肩書に弱いのでしょうね。

2 シンドバッド { 03.10.10 at 2:00 pm }

人が去り、また、新しい人が来る。毎年、3月4月はそんな時期ですが、ある職場、ある世界を体現していた者が、そこにいられなくなるというのは、何とも残念なことです。
新しい歴史の始まりとなるか、崩壊の第一歩となるか。正に残る者の肩に掛かっていると思います。

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