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あるシステムの物語 1

 
  2001年7月1日、兵頭一樹は梓システムズ(株)の社長として、会社設立記念式典で、全社員を前に挨拶に立った。
梓システムズの親会社の梓損害保険株式会社は損保業界中堅同士の東都損保と中央損保とが合併して同年4月1日に業界4位の大手社として再スタートを切った。
梓システムズは東都損保と中央損保の夫々のシステム子会社が、それより3ヶ月遅れてこの日、漸く合併の運びとなったのだった。

  システム子会社同士とは言っても、夫々の親会社の考え方の違いから、際立った人員構成の違いがあった。
即ち、東都損保側のシステム会社のプロパー社員数はたかだか30名だったが、中央損保の子会社はプロパー社員300名を擁する大所帯であった。
東都損保出身の兵頭はこの合併子会社の初代社長として、今、社員向けに話し掛けているのだが、実のところ聴衆は、殆どが兵頭を知らない中央損保システムズ出身のプロパー社員なのだ。

「保険の自由化は、外資の参入や他産業からの参入を招来し、保険料の自由化をもたらし、遂には国内損保社の相次ぐ統合再編を促した。
これからの損保の競争は熾烈を極める。そういう厳しい時代をどうやって勝ち抜いて行くか。
その鍵を握るのがコンピューター・システムだ。その良し悪しが損保会社の成否を決めると言っても過言でない、そんな時代が始まったのだ。
だから梓システムズという会社は、そういうシステム競争に勝てる会社にならなければならない。
 
  そこで皆さんにお願いがある。別々の生い立ちを持つ別々の会社が、今日一緒になったのだが、夫々の延長線上にこの会社があると思わないで欲しい。
全員今までの会社を退職して、全く新しい梓システムズという会社に入社したと思って欲しい。
過去と決別して、文字通り、21世紀型の新しいシステム会社を作るんだと決意して欲しい」

  兵頭は40分に亘る熱弁を振るったあと、「知らない者同士が一緒になったのだから、当面、対話重視の会社運営を行う。
私を含めた役員と社員間、役員同士、社員同士、様々な機会を捉えて新しい会社作りをテーマに議論して貰おうと思っている。
その皮切りとして、この場で、是非とも私に何か聞いてみたい、ぶつけてみたいという人がいたら、勇気を出して挙手してみて下さい」と投げ掛けてみた。

  兵頭も、そうは言っても手を挙げる社員は皆無だろうとは思っていたが、遠慮気味に2本手が挙がった。

「おう、勇気ある人が2人いましたね。じゃぁ、そちらの方どうぞ」

  兵頭は2人の内、女性の方を指名した。

「梓損保本体の中にもシステム開発部があってSEがかなりいます。
一方、この梓システムズにも沢山SEがいます。
社長はこれを将来的にどうされようとお考えですか?」

「なかなか良い質問です。
私としてはこの梓システムズが、梓損保のシステム全てを請け負える力のある会社にして、梓損保のシステム開発部の役割をも吸収出来る会社に、何としてもして行きたいと思っています。
それには、皆さんにもう1段・2段、上の仕事にチャレンジして貰う必要がありますから、少し時間が掛かると思っています・・・。
答えはそれで宜しいですか?」

「はい、ありがとうございました」

 
 
「もうおひと方いましたね? どうぞ」

背の高い彼が立ち上がると全員がそちらに注目した。

「昨年のシステム統合では、中央損保のシステムに片寄せするという方針で進めたのに、どうして兵頭さんは、半年後にそれを反古にして、両社システムの併存型なんかに変えたりしたんですか? 
私達はそれに散々振り回された挙句、複雑極まりないシステムになってしまいました。
ここにいる大多数が今でもあの時の不満を抱えたままだと思いますよ・・・」

昨年の10月から11月に掛けて、兵頭と梶圭太は、そのことの事情説明に追われていた。
両社のあらゆる部門に説明した筈なのに、中央損保側では実際のシステム統合作業に当たっていたシステム子会社のSE達には何も話が降りていなかったのか。

「皆さん、あの時の方針変更の理由は一度も聞いたことないんですか?」、多くの社員が頷く。

「それでは、説明しましょう・・・・・」
  

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