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あるシステムの物語 6

 
  3月末までの1か月で、事務・システム統合の大方針を決め、4月の初めに開かれる、合併両社の社長をヘッドとする経営統合委員会に掛けなければならない。

  両社の事務部門、システム部門夫々に、また合同で、連日連夜検討を重ねたが、実のところ、相手社の仕組みを理解するまでには至らない。オーバーの上から背中を掻いているようだ。従って、「詳しく検討した結果、こうするのが最も早いシステム統合の仕方です」などとはとても言えない。

  システム統合の仕方の最適解を本当に導くなら、多分、少なくとも半年の調査時間が必要だ。それでは、会社合併の日に間に合わなくなる。兵頭一樹は悩みに悩んだ挙句、4月1日付けで執行役員に昇格することが内定していた梶圭太に相談した。

「梶部長、この度は執行役員就任が決ったそうだね。おめでとう。これで、事務・システム統合の責任を君と共有出来るのでホッとしているよ」

「ありがとうございます。これで兵頭さん同様、逃げも隠れも出来なくなりました。ハハハ」

「ところで、システム統合のことだけど、幾ら調査したって時間が経って行くだけで意味が無い。与えられた時間は1年しかないので、この際、どちらかのシステムに片寄せするという大方針の下、具体設計に入るしかやりようがないと思うんだ」

「兵頭さんはどちらに寄せるのが良いと思いますか?」

「相手社のシステムに寄せるのが早いと思う。と言うのは、中央損保は大株主の自動車業界最大手の巨大マーケットを持っている。中央損保システムはそのマーケット向けの対応が色濃く反映されているので、逆に寄せると当社にはそのシステムが無いから大問題になる」

「当社側で同じシステムを作って合併に間に合わせるという訳には行きませんか?」

「1年ではとてもとても・・・」

「そうなると、かなり当社側に反発が起きそうですね。でも、それしかないですよね。覚悟を決めましょう。それでは早速、河瀬社長と意見調整しておきませんか?」

  そう言うなり梶は、受話器を取って秘書室に社長の都合を問い合わせた。

「兵頭さん、社長は今部屋におられるそうなので行きましょう」

  2人は社長室に入り、事務システムの統合方針を河瀬社長に簡潔に説明した。社長は最後までじっと聞き入っていたが、おもむろに口を開いた。

「その方針に賛成だ。今度の合併は東都損保が中央損保と一緒になると言うより、世界の自動車会社と手を結ぶのだから。そのことを肝に銘じて進めてくれ」

「はい、分かりました」と2人は声を揃えた。

  そして梶は河瀬社長にこう言った。

「ですが、相手社のシステムに寄せるとなると、それに対する当社側の反発が予想されます。私も説得に当たりますが、社長にも是非とも宜しくお願い致します」

「システム部門の方は、私が抑えますので、宜しくお願い致します」と兵頭も付け加えた。

「分かった」という河瀬社長の一言で社長との意見調整は終了した。
 

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