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あるシステムの物語14

 
  車の中で、案の定、河瀬社長は不快感を顕にした。もう10月下旬だ、そんな方針に変えて間に合うのか、梶が付いていながらこんな遅い時期まで引っ張ったのはどういう訳だ、いっそのこと、事務もシステムも店舗も何も今のまま触らないで、合併だけしてお互い営業で競い合うという手もあるぞと、河瀬はありとあらゆる罵詈雑言を梶圭太に浴びせた。

  河瀬が腹立ちまぐれに言った最後の話など、最初の何年かは何の統合効果も生まないのだから合併の意味もない。河瀬が「責任を取る」と言っているように梶には聞こえた。梶は新方針について必死に説明し、元々、片寄せ方針で旨く行かなかった時の次善策として、コンティンジェンシー・プランを考えてあり、それがこの両システム並存型統合であること、5ヶ月あれば充分間に合うことを訴えた。

「勝手にしろ!」

「ハッ、ありがとうございます。明日早速その方向で動きます。数日中に社長のお出ましを願う場面にさせてみせます」

  河瀬の「勝手にしろ!」は不本意ながらOKという意味であることは長い付き合いの梶は良ーく解かっている。梶が言う「社長のお出ましの場面」とは、全ての周旋を終え、両社の最終結論を出しておきます、という意味だ。

 

  一方、この東都損保側の方針変更の動きは、相手社システム部門の執行部に大きな疑心暗鬼を生んだ。合併後の両社システム部門の力関係を慮って、兵頭と梶は片寄せからイーブンな関係に戻そうとしているのではないか、との疑いだ。それでも、兵頭は粘りに粘って、新しいシステム統合の可能性を検討する数日間の超短期プロジェクトの発足と、そこへの中央損保メンバーの参画の了解だけは取り付けた。

  兵頭は両社の主力SE達を東都損保のある会議室に召集した。実は、兵頭が集めた中央損保側のSE達は、開発現場の実力者達であり、残りの期間(6ヶ月弱)に行なわなければいけないシステム開発の工数があまりに多いのに、システム・テスト時間はあまりに少ない、これではとてもシステムの整合性の保証が出来ないと強い懸念を持った人々だった。東都損保側のSE達は、兵頭が信頼する部下達だった。

  両者は、兵頭がくだくだ説明する必要もない程、自分達が置かれている状況に強い危機感を持ち、これを何とか打開しなければと集まった。

  新しい方針の元、完成の全体図、そこに至るマイルストーン、課題整理、そしてその対応策の具体方法の決定など、システム設計を短期集中合宿形式で、会社に泊り込んで行なった。土日を含んだ4日間を掛けて、合併新会社梓損保の事務とシステムの、新たな構築計画書が出来上がった。

  兵頭はこの時、両社のシステム部門の人間達が、最大のピンチを前に、初めて一つになったのを感じていた。
 

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