永遠の0
毎日の電車の往復は、殆ど文庫本を読んで過ごす。
前の会社は自宅から歩いて8分という近さだったので、なかなか読書する時間が取れなかった。いや、近かった分、家で読書の時間が多く取れた筈と思われるかも知れないが、現実は、いろいろあって帰宅が遅く、家でじっくり本を読むことはあまりなかった。
2年前に、JTから彼が立ち上げた新設保険会社に誘われて勤め始めてからは、片道30分間以上電車に乗るので、その時間本を読めるようになって読書量は飛躍的に上がった。
読む本は、浅田次郎、東野圭吾、雫井脩介、真保裕一、楡周平、佐々木譲など比較的今風な作家が多い。このうちの過半は、2年前まで全く読んだこともなかった人たちだ。読んでみると、とても面白いので、同一作家の作品を次々に読むようになった。
昔、松本清張や司馬遼太郎の作品を完全制覇したり、落合信彦の文庫本は全て買ったり、そんな懐かしい時代とは読む作者は様変わりしたが、どうも僕は、気に入った作品に出会うと、同じ作家の本を全部読みたくなる傾向にあるようだ。
そのお気に入り作家に、もう一人加わりそうなのが、「百瀬尚樹(ひゃくせなおき)」。関西では既に名の売れた放送作家らしいが、僕は全く知らない人だった。本屋に行って、たまたま平積みされていた中に「永遠の0」というタイトルの文庫本が目に入った。
0は「ゼロ」なのか「オー」なのか? 0がやたら大きい文字で書かれたタイトルだったから、「何だろう」と思って手に取った。
0は「ゼロ」と読む。「ゼロ」は零戦のこと。当時世界最速で敏捷性抜群の戦闘機のことだった。終戦記念日も近いから読んでみるかと気楽に購入し、読んでみた・・・・・
真珠湾攻撃に参加し、終戦の数日前まで生き残った、稀有な零戦乗りの物語り。彼は撃墜王の一人に数えられるほど腕の良いパイロットだったが、妻と「必ず帰る」と約束したことを最後まで守ろうとして、無駄な戦闘は極力回避もするし、場合によっては逃げもする。
特攻志願も断固拒否する。「臆病者」と揶揄されようが、信念を絶対変えない。他のパイロット仲間は最後は潔く死ぬ覚悟で戦っているのに、彼だけは生き残るためだけに戦う。彼は戦地から妻に手紙を送り、妻は生まれたばかりの赤ん坊の写真を夫に送る。
今、世間では「空気の読めない奴」は「KY」と忌み嫌わるが、彼の「KY振り」は際立っていて、妻との約束を守る一点でそれが徹底されて行く。他人がどう思おうと、上官にどれだけ殴られようと、死ぬための空中戦は絶対に拒む。
それでも、敵からの攻撃を受け避けられない時は、已む無く敢然と戦い、誰よりも多く敵機を葬るのだ。その撃墜数を決して誰かに自慢することもない。次第に周囲も彼の凄腕に敬意を抱き、それを認めるようになって行く。
しかし、最後の最後、終戦の数日前に、何故か彼は、特攻に志願して散ってしまう。最後に自分の信念を曲げたのは何故か、帰還を待つ家族はどうなるのか、クライマックスに迫る作家の筆致とマジックに僕も引き摺りこまれる。涙なしには読めない小説だった。読後はとても爽やかだった。


2 comments
神童さんが、東野圭吾や佐々木譲等よんでらっしゃるのは驚きました。司馬遼世代の方々は、今時のスピード感のある本はダメなんだと思ってました。
「永遠の0」読みました。オチにはいろいろな解釈もあると思いますが、有名指揮官や新聞社を痛烈に批判するところはスッキリしますネ。これは、戦争を知らない世代が詠まないといけない本ですネ。これを読んでWOW WOWで今やってる「ザ・パシフィック」見るようになりました。
スピード感と言えば、ちょっと古いですが今、Rちゃんが読んでいる、誉田哲也の「ジウ」も面白いですよ。もし、読まれてなければお勧めします(ちょっと、グロイけど)
営 業中 様。コメントありがとうございます。
還暦過ぎると、結論を急いだり、せっかちになるか、じっくり、しみじみが良くなるか、どちらかみたいです。
私はどうも前者の方なのかも知れませんね。まったりしたテンポの小説より、スピード感のある本や映画の方が好きになったんですね。
アドバイスありがとうございます。誉田哲也は読んだことないので、是非、次に挑戦したいと思います。
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