あるシステムの物語18
梓損保システムズの会社設立記念式典に於いて、「何故片寄せから並存に方針変更したのか?」というある社員からの質問に答える兵頭社長、最後にこう総括した。
「損保の対等合併の難しさは、会社と会社の主導権争いなどよりも、両社の保険代理店代理店に、『会社が合併するのは良いが自分達に迷惑を掛けるな』と言われてしまうことなのです。つまり、従来の代理店事務や会社からの、事務のやり方やシステム・サービスを含めた様々な支援のレベルは一つも落とすな、という意味です。
これが吸収される側だったら、『相手社に合わせるのも仕方ない』と代理店も納得してくれるのですが・・・。
今回の合併は、中央損保のメイン・チャネルは自動車産業の最大手、方や東都損保は専業代理店と整備工場がメイン。夫々に向けた特色を持ったシステムだったから、片寄せでどちらかを捨てるという割り切りは出来なかったということです。
システムの都合だけで考えれば、どちらかへの片寄せが良いに決っていますが、残念ながら、半年間、片寄せをトライしてみて、やっと以上のことがハッキリしたのです。結局は両社のメイン・チャネル向けのシステムは両方共必要ということになると、中央損保システムへの片寄せを原則にしながら、東都損保システムにある多くの機能を移植開発するのは、時間的にも品質的にも、更に費用的にも不可能になって行きました。移植開発しなければいけないシステムは、東都損保システム内にあるのだから、何も大きなリスクや不可能を推して移植開発する必要はない。両社のシステムを基本的に活かす並存型統合がその答えでした。これが方針変更の真相です。
途中での方針変更が、皆さんにかなり負担を掛けたことは、本当に申し訳なかったと思っています。ですが、それが両社の立場とか面子とかに拘って、私が故意に並存型のシステム統合に変えた訳では決してないということを、皆さんには是非理解して頂きたい。」
兵頭には、質問に立った男が大きく肯くのが見えた。
「大方針変更後の5ヶ月間、皆さんは強い危機感を共有して、システムのプライドと意地に賭け、良くぞあの大仕事を成し遂げてくれました。その間、両社システム部門の第一線SEの皆さん方は、合併前だったにも拘わらず、会社を超えて一つになってくれました。
あの時の一体感をベースに、梓損保のシステムを一層競争力のあるシステムに発展させると同時に、そのことを通じて、我が梓損保システムズの社員一人一人がより競争力の高いSEに飛躍出来るよう、今日をそのスタートの日としたいと思います」
兵頭は、会社創立記念式典での挨拶を締めくくった。


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