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あるシステムの物語19 (完)

  その後、両社の事務システムの並存状態の解消に向けて連日作戦会議を行い、8月には新しい方針を経営に諮り、前島を責任者として事務・システムの一元化を目指して開発がスタートした。1年強掛けて所定の目的は一応達成した。「一応」と言うのは、現場事務の一本化と、システム機能の重複排除は実現したが、並存する両社システムの夫々の必要機能は残してそのまま使うことにしたので、見掛け上の両社システムの並存は変わらなかったことを指す。

  それでも、会社合併で最大課題とされていたシステム統合は、大きな山を越えたことにはなる。あとは、合併前から経営側も期待し、梶も兵頭も合併に大きな期待を寄せていた、「新幹線システム」、即ち、合併による効率化効果を原資として、大手他社を凌ぐ競争力のあるシステムを作り上げることが残った。

  だが、河瀬が東都損保時代から通算で6年という、慣例上の社長任期満了に近付いた時、彼は次期社長に前島を指名した。同時に、兵頭は合併後の事務混乱の責任を取り、梓損保の取締役を辞して、合併時から社長を兼務していたシステム子会社、梓損保システムズの専任社長となった。

  兵頭は、合併5ヶ月前に、相手社システム責任者の中島に「このまま片寄せ方針で、本番突入して大問題が起きたら、あんたの責任だ!」と言って、並存型に変更を迫った場面を思い出していた。その言葉には、「逆に、新方針で大問題が起きたら、その時は自分が責任を取る」との意味を含めていたことを改めて思い返していた。

  3人で「新幹線システム」という同じ夢を共有していた、河瀬が社長を降り、兵頭がCIO(情報システム担当重役)を降りた今、兵頭は梶に、最早、夢の実現は自分の手を離れてしまったことを済まなく思った。その梶もそれから半年後、役員を辞任して会社を去って行った。

               あるシステムの物語  ― 完 ―

 

明日から夏季休暇を取らせて頂きますの、ブログは暫くの間お休みします。

                                    神童覇道

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