プレミアムエイジ ジョインブログ
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Posts from — 3月 2016

あるシステム統合(11)

  後日、処分内容が通知された。Bは部長として大阪に異動になった。僕が気にしていたBの「理事降格」は、どうやら避けられたようだが、その内容は、取締役候補の理事から、功労者用の理事に変った。

  「理事降格」だけは勘弁してやって欲しいとの僕の言を容れる代わりに、僕には減給処分が下された。だが、20%減額3ヶ月を覚悟していたが、結果は10%減額1ヶ月と緩めてくれていた。処分理由は、「事務・システム統合部会」の責任者として、部会の統率が出来ていないというもの。

  Bに関して言えば、残念ながらその通りなので、素直に従うことにする。意外だったのは、この処分通告の直後に、Kが電話して来たことだ。「神童さん、お蔭様でオレまで一緒に処分を受けちゃいましたよ。トバッチリもいいところです」と言う。

  減額割合は僕より少なかったが、悪いことをしたような気がして、「それはそれは申し訳なかったね。部会の共同責任者だったばかりにね」と僕。全国の業務部を預かるKが、社長に言われてBの受入れ先を考えてくれたのに、連帯責任を取らされた時のKの驚きの顔が思い浮かんで、不謹慎にも可笑しくなり笑い出しそうになった。

  それでもKは、「まぁ、Bの動きを知りながら、何も出来なかったですからね。相手がXさんじゃ、受け入れるしかないですよね」と諦めムードだ。「今度夕飯奢るよ」と慰めると、「えらい高い夕飯だなぁ」と笑う。確かに。彼にとっても10万円は超える減額の筈だから(笑)。

  しかし、Bを巡るこの騒動は、僕にとって痛恨事であった。それは何も今回のシステム統合に関する彼との衝突のことだけではなく、僕が次長から部長になる頃から始まったBの僕に対する対抗意識や敵対行為を、どうにも解決出来ず、Bの左遷の形でしか決着出来なかったことの己の非力さを呪ったのだ。

  それまでは、彼が入社して以来気が合う方だったし、チームは違っても夜遅くまで飲んだり、朝まで飲み明かしたことだってあった。若い頃組合活動なども一緒にやったし、彼の能力は買っていた。いろいろな意味で将来は僕の片腕になってくれるものと勝手に思っていたのも事実だ。

  だが、僕がシステム部門の最高責任者となった頃から、彼の考えは違っていたことが徐々に明らかになっていたのだった。しかしながら僕は、客観的に見てこのシステム競争の時代にBの力が必要だったし、何度か彼を引き入れようと努力したが旨く行かなかった。

  だから、今回彼が目の前から消えることにスッキリするどころか、彼の力を惜しむ気持ちと、Bをしてこの神童を担ぐに足る人間と思わせるだけの力量や人間力の足りなさを痛感せざるを得なかったのであった。

  しかし、事態はそんな感傷を許してくれる状況には全くなかった。F社システム寄せの最終結論が出た今、即、両社の担当SE達で幾つかの開発チームを編成して、システム統合に突き進まなければいけない。

  「第二回経営統合委員会」の翌日、相手社のA次長を呼び出して、早速、システム統合のための組織図と夫々の責任者を決めることにした。A次長と彼の部下、僕と僕の部下の4人で大枠を決めて、夫々の単位組織の責任者を決めて行った。

  F社側は何故C部長でなくA次長かと言うと、C部長は1年前に営業からシステムに赴任して来たばかりで、実務は全てA次長に任せている模様なのだ。

  こちらも、ツーと言えばカーと言うシステム経験者でないと、余計な説明に時間が割かれるのが嫌で、A次長が僕の相手だということに、寧ろ、良かったと思ったのだった。

  しかし、この日の打合せの後、C部長の話として、Aはこんなことを僕に話したのだった。「H社がF寄せの条件とした、分割払い保険料の入金消込管理システムは、本当に必要なのか、という論議がF本社で湧き上がっています」とのことだった。

  僕は「だってそれ無しでは、大変な月末処理をせざるを得なくなって、H社側の全国の代理店からも営業からも大ブーイングが起きますよ。それはC部長さんが本社の皆さんに説明したんじゃないの?」と逆質問。

  「したんだとは思います。旨く説明出来たのかどうかは分かりませんが。弊社社長がいる役員会議での議論だそうなので、また、新たな火種にならないといいんですけど」とAは心配顔だ。結局、彼の懸念は当ることになるのだった。

3月 31, 2016   3 Comments

あるシステム統合(10)

  社長室を出て事務フロアーに降りた時、Bの直属の部下がエレベーター前にいた。彼は僕に「今日の会議で、F寄せの結論はどうなったのですか?」と質問して来た。僕はそう決まったことを告げると、身体一杯に反発の表情を浮かべ、「僕たちは絶対に認めませんから」と言って、立ち去ろうとする。

  「一寸待て! 君は、経営決定に従わないと言ったんだぞ。その覚悟があっての発言か!」と一喝した。彼はその意味が分かってか分らずか、「そんな理不尽な結論に従う者などいません!」と言い捨てて去って行った。

  推して知るべし。ここまでの本社各部に対するF寄せ反対の働き掛けは、全てBとその一派のゲリラ作戦であったことも明らかになった。これほどまでにB一派はF寄せ徹底抗戦で固まっているということだ。その背景にあるもの、即ち、Bの僕に対する対抗心を、会社のこんな歴史的大課題を使って、たぎらせようとするのは絶対に許せないと思った。

  X社長からは「Bがヤル気ないなら検討チームから外せ!」と命じられたが、社長にもBのゲリラ行動が耳に入っていたのだろうかと、ふと思った。

  いずれにせよ、これから1年間のシステム統合計画は、半端な気分では絶対に成し遂げられない。昼夜を問わず部門全体の一致団結がなければ成就は不可能だ。このままBを放置するのは部門の力を半減させてしまうことだと、悟らずにはいられなかった。

  まだ本社のどこかにいる筈のBを携帯で呼び出して、ある小会議室に来るように伝えた。彼は四の五の言っていたが「社長からの伝言がある」と伝えるとやっと現れた。

  僕は、社長室に呼ばれて言われたことを包み隠さずBに告げた。彼も事態を飲み込んだ模様だ。「神童さん、泣いて馬謖を斬るという言葉があります。どうぞ」と言う。殊勝なようで実はそうでない。「神童、お前に俺を切れるか? 自分の手下達も離脱するが、それでシステム統合をやれるのか?」と言っているのだ。

  「Bよ、どうしてそんなに頑ななのだ。自分達の作ったシステムを捨てる位なら、会社合併が出来なくても良いと思っているんだろう?」と彼の真意を正した。「いえ、そうは思いませんが、事務やシステムのレベルを、時計の針を10年も巻き戻すようなことをして新会社のスタートを迎えるべきではないと言っているのです。もっと良い方法がある筈だと思っているだけです」とBは答える。

  「それで良い案はあったのか?」「・・・」「今日正式にF寄せが決定したが、今後はそれに従うつもりはあるのか?」。「私の考えとは相容れませんから、私は外して貰った方が良いと思います」。こんな遣り取りを繰り返したが埒が開かない。

  僕は、「分った。この遣り取りをそのまま社長に伝えるが、それで良いか?」と聞く。Bは「結構です。きっと社長は分かってくれると思いますから」と変な自信で答えるのだった。

  さっき社長室を出てから2時間程が経過しており午後5時半を回っていたが、秘書に聞いたらまだ在籍だと言う。早速、社長室に飛込んで、ことの次第をお伝えした。

  X社長は「そうか」と頷いた後、「Bを理事から降格させて、来月(5月)1日付けで異動させる。合併の邪魔になるような人間は、本社に置いておけないからな」とかなり厳しい姿勢を示されたのだった。

  これには僕も驚いてしまった。これまで、X社長もBの能力は高く買っていたからだ。現に昨年、Bを理事に引き上げたのもX社長だった。やはり社長の耳には、今回のBの本社でのゲリラ行動のことが入っていたのだと思った。

  そのX社長の思い、即ち、会社合併を成功させるための最大の難関であるシステム統合を、最も簡単・迅速・確実な方法でやろうとしているのを、恩も忘れて邪魔をして回るBに堪忍袋の緒が切れたと言ったところか。

  僕も甘かった。Bをシステム統合プロジェクトからは降ろすが、システムの日常の仕事の方を監督させようと思っていただけだからだ。

  Bは1年前に理事という位に就いていた。理事には2種類あって、一つは次の取締役候補の職位、もう一つは、そうではないが長年の功績に報いるための職位である。勿論、Bも取締役候補の理事である。

   僕は慌てて、「社長、Bの理事降格は一寸考え直して頂けませんか? 今は方針を巡って私と対立していますが、有用な人材には違いないのですから」とお願いをした。ところが、今度は社長の怒りの矛先が僕に向かった。「元はと言やぁ、神童、お前があいつを押さえられなかったからこんな事態になったのだ! その言い草は己の責任を全く感じていない言い方だ!」と。

  今日は、「経営統合委員会」の時から機嫌は良くなかったが、その後の2回の社長室での会談で、遂にX社長の怒りは沸点に達してしまった。「Bの処分だけで済まそうと思ったが、神童、お前も同罪だ。減俸3ヶ月を言い渡す!」。おっとぉ!

 

3月 25, 2016   No Comments

あるシステム統合(9)

  社長室に着くなり、僕等2人を座らせて、X社長は「やっと来たか。本社の部長達がF寄せは問題だと代わる代わる言いに来るんだ。経理部長に至っては、F社のやり方はとんでもない、経理部としては絶対に認められない、とか言って来るし。一体どうなってるんだ?」と先に質問されてしまった。

  僕は、「先程経理部長に会いました。彼は、分割払い保険料の代理店と会社間の請求精算の方法が、F社の理論値ベース(計上ベース)なんて論外というものでしたが、当社の『入金ベース』精算方式をFシステム上に実現する条件でF寄せとした旨伝えたら、それならOKとなりました」と返答した。

  「代理店システムの接続をB君は不可能と言ったが、実際はどうなんだ?」と社長が聞く。予想した質問だ。「あれから検討を進めさせています。FシステムはHシステムとはデータの持ち方や構造が違いますので、Fシステムと代理店システムの間にその違いを吸収する変換機の様なものを作れば、繋がる筈です。その作業がどのくらいの大きさになるかは、もう暫くお待ち下さい」と僕は答えた。  

  続けて、「社長、1年しかないんです。本社の人達はHシステムを捨てるのはけしからんと言っていますが、どちらに寄せるのがより速いかは明確です。F側にはT自動車向けの様々なシステムがあるし、当社(H社)の3倍ものSEがいるんですから、相手社にはなくて不可欠なシステムを再構築するにはF社にやって貰う方が早いに決まっています。是非、F寄せ方針で突っ走らせて下さい」とお願いをした。

  社長は「事務の方は、どうだ?」とKに聞く。「システムの形が決まれば、それに合わせた事務処理を考えるのみです」とK。社長は、「分った。次回の『経営統合委員会』で方針の再確認をしよう」と言ってくれた。

  幾ら社長と雖も、本社の各専門部の長が挙ってF寄せ反対では、果たしてF寄せで良いのかとの疑問が頭を擡げても不思議ではない。社長の不安を払拭する意味ではこの緊急の打合せは意味があった。Kからの連絡で僕も事務センターから本社に駆け付けて良かったと思った。

  紆余曲折がありながらも「第二回経営統合委員会」の日がやって来た。前回の確認(システム統合方針)と宿題(代理店システムの接続)、並びに、開発スケジュール及び費用概算などを報告することになっている。

  ヒヤリングする側も報告する側も、前回と同じメンバーだ。我が「事務・システム統合部会」からは計8人(H・F夫々4人ずつ)が出席した。

  冒頭、僕から、「前回、Fシステム寄せで決まったことを確認し、代理店システムの接続可能性について宿題となっていましたので、その報告をしたい」と述べたところで、X社長が「いや、前回、F寄せを決定した訳じゃない。システム統合の方向は良いので、更に検証して問題なければ今回正式決定することにした筈だ」と発言されたのだ。

  おっと、と思ったが、これだけ本社が騒いだF寄せだから、もう一度、そうすべき理由や、F寄せで生じる問題を提起して、その解決策など、誰にでも分かる説明が必要と言うことだろう、と瞬時に理解した。

  僕は、1年しか猶予がない中では、システム統合のスピード(簡単さ)第一優先で行くことを改めて表明しF寄せとすること、しかし、F社の分割払い保険料の「理論値ベース請求」の方式では、H社の全国代理店、及びH社営業係が受け入れられないので、Fシステムに「入金ベース」請求のシステムを構築することを説明した。

  本社の各部門担当役員、僕の説明に納得した表情を確認。続いて、宿題の「代理店システム」のFシステム接続について、システム統合部隊とは完全に切り離した両社SEの混成部隊を作って成し遂げる旨説明した。Fシステム上の「代理店システム」との接続部分に、FシステムとHシステムの違いを吸収する変換システムを作成する方針も併せて説明した。

  X社長は「それで、代理店システムは繋がると思っていて良いのだな?」と僕ではなく、前回、「不可能です!」と宣言したBを見て言った。またぞろ「それは無理です!」とか言うのではないかとヒヤっとしたが、Bは、今度は何も言わない。変な間が開いたので、僕が「その通りです」と返答したのだった。

  他にもX社長は、F寄せするにしても、保険申込書や証券その他印刷物は全部、新会社として全く新しいデザインや色使いをするように指示された。理由は言わなかったが、その意味は僕には凄く良く分った。

  「第二回経営統合委員会」終了後、僕は社長室に呼ばれた。部屋に入るといきなりドヤされた。「今日のBの態度は何だ! あんな不貞腐れた態度をしおって! F社の社長に対しても失礼千万。やる気がないなら検討チームから即刻降ろせ!」と物凄い剣幕だった。

 

3月 18, 2016   No Comments

あるシステム統合(8)

  僕は経理部を出て直ぐKを呼び出した。そして彼に、F寄せ反対の2人と話して分ったのは、どちらもBの入れ知恵だったことを伝えた。Kは、そのほかの部門長達にも囲まれ、F寄せ非難を浴びたと言う。

  Kの部下達も「FシステムはT自動車向け専用のシステムと位置付けて、それ以外は事務もシステムも全てH寄せにすべきだ」と言っていると教えてくれた。多分それもBの意見だろうと思った。

  僕は、その統合のやり方では、永久にFシステムが残るので、統合効果(2社分のコストを1社分で賄うことで生ずる)年200億円は消える上、それを原資とする合併後の新幹線開発は不可能になる旨Kに伝え、F寄せで再度事務統括部門を固めて欲しいと頼んだ。

  この日より数日後のことだが、僕のところに日立の営業が、F寄せは何とか考え直してくれと言って来た。F寄せで合併会社は日立ユーザーでなくなることを恐れてやって来たのだ。F寄せは、この段階ではまだ本社部門止まりの社外秘事項であった。聞いてみると、やはりBからの情報を受けての動きだった。F寄せ阻止のBの動きは目に余る。

  Kは「ところで神童さん、統合に関するF社の役員会議事録が手に入ったのですが、F社のシステムのC部長が、システムは当社が勝ち取ったと誇らしげに報告しているんですよ。我々の気持ちも知らないで」と憤慨する。

  確かに他の分野は殆どH社のやり方に統一する方向で「第一回経営統合委員会」の結論が出ている中で、唯一「事務・システム統合部会」だけはF社寄せだから、Cが余計に自社で誇りたかったのだろうとは思った。

  しかし、事実はKと僕の2人が、両社システムの上に立って俯瞰してみて、F寄せ(相手社寄せ)が一番早いと結論を出したのに、「Cが勝ち取った」と平気で嘘の報告をする神経に腹が立った。

  そして何より、Cは取った取られたの発想しか出来ない奴なのかと、僕はかなりガッカリし不安になった。これからの1年、もっと大変な困難に立ち向かうべきパートナーの筈のF社システム責任者が、そんな低レベルの発想しか出来ない人間では、一緒に困難を乗り越えて行けるのだろうかと。

  それ以降の「事務・システム統合部会」では、悉くKはCの発言に強い拒否反応を示すようになって行ったのは、Kの性格上、自然な成り行きだ。その時のテーマが何であったか覚えていないが、Cが自社の立場の発言しかしなかった時、Kは遂に切れて、「そんな発言しか出来ない人は、この部会に必要ない!」と怒鳴った。

  それを受けてCは「だったら、帰る!」と言ってさっさと会議室を出て行ってしまった。それでも会議途中だったので、C部長の部下のA次長は最後まで残って会議を終えたことがある。その後日談でAが僕に言った。

  「あの後、Cから酷く叱られましてねぇ」。「何で?」と僕。Cに、「俺が腹を立てて席を立ったのに、どうしてお前は残ってそのまま会議を続けたのだ。俺の立場がねぇだろう!」と言われたと言うのだ。やれやれだ。

  Bの動きもCの問題も、僕らにとって良い情報は全くない中でKは、「神童さん、遂に我々2人は本社中を敵に回してしまった様ですねぇ。それも、内外ともに弧立無縁と言ったところです。会社合併の最大課題、且つ、最大効果であるシステム統合を理解しないで、自分達の立場でしか発言しない連中には本当に腹が立ちます」と言う。そして「こうなったら、X社長と3人でスクラム組んで突破して行きましょう」とも。

  Kは、若手店長だった頃から同じ営業部の先輩だったX氏(現社長)を兄貴のように慕って来たし、X氏もKの能力や突破力を高く評価しており、今次会社合併の発表数か月前には、この状況を予期したように、Kを現場営業部長から事務部門の部長へ異動させていたのだった。当時僕には、KはX社長の懐刀の様な存在に見えていた。

  話しをKとの会話に戻す。実を言うと、この日の正に前日に、Cから「うちの社長が、御社のX社長がF寄せに不安を持たれているようだ、と言うのですが、神童さん何かご存知ですか?」と言われた。僕の全く預かり知らないことだった。

  そのことをKに伝えると、Kは「本社がこれでは、X社長もF寄せの基本方針に危惧を持たれても不思議はないですよ」と言いながら、その場からX社長に面談を申し入れた。直ぐにOKが出たので、僕等2人は社長室に急ぎ向かった。

 

3月 17, 2016   2 Comments

あるシステム統合(7)

  事務・システムの統合がどんな形になるのかは、本社の各部門の高い関心事になっていた。自分達の仕事はシステム無しでは進まないし、その統合がどうなるかで仕事の仕方が変ってしまうからだ。

  そこで、「統合委員会」の数日後、本社の部長会で、僕はその論議内容とFシステム寄せの結論を得たことを報告した。「統合委員会」の事務局のS経営企画部長も、「神童さん達が客観的に見て最短の道を決断したことを、X社長が高く評価されたことは重い」と後押ししてくれた。

  僕は言った。「1年で両社のシステムを統合するというのは、不可能に近いことです。でも、当社が業界の先頭を切って合併に踏み切り、来年の4月には合併新会社として、激動の時代を生き抜く態勢をいち早く固めるというトップの強い意志と願いがあります」

「そのことを思う時、どちらのシステムが優れているとかではなく、システム統合が最も早く完了する方法を選ぶしかないのです」と。 

  意見や質問も幾つか出たが、Fシステムを全く知らないから追い追い教えて欲しい、とか、Fシステムになったらどこにどんな影響が出るのか教えて欲しい、とか全国の現場を預かる者達の当然の意見要望だった。検討1ヶ月では正直僕自身も全く分らないので、分かり次第オープンにする約束をして本社部長会は終わった。

  それから2週間経過したある日、事務統合の責任者である役員のKが、事務センターにいる僕に本社の空気を伝えてくれた。彼が言うには、本社の部長達がFシステム寄せに反対と言って騒いでいる。このままでは非常に拙いと思うということだ。

  その急先鋒は誰かと聞くと、「ほぼ同意見なんだけど、強いて言えば経理部長と保険商品本部の次長達が急先鋒かな。申し訳ないけど我が業務統括部の次長連中にも、何故Fシステムを採用するのか? という疑問が渦巻いています」と言う。

  本社部長会ではそんな騒ぎにならなかったのにどうして? 僕は本社に出向き、まず、商品本部のある次長と話した。彼は「Fシステムに寄せることに決まったというのが信じられなくて。神童さんの前だけど、それは有り得ない選択ですよ。なんでわざわざ遅れているシステムの方に寄せるんですか?」と僕に迫る。

  僕は皮肉を交えて、「いつもは当社のシステムは遅れているとか、スピード感が無いとか、散々な言い方されて来たけど、今日は珍しく評価してくれてありがとうね」とジャブ。

  進んでいると急に本社が言い出した当社(H社)システムだが、それは、営業店や損調店の事務がコンピュータ画面との対話で全て完結するスタイル(今となっては何処でも当たり前の風景)を他社に先駆けて実現・実施したことだけで、両社のホスト・コンピュータ(大型機)で稼働している商品システムや契約管理システムにそれ程差がある訳ではない。

  僕は続けて、「実は、当社に無いT自動車向けのシステム機能を合併後も全て保証しなければならない。それをHシステム上で再開発をするのは1年ではとても不可能だ。こちらの3倍以上のSE部隊を抱えるFの方に、こちらの不可欠なシステムを作成させて搭載させる方が現実的なのだ」と説明した。

  彼は「システムのBさんも言ってたけど、そんなのどうせ大したシステムじゃないんでしょ?」と言うから、「T社からのその時々のニーズを様々なシステムの中に盛り込んで来た歴史的な産物で、あちこちに散りばめられているから、洗い出すことも大変なんだよ。試しに、商品部門の統合部会でFシステムの自動車保険などにT社向けの特別なシステム機能は何があるのか全部洗い出すように言ってみてよ」と頼んだ。

  そうします、と答えた彼から、結局合併の日まで、遂にその答えを聞かせて貰えることはなかった。

  次に経理部長に会い、何故反対すのか聞いてみた。「代理店への分割保険料の請求を理論値で行うなんて、経理部として絶対に認められません」との答えだ。

  僕は、当社初め動産3社のやり方は、寧ろ少数派で、損保の最大手以下全て理論値請求(入力計上した保険契約の内容から今月集金すべき保険料の総額を計算して請求)であることを教えた上で、それは代理店にとって大変な月末作業を強いることになるので、Fシステム上に当社の「料金管理システム」を再作成して搭載する旨伝えて納得して貰った。

  ついでに、経理部長に何故そんな心配をしたのか聞いてみた。彼の答は「貴方の部下のBが来て、Fシステムになったらそうなるが、経理部としてそれでも良いのかと言うから、それは認められないと答えたし、社長にも進言した」だった。

 

3月 14, 2016   1 Comment

あるシステム統合(6)

  4月3日に「第一回統合委員会」(委員長:両社社長)が開かれた。その日幾つかある議題の1つが「システム統合の基本方針」である。両社のシステムと事務の責任者達「事務・システム統合部会」のメンバー合わせて8人が説明側として、両社社長並びに役員達が居並ぶ向かいの席に座り、方針の説明を行った。

  僕は両社の「事務・システム統合部会」を代表して、この1ヶ月の検討内容とその結論を報告した。1年という短い期間でシステム統合をやり切るには、最も早い方法を選択しなければならないとした上で、「F社システム寄せ」(当社HのデータをFに移行)で行きたいと、ハッキリ提案した。

  X社長からはすかさず「自社システムに拘らずに、最速で実現できることを最優先して選択してくれた決断を大いに評価したい」との言葉を頂いた。しかし社長は続けて、「基本的にFシステム寄せで良いが、この1~2年頑張って作ってくれた当社の代理店システム(保険代理店用PC端末)だけは、何とかFシステムと繫げて貰いたいがそれは可能か?」との質問された。

  僕を初め両社の「事務・システム統合部会」メンバーは全員意表を突かれる格好になった。この1ヶ月、膨大な保険システム(社内システム)の統合をどう行うかを考えるだけで手一杯だったから、代理店用のシステムをどうするかまでは全く検討出来ていなかったからだ。

  当社の代理店システムは、確かに1昨年稼働した最新システムであり、X社長の思い入れで出来たシステムでもある。だが、それをFシステムに接続することは「料金管理システム」のFシステム再開発の他に、もう1つバードンを背負うことになるので、出来れば避けたいところ。

  だが、本筋のシステム統合とは別に、H社・F社夫々の専門部隊を編成して別ラインで当れば1年で充分達成可能であり、システム統合とは並行的に進められるのでスケジュール全体には大きな支障を来さないとも思った。  

  少し迷ったが、ロードはその分増えるけれども可能です、と答えようとした瞬間、代理店システムのリーダーだった僕の天敵Bが横から「それは不可能です!」と明言してしまった。彼は一貫して「F寄せ」には反対の態度だったが、この場面を使って反撃に出たのだった。

  僕は「その件は、今ここで不可能と断言するだけの検討もされていないし、判断材料もないので、次回まで預からせて下さい」と引き取らざるを得なかった。結局、この日の「統合委員会」の結論は、基本方針として「Fシステム寄せ」が決まり、代理店システムとの接続は次回(半月後)の委員会までのペンディング事項となった。

  僕は「統合委員会」後、Bと対峙した。「ここまで検討もしていない代理店システムの扱いについて、何故、不可能と断定出来るのか?」と迫った。彼は、「当社の代理店システムは、当社(H社)の保険システムのデータやシステム構造を前提に出来上がったものです。その前提が違えば、接続出来ないのは当たり前じゃないですか」と木で鼻を括ったような答をする。

  「ふざけるな! 社長の質問は、何もしないで繋がるか、なんて聞いてるんじゃない。繋がるように手を打つのに1年掛かるのか、と聞いている。代理店システムの必要とするデータや構造に合うように、HとFとの違いを吸収するシステムをFシステムと代理店システムの間に鋏めば接続は可能なんだよ!」。僕はBの態度には物凄く腹が立った。

  それでも、彼はそんな無理筋を検討するだけ無駄で、自分はその検討に加わりたくはないみたいなことまで言う。

  僕は、「君がF寄せに反対なのは分かっている。だったら1年で必ず間に合うH寄せの代案を出してみろ! 当然T自動車用のシステム機能を含めてな!」と迫った。彼はそのことについては何も言わずその場の言い合いは終わった。

 

3月 10, 2016   1 Comment

あるシステム統合(5)

  僕は、「経営統合委員会」の数日前、X社長に内々にFシステム寄せで行くことを伝え内諾を得た。勿論、合併後新システム(Kの言う新幹線システム)を構築することも併せて報告した。社長は明るい顔で「そうか。良く決断した」と言ってくれたが、僕は「システム部門の反発は何とか収めましたが、本社の方は宜しくお願いします」とお願いすることも忘れなかった。

  しかし、その時から僕は、近道の筈のF寄せでもダメだった時のことを真剣に考え始めた。「会社合併はシステム統合が出来るか否かに懸っている」と僕に言ったX社長の言葉は、システム統合の方針を伝えたことで、逆に、その重さが現実感を伴って僕を襲って来た。即ち、F寄せでも、もし間に合わない時はどうするのか、と自問自答せざるを得なくなったのだ。

  F寄せは近道ではあるがリスクが無い訳ではない。「料金管理システム」をFシステム上で再開発し、そのシステムを既存システムの中にどう埋め込むのか、整合性は保てるのか、また、その移植手術について、あらゆるケースを想定したテスト精度の確保は誰に任せられるのかなど、僕はF社のSE達を知らないだけに不安が頭を過ぎる。

  両社の保険契約のデータ項目が完全に同じではないし、経理システム1つとっても勘定科目は会社別に違うし、同じ自動車保険でも商品内容が微妙に違う。今分かっていない大きな問題が顕在化して、スケジュールが大変厳しい状況に追い込まれるかも知れないのだ。

  そして、万一の時を想定して考え出した案は2つ。一つは、損保20社の中で、月掛け火災保険を歴史的に扱って来た当社(H社)を含む3社(動産3社と言われている)では当たり前の、分割払い(月掛け)保険料の「料金管理システム」は、この際諦めて、保険代理店には他社と同じやり方を受け入れて貰うこと。

  だが、他社方式では、月末の精算時、代理店に未集金分を一件別に洗い出す作業を強いることになる。この案は、そのような作業が不要な仕組みに慣れている当社の全国の代理店から、相当激しいブーイングが想定されるので、最後の最後の窮余の策でしかないだろう。

  2つ目の次善策。これは1つ目の案よりもハレーションのない方式だ。それは、F社のT自動車向けのシステム機能も、H社側の現行機能・現行事務を変える必要のない方式である。即ち、現在のFシステムとHシステムをそのまま接続して稼働させるというものだ。

  T自動車にとってもH社の代理店にとっても、これまでのシステム機能や事務の形も保証されるというメリットがあるが、デメリットはシステム統合で実現される大きな統合効果(事務&システム費2社分を1社分に出来る効果=年200億円強)が得られないことと、事務が2本立てになってしまうことだ。

  案2は、万一の時、上記2つの社内デメリットを飲み込んで貰えれば、F寄せが行き詰った時の現実的コンティンジェンシー・プラン(不測の事態に対処する行動計画)として成り立つ。この形(両社システム併存型)のシステム統合を行うには半年という期間があれば行けると計算した。

  僕は事務統合の責任者であるKと話し込み、このコンティンジェンシー・プランはいざという時の緊急対策として、2人だけの腹積もりに止めておくことにし、翌日開かれる「第一回経営統合委員会」でも提起しないことにした。

  それは、事務・システムの責任者として、Kも僕も年200億円の統合効果は何としても取りたかったのが本音だったし、これからF寄せに全力を挙げる両社システム部門や事務統括部門に、ともすれば、妙な安心感を与えたり。安易に流れるキライなしとしないためだった。

 

3月 9, 2016   3 Comments

あるシステム統合(4)

  実は、このF寄せシステム統合(相手社システム寄せ)を決断するまで、一人の腹心以外には部下の誰とも相談していない。彼等の誰一人、業界最先端を行くと自認する自社システムを放棄して、F社のシステムに寄せるなど、受け入れられる筈はなかったからだ。

  民主的に話し合っていたら、統合方針など何ヵ月あっても決まらない。僕はシステムの最高責任者として、1年しかない期間内でシステム統合を完了させるためには、様々な拘りや愛着を捨て、一番の近道を見付けて突っ走るしかないと覚悟して結論を出した。

  だがさすがに、数日後に迫る「第一回経営統合委員会」(両社社長が座長)にシステム統合方針を提出する前に、主だった部下達にシステム統合方針とその理由を説明した。案の上、晴天の霹靂と感ずる部下が殆どだったのは仕方ない。

  僕は、今度の合併は世界のT自動車と組んで新しい保険展開をしていくことが最大の狙いであること、従って、そのT自動車向けの現状のシステム機能維持がシステム統合の最低条件であること、だがそれを含めて当社(H社)システムに寄せるには1年では到底無理なこと、F社側のSE部隊は当社の3倍の人数がいるので、Fシステム上に当社の分割払い保険料の「料金管理システム」を作って載せる方が遥かに早いことなどを説明した。

  だが部下達からは、「T自動車向けシステムなんかどうってことないですよ。我々が作って見せますよ」と知らないことにはやけに威勢が良かったり、「F社には現場の事務システムが無いんですよ。そんなシステムで合併したら現場が大混乱しますよ」と自分達のシステムの不可欠を主張する意見が続出した。

  収まりが付かない状況の中で、僕は言わざるを得なかった。

「今回のシステム統合は、『優れたシステムを作る』という仕事ではない。今回の我々のミッションは2つだ。大きな統合効果の実現(2社のシステム費用を1社分に圧縮出来るので、年200億円強のコスト・ダウンを実現)と、どんな形であれ何が何でも1年後の会社合併に間に合わせること」

「1年なんてアッという間だ。間に合わなかったら、システムが理由で会社合併が白紙に戻る。そうなったら、システム部門の汚名は何年も晴らせない。今、我々に必要なのは、どんな形の統合であれ、絶対に間に合わせてみせるという決死の覚悟だ」

「皆んなで作った他社の先を行くシステムに、大いなる誇りと愛着を抱くのは当然だし良く分る。その思いを一番強く持っているのは他ならぬこの私だ。その私が近道はこれしかないと言っている。全ての責任は私が持つので、どうかこの方針に従って欲しい」

  それでも彼らの不満顔は変わらないので、Kからの提案、即ち、「1年後の合併に間に合わせるためのシステムは取り合えずで良い、合併後もう一度新システムを作る」、という大方針も部下達に伝え、やっと彼等も不承不承ながらF寄せ已む無しの雰囲気になったのだった。

  但し、僕の天敵とも言える男Bは最後まで苦虫を噛み潰したような顔のままだった。Bは、僕の1歳年下で入社以来お互いSEとして長年頑張って来た男だが、僕がシステム部門の責任者になる頃から、(多分)僕をライバル視し、責任者に相応しいのは神童でなく自分だとの思いから、彼の部下を率いて何かに付き僕に対峙するようになって行った。

  今回のシステム統合方針を巡っても、この後、彼とは一悶着起こすことになるが、これについては後で述べる。

 

3月 8, 2016   No Comments

あるシステム統合(3)

続いて僕は、相手社のシステム責任者の部長CでなくSE上がりのシステム開発の実質リーダーであるA次長と腹を割って話し込んだ(C部長は1年前営業部門から赴任した人物でシステムの中身が分からないので)。

僕が彼に伝えた要点は1つだけだ。両社のシステムを統合するのだから、その両方を知った上でどうするのがベストかを決めるのが王道だが、今のまま勉強会をやっていたら結論が半年後になる。そこからシステム統合の作業に入ったのでは、合併に絶対に間に合わない。

なので、基本的にはどちらか一方のシステムに片寄せする方針を打出し、その後明らかになる問題について解決の方法(片寄せ元=移行元 に不可欠なシステム機能を 片寄せ先=移行先 のシステムに再作成して搭載するなど)を考えるというやり方以外ないと思う、と提案したのだ。

Aも「時間のない中では、私も片寄せしかないと思います」と即同意した。そして核心に迫る質問を返して来た。「で、神童さんはやはりH社側に寄せたいと?」。

ここで大事なことは、Aがどれだけ私の言うことの苦渋の決断なり、今後想定される事態がイメージ出来るかどうかだ。彼に賭けるしかない。

「システム統合が出来なくて、会社合併を延期だとか白紙撤回に追い込むことだけは絶対にあってはならない。そこで、今我々が判断しなければいけないことは、どちらが優れているとか、どちらの事務が簡単だとかで片寄方針を決めるのではなく、どちらに寄せるのが早いかだ」

「だが、どちらに寄せるにしても部下達の反発は相当に強い筈だが、お互い、それを乗り越える覚悟が必要だ」と前置きしてから逆質問をした。

「HシステムにF社システムを寄せる場合T自動車対応のシステムをH側に再開発しなければならない。Aさん、その内容は簡単に洗い出せますか?」。

「いえ、『T自動車対応システム』というような独立したサブシステムがある訳でなく、商品システムや代理店システム、損調システム、コールセンター・システムなどあらゆる所にT自動車対応機能が入り込んでいますので、正直言って洗い出すのも大変ですし、洗い出してもこれで全部だと言う自信はありませんねぇ」。

それは事実だろうと僕も思った。長い年月の間その時々のT自動車からの要望をシステムに組み込んで来た歴史的産物だろうから。では逆にH側の固有システムをFシステムに作って搭載するのはどうか。

「Aさんね、H社は元々動産火災保険の会社で月掛け保険専門(割賦販売)でした。だから、分割保険料の徴収システムは他社にない仕組みで来ています。代理店には(契約者から月払い保険料を預かった時に渡す)領収証の控えを都度会社に送って貰い入力し、その合計金額を代理店に請求して月1度精算しています。もし、F寄せする場合は、こういう仕組み(=入金ベース請求)をF社システム上に作って貰いたいのだけれど、それは可能ですか?」

「F社システムでは、分割保険料について、毎月これだけ代理店が徴収している筈だという金額を請求(=計上ベース請求、理論値ベース請求)します。それではダメなんでしょうか?」

「それだと、何らかの理由で集金出来なかった分の差額が発生して、代理店も会社もそれを1件別に洗出して未収明細書を作るなどの作業で月末の処理が大変でしょう?」

「確かに、月末は営業が遅くまで代理店に貼り付いて大変みたいですね。H社はそういうことはないということですか?」

「基本的に、代理店が実際に集金した分を請求するので差額は発生しません。こういう差額なしの精算状況が当たり前だと思っている代理店や営業担当者からすれば、H社以外のやり方はとても受け入れられないとなってしまうことを危惧しています。他は捨象出来ても、この点だけはFシステム上に作って貰わないと片寄の賛同は得られないと思います」

ここでAは僕に質問をした。「代理店が集金した分だけ請求するとのことですが、それでは未集金分はどう管理されているのですか?」。もっともな質問である。

「集金すべき件数金額の明細が分かるのはF社と一緒ですし、集金された分は領収証入力で一件別に消し込まれるので、集金されなかったものは未入金一覧表にして代理店に送り集金督促しています」

A次長は、疑問が解けたといった顔をして、「当社(F社)では経験のない仕組みなので、H社の担当の方に開発リーダーをお願い出来れば、システム作りは可能と思います」と答えた。

これで僕の腹は決まった。「基本方針はF寄せ。但し、分割保険料の請求は入金ベース(H社方式)とし、Fシステムに搭載する」と決めた瞬間だ。

 

3月 5, 2016   3 Comments

あるシステム統合(2)


翌日、主だった部下何人かと、相手社(F社)のシステム部門の主要メンバーとの顔合わせを兼ねた最初の打合せを行い、システム統合に向けた第一歩を踏み出した。自己紹介を終え、その日の唯一の議題「検討の進め方」の議論に入った。

当社(H社)のシステムとF社のシステムを統合するのに、お互い夫々のシステムが分からないでは進めようがないので、まずはお互いのシステムを知るため、互いのレクチャーから始めることを決めた。

但し、丁度1ヶ月後(4月3日)には、両社の社長をヘッドとする「第1回経営統合委員会」が開催され、そこでシステム統合の方向なり基本方針なりを報告しなければならない。従って、のんびり自社システムをレクチャーし合っている訳にはいかないので、取り敢えず、互いのシステム概要のみ2週間でレクチャーを終えることにして、数日後から開始した。

だが、これを始めて直ぐに分った。互いに膨大なシステムを保有しているので、概括的なシステムの説明だけでは、具体検討の上では何も分かったことにならないし、そうかと言ってもっと核心を聞いて理解したいと思うと詳細説明が必要になる。

そうなると、もっと若い担当者(実際にシステム開発に携わるSE)達に説明を求めなければいけない。そんなことを繰り返していたのでは、1サブシステムの理解だけで1ヶ月、全サブシステムだと半年があっと言う間に過ぎてしまう。残り半年ではシステム統合は絶対に不可能だ。

そうは言っても、最低相手社のシステムの外観くらいは把握する必要があるため、2週間のレクチャーはそのまま継続させて、僕は当社の事務部門の担当役員のKに相談した。即ち、1年でシステム統合を成し遂げるには、いいとこ取りのシステム構築を行なっている暇はないので、どちらかのシステムにデータ寄せを行うしかないと伝えた。

僕は、X社長の言う「保険+産業」の新しい世界に踏み出すには、これまでのT自動車の意向や要望を色濃く組み込んだF社の保険商品や事務システムを無視する訳に行かないと思っている。だが、それを当社のシステムに搭載するための開発はとても1年間で出来る筈もない(互いのホスト・コンピュータが日立・富士通と異なるから、片方のサブシステムを一方に載せ替えるには再開発が必要なのだ)。

僕はKに思い切って打ち明けた。「システム統合の大方針はF社システムにデータ寄せを行なって合併の日を迎えるしかない」。

ところが、Kも「多分それしかないと思います」と答えたのだった。Kも多分X社長から、どっちのシステムが優れているとかどっちの事務が良いとか言い張って時間を潰すな(=必要なら相手社のものを採用することも大胆に決断すべきだ)というニュアンスのことを言われていたかも知れない。

相手社のシステムに統合するということは、当社のシステムや事務を捨てて相手社のやり方に合わせるということだ。当社側のハレーションは容易に想定される。特に、事務とシステムを開発して来たKと僕の部門の反発が半端ではない筈だが、事務・システム統合の最速の道という一点で2人は一致した。

加えてKは「神童さん、合併のための取り敢えずのシステム統合はそれで良いとして、合併後、新幹線(新システムのことを彼はそう言った)を作るということも経営に提案しましょうよ」と良いことを言う。

確かに、事務もシステムも当社の方が先進的と思っている当社側で噴出するであろう不満を抑えるには、統合システムは暫定で本格システムは新会社になってから、合併効果で生まれる資金を使わせて貰い、必要な時間を確保して新システムを開発するという方針が良いと思った。

以降、1年に及ぶ事務・システム統合という厳しく苦しい戦いの中で、Kとは生死を共にする戦友となって行くのである。

 

3月 4, 2016   1 Comment